過去最低の出生率“0.72”…少子化が進む韓国で今、「結婚しない」「出産しない」若者が増えているワケ

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2024年04月20日 21:50  All About

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今、韓国では結婚に対する意識が大きく変化している。あえて「非婚」「非出産」を選ぶ若者が増加しているのだ。韓国で行われた社会調査の結果とともに、若者の結婚感の変化を紹介する。
筆者が韓国の合計特殊出生率に関する記事を始めて書いたのは2006年。2005年に「1.08」という数値を記録したため、韓国の深刻な少子化の実態を記したものだ。

ちなみに韓国では、2005年に低出産・高齢化委員会が発足している。このときすでに日本より低い数値を記録していた韓国で、少子化が大きな問題であったことは言うまでもない。もちろんその後、さまざまな少子化対策が行われ、合計特殊出生率は上がったり下がったり変動していたが、2018年にはついに1を切ってしまい「0.98」に。

その後は下降の一途で、2023年にはついに「0.72」まで落ち込んだ。国家消滅の危機だと警鐘を鳴らす専門家も多く、それが現実になりつつあることを証明するかのように、2024年度就学予定の児童が1人もいない小学校が全国で157校もあった。

変化する結婚観

少子化を語る以前に、韓国ではそもそも“若者の結婚に対する意識”が大きく変化している。

韓国青少年政策研究院による「青少年価値観調査研究(2023)※1」によると、「必ず結婚せねばならない」と考える青少年の割合は2012年は73.2%であったのに対し、2023年は29.5%。特に女子学生は、2012年は63.1%だが、2023年には18.8%にまで減少している。結婚は義務ではなく選択するものと、大きな意識の変化があったことがうかがえる。

若者の結婚観の変化をさらに見てみよう。統計庁による「社会調査から見る青年の意識変化(2023)※2」によると、10年前は56.5%が「結婚に前向き」だと回答していたのに対し、2023年は36.4%まで減少。

さらに、「結婚はしないと考える理由」として、男女ともに、“結婚資金不足”を最も大きな理由にあげている。内訳は、男性が40.9%、女性が26.4%と、男性がより資金面での負担を感じていることがうかがえる。

お金がなくてはできない結婚

「お金がなくても結婚はできるじゃないか」という言い分は韓国ではあまり通用しない。

そもそも新婚生活に必須の新居を構えるのが大変だ。韓国の不動産価格の高騰ぶりはすさまじく、結婚適齢期の若者が両親の金銭的援助なしで、自力で新居を用意することはほぼ不可能なレベルだ。新居を用意するために借金することは珍しいことではない。

また、結婚するにあたり、新郎側が家を準備し、新婦側が家財道具を準備するという慣習がある。それゆえに新居を構えることに対する男性の負担は否応なく大きくなる。

それなら新婦側は新郎側よりは楽なのか、と思われるかもしれないが、そうはならない。結婚準備のために支払われる金額の差があまりに大きくなると、両家がもめて、結婚が破談になるというケースもあるし、その後の結婚生活に少なからず影響を与えることにもなる。

結婚準備、結婚生活にかかる費用、家事負担まで、全てを折半する「半々結婚」というスタイルも生まれた。結婚生活につきものの、あらゆる問題を解決すべく実践される結婚生活の在り方ではあるが、例えば、共働き夫婦の家事分担や子どもの教育費など、折半の線引きは難しく、「そこまでして結婚する意味は……?」という意見が少なくないことも事実である。

非婚、非出産という選択肢

先ほど触れた「結婚はしないと考える理由」の2番目に多かったのは、「結婚の必要性を感じない」であり、これは女性が23.7%、男性が13.3%だった。

女性の経済的自立はもちろん、結婚に伴い発生するしがらみ、金銭的負担など、さまざまな理由が考えらえれるが、「結婚」が、より良い人生を実現するための選択肢と捉えない若者が増えていることが分かる。

さらに同調査内で、53.5%が「結婚後子どもを持つ必要なし」と回答している。

結婚したら子どもを持つのが当たり前という固定観念に縛られなくなったことや、自分の生活をより重視する若者が増加傾向にあることなども理由にあげられるが、 厳しい受験社会の韓国では、子どもの私教育にとにかくお金がかかる。そういった社会背景を考えたとき、子どもを持つことに慎重にならざるを得ない。

政府がいくら少子化対策で金銭的援助の政策を打ち出しても、良い大学に入り、一流企業に就職することが最大の幸せと考える国民の価値観にもなんらかの変化がない限り、現状打破は難しいかもしれない。

既婚で子育てをしている30〜40代の韓国人女性たちと会うと、「非婚」「非出産」という生き方がしばしば話題に上がる。私たちが「結婚」と「出産」を選択したあの頃、もちろんそれによって直面する困難が存在することは予想しながらも、「私なら乗り越えられる」と信じていた慣習や社会構造。

しかし、それらの壁は予想以上に高く、「あれ? こんなはずじゃなかったのに」という気持ちにさせられることは少なくなかった。今日まで生きてきた日々を振り返ったとき、「非婚」や「非出産」という選択をする若者の事情は理解できるし、そういう結論にたどり着くことはなんら不自然なことではないように思える。彼女たちとの会話は自ずとそこに落ち着く。

「社会調査から見る青年の意識変化(2023)」の「非婚・非同棲に同意する」という項目では、10年前61.8%だったのが、2023年には80.9%に。「非婚・非出産に同意する」の項目では、10年前29.8%だったのが、2023年には39.6%に上昇している。

今韓国は、「結婚」や「出産」という形にこだわらない、多様な在り方・価値観を内包する社会になりつつある。

参考
※1:調査対象は小学5年生〜高校3年生
※2:調査対象は19〜34歳

松田 カノンプロフィール

翻訳家・カルチャーライター。在韓16年目、現地のリアルな情報をもとに韓国文化や観光に関する取材・執筆、コンテンツ監修など幅広くこなす。著書に 『ソウルまるごとお土産ガイド(産業編集センター)』などがある。All About 韓国ガイド。
(文:松田 カノン(翻訳家・韓国専門カルチャーライター))

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