U−23日本代表が韓国戦で見せた「危うさ」 戦術的に勝負に徹しきれないプレーと采配

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2024年04月24日 17:41  webスポルティーバ

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「パリ五輪本大会出場」

 それが現在カタールで行なわれているU23アジアカップを戦うU−23日本代表の"至上命題"である。言い換えれば、どれだけつまらない試合をしようとも、パリへの切符をつかみ取ったら、ミッションは成功と言える。突き詰めると、そういう戦いだ。

 グループリーグ初戦の中国戦は、不用意な肘打ちによってひとりが退場となって窮地に陥り、苦しみながら勝ち点3を拾う内容だったが、たいした問題はない。また、明らかに力が劣るUAEを鮮やかな攻撃で下せなくても、何ら支障はなかった。すでに決勝ラウンド進出を決めており、韓国に終盤の失点で情けない負け方をしても、騒ぐほどのことではない。

 もともと、準々決勝、準決勝の2試合で命運を懸ける戦いなのだ。

 しかしながら、韓国戦では"勝負の歪み"が見えてしまったのも確かである。それを検証することは、U−23日本代表の現在を映し出し、これからを指し示すことになるかもしれない。

 韓国戦は、控えめに言っても退屈な試合だった。当人たちや足を運んだサポーターにとっては、感情が動かされたかもしれない。しかし客観的に見ると、勝負に対する意地のようなものは見えたが、技術や戦術などで見るべきものは少なく、スペクタクル性に欠けた。

 大岩剛監督が采配を振るう日本は、序盤から攻勢に出ている。前半、左サイドの平河悠が能力の高さを見せた。何度もドリブルで切り込み、得点の匂いを濃厚に漂わせている。しかし、得点を奪うことはできなかった。

 一方、ファン・ソンホン監督が率いる韓国は劣勢を覚悟していたようで、5−4−1の守備的なブロックを敷き、カウンターを狙う形を徹底してきた。能動性をかなぐり捨て、たとえ無様でもしぶとく守って、代わりに速攻やセットプレーを食らわせる。その割り切りがあった。何かを捨てて選び取る"縛り"によって、力を得た格好だろう。

 日本は攻めながらも、決死のカウンターに脅かされることになった。そのたびに守備が混乱し、攻撃の勢いが削がれる。攻めて勝ちたいはずだったが、そこのところで腰が据わっていなかった。戦力を恃んで、"なんとなく攻める"という浮つきが見えた。

【野澤の起用は「情」か?】

 そこで守備の脆さも出てしまった。前半終了間際に受けたカウンターは、3人が連続してボールホルダーへの寄せが甘く、ゴール前に入られている。後半にも、相手ひとりに対して3人が囲みながら、エリア内でシュートを打たれていた。完全に振られながらも食い下がる韓国のディフェンスとは、対照的だった。戦いに対する非情さのようなものが薄かったのだ。

 たとえば、今大会あれだけ好プレーを続けていたGK小久保玲央ブライアンを下げ、野澤大志ブランドンを先発させた理由が「できる限り、みんなに舞台を経験させたい」や「成長のため」という"情"だったら、アジアカップの際の鈴木彩艶と同じで、悪手だった。

 野澤は決勝点となった失点シーンで、ファーポストに飛んだコーナーキックに被ってしまっている。GKのミスと断じられるプレーだった(大外にいた半田陸もゾーンで突っ立っているだけで、完全にマークを見失っていたが)。野澤のミスはこれだけではない。前半もCKに被って触れず、そのままアウトになるシーンがあったし、後半はなんでもないシュートをキャッチしかけてファンブルしていた。明らかにナーバスで不安定なゴールキーピングだった。

 この試合の日本は、逆転で劇的に勝利していた可能性もある。

 終盤、たたみ掛ける波状攻撃は圧巻だった。セカンドボールの回収から襲いかかって、4、5回は決定機を作っていた。ラストプレーは、この日、一番美しい攻撃だった。ライン間でパスを受けた山本理仁が右サイドに通し、走り込んだ半田陸が折り返すと、大外で佐藤恵允がヘディングで狙った。その技量で韓国を翻弄したわけだが......。

 戦略的視点で言えば、小さな敗北だろう。しかし、戦術面で勝負に徹しきれなかったプレーや采配は、日本の危うさと言える。"前哨戦"に負けたことでグループリーグ2位になってしまい、準々決勝で開催国のカタール(ここまで、やや彼らに有利なジャッジが見られる)と戦う羽目になっているのだ。

 重ねて言うが、2連勝すればミッションは成功である。ただし、韓国にやり込まれた敗北からは学ぶべきだろう。勝負に対し、何かが足りなかっただけに――。

 3月25日、カタール戦は若き日本代表の試練となる。

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