U−23日本代表が韓国にもったいない敗戦 地元カタールとの対戦へ好材料と懸念点は?

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2024年04月24日 07:50  webスポルティーバ

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 ひと言で言えば、もったいない試合。勝てないのはともかく、負けてはいけない試合だったというのが、率直な印象だ。

 パリ五輪アジア最終予選を兼ねた、U23アジアカップ。日本はグループリーグ第3戦で、韓国に0−1と敗れた。ここまで無失点の2連勝できていた日本にとっては、今大会の初失点、初黒星である。

 とはいえ、日本は2連勝した時点で、すでに決勝トーナメント進出を決めていた。韓国との全勝対決は、首位通過決定戦ではあったものの、どちらにとっても本当の勝負がその先に控えていることを考えれば、ことさら力む試合でもなかった。

 実際、大岩剛監督は第2戦のUAE戦から先発メンバーを7人入れ替え、韓国戦に臨んでいる。初戦の中国戦からUAE戦にかけても同じく7人を入れ替えているのだから、まさに"通常運行"だったわけである。

 どちらかと言えば、日韓戦を前に特別な意識が働いていたのは、韓国の側だっただろう。

 特別な意識とは、"勝たなければいけない"ではなく、むしろ"勝負を避けた"という意味で、である。

 韓国は、日本との試合で先発メンバーを大きく変更。11人のうち、今大会初出場が5人、同初先発が3人という顔ぶれだった。

 変わったのは、メンバーだけではない。フォーメーションも、それまでの4−2−3−1から5−4−1に変更。大岩監督が「あそこまで引いてくるとは、想定していた以上のものだった」と語るほど、なりふり構わず守備的な策を講じてきた。

 韓国のファン・ソンホン監督は、「ケガ人を休ませるためのローテーション」とし、「もちろん(布陣変更は)望んだものではなかったが、ポジティブに考え、やれることのなかから最善策を見つけなければならなかった」と話していたが、試合前の時点で相手をより怖がっていたのは、間違いなく韓国のほうだ。

 誤解を恐れずに言えば、日本は余裕を持って戦い、相手を飲んでかかるくらいでちょうどよかったはずだった。

 ところが、当の敵将すら、こんなにうまくいくとは思っていなかったのではないかというくらい、日本は韓国の術中にハマってしまう。

「相手のギャップに入り込めない、そういうスペースがあまりない、というのは感じていて、そのなかでも焦れないでボールを持ち続けてチャンスをうかがうようにしていたが、前向きの選択があまりにも少なくて、(攻撃が守備ブロックの)外回りになって、バックパスが増えた。それだと相手も怖くないので、自分たちのセンターバックとか、GKにプレッシャーをかけられるシーンまで作らせてしまった」

 この試合でゲームキャプテンを務めた内野貴史がそう振り返ったように、守備を固める韓国の前に、日本の攻撃は停滞。それどころか、相手を勢いづかせてしまった感まである。

 内野貴が続ける。

「自分たちが(ハイプレスを)かけようとしても、(前半の立ち上がりに)長いボール1本で自分たちのゴール前まで運ばれるシーンが何度かあって、全体的に前がかりにいききれなかった」

 攻撃が手詰まりになったばかりか、守備でも得意のプレスがハマらない。ロングボールで間延びさせられた結果、1対1の局面が増え、日本の選手がはがされてしまうことも多くなった。

 韓国の布陣変更が功を奏したことは確かだが、この試合の敗因を探るとすれば、攻撃が停滞したことよりも、守備が安定しなかったことのほうが大きかったのではないだろうか。結果として、専守を覚悟していたはずの韓国に「イケるぞ!」という雰囲気を作らせてしまった。

 日本は前半、同サイドから攻め続ける、あるいは中央から無理やり入っていこうとしてカウンターを受けることが多かったが、大きく逆サイドに展開する形を作れれば、もっと効果的な攻撃につながったのはもちろん、韓国の出足を抑えることにもつながっただろう。

 後半早々の時間にして、韓国選手の足がつっていたように、いつもと異なる戦いは彼らにとっても厳しいものだったに違いない。

 内野貴は、前半の攻撃を「ちょっと淡白な感じ」と表現したが、前半からもっと韓国ディフェンスを揺さぶっておけば、時間の経過とともに、日本は自然と勝利に近づいたはず。試合終盤に日本が何度もビッグチャンスを作り出せたのは、0−1というスコアのせいばかりではなく、必然の展開でもあっただろう。

 この試合に臨む両チームのスタンスを考えれば、攻め続けた挙句のスコアレスドローならともかく、0−1の敗戦はほめられる結果ではなかった。

 しかしながら、冒頭にも記したように、本当の勝負はこれから。ことさらショックを引きずる必要のない敗戦であることも確かである。

 日本はグループリーグの3試合で、控えGKの山田大樹以外の全員がピッチに立った。22人が少なくとも1試合に先発出場し、逆に3試合すべてに先発出場した選手はゼロ。出場時間を分散させながら、決勝トーナメント進出というひとまずのノルマを達成している。

「3戦目までのプランどおりに選手たちと臨んで、ひとり(山田大)以外は出場することができたし、(韓国に)勝ちたかったが、選手たちもいろいろ試しながらやってくれたので評価していいかなと思う」

 大岩監督もそう語っているように、中国戦で西尾隆矢が退場となったあとの時間を除けば、日本の選手たちは誰が出ても上々のパフォーマンスとコンビネーションを見せている。相手チームの特徴や試合展開に応じて選べるオプションは多彩だ。

 韓国に敗れ、少々ケチがついた格好にはなったが、これまでの流れは決して悲観するようなものではないだろう。

 グループ2位通過となったことで、準々決勝の対戦相手が地元カタールとなったことを心配する声もあるようだが、実力的にはさほど不安になるような相手ではない。

 ホームアドバンテージと言っても、そもそも試合会場のスタジアムは小規模なうえ、スタンドの半分も観客で埋まらず、カタールを応援するのはその一部。これまでの試合を見る限りでは、対戦相手に威圧感を与えるようなものではなかった。

 となると、最大の懸念材料は、いわゆるホームタウンディシジョン(ホームチーム有利の判定)。カタールがインドネシアを0−2で下したグループリーグ初戦では、甚だ疑問に感じる重要な判定がいくつかあったのは確かだ。

 だが、こればかりは何ともしようがない以上、むしろ過度に気にしてプレーが小さくなれば、相手の思う壺。その後のカタールの試合では、極端な判定の偏りは感じられないだけに、あまり気にせず、いつものようにプレーすればいい。

 力の上では、日本有利。韓国戦の負けを引きずらなければ、何ら問題はないはずである。

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