50歳になっても“現役” 日本発の「モンチッチ」は、なぜ7000万体も売れているのか

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2024年04月25日 05:50  ITmedia ビジネスオンライン

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「モンチッチ」なぜ人気なの?

 日本発のキャラクターとして、世界30カ国以上でぬいぐるみや関連グッズが販売されている「モンチッチ」(定番シリーズが1760円〜)。その名を聞いて、どのようなイメージを抱くだろうか。「かわいい」「一家に1体はいる」「昭和レトロ」など、さまざまな声が聞こえてきそうだが、その歴史は長い。2024年には誕生50周年を迎え、ぬいぐるみの累計販売数は7000万体を超えている。


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 フランス以外の国では一時販売を休止していた時期もあるが、現在はアジア圏を中心に人気を拡大。国内で行うイベントには、海外からも多くのファンが訪れるという。


 なぜモンチッチは50年も変わらず世界で人気を集め続けているのだろうか。長年ヒットを続けている理由とは――。モンチッチを製造販売する創業105年のぬいぐるみメーカー・セキグチ(東京都葛飾区)のマーケティング部 山口恵子さんと新井恵理さんに話を聞いた。


●ヒット商品の組み合わせで生まれた「モンチッチ」


 1974年に産声をあげたモンチッチは、翌年に海外へ渡った。そばかす姿とおしゃぶりをするポーズが「かわいい」と反響があり、発売とともにブームを巻き起こした。


 実はそんなヒットの裏には、セキグチが手掛けていた2つの人気商品の存在があった。1972年に誕生したぬいぐるみ「くたくたモンキー」と、1973年に誕生した人形「マドモアゼル・ジェジェ」だ。


 同社は長年人形メーカーとして多くの商品を手掛け、海外にも輸出をしている中で、「何か新しい、かわいらしいキャラクターをつくってみよう」という企画が立ち上がった。試行錯誤の結果、行き着いたのが「体はぬいぐるみで、顔と手首はソフトビニール製の人形」という、ぬいぐるみと人形の特徴を組み合わせた斬新なアイデアだった。


●猿ではなく100%擬人化されたキャラクター


 現在ではやわらかい素材でつくられたぬいぐるみも多いが、当時の主流は、体が固く常に形を保っているものだった。「おばあちゃんのタンスの上にある人形ケースの中にかざられているようなものが多かった」(山口さん)


 「かわいさ」を追求する中で、同社は「体がくたくたとした、やわらかいものをつくろう」と、開発に着手。しかし、やわらかくしたことで形が崩れてしまうといった課題が生まれ、キャラクターの顔の形を保つことが難しかった。


 そこで人形メーカーである強みを生かして、「人形をベースに、体はやわらかいぬいぐるみ」という“良いとこ取り”をしたキャラクターとして誕生したのがモンチッチだった。前身となったのは、体がくたくたとした動物のぬいぐるみ「くたくたシリーズ」の中でも特に人気だった「くたくたモンキー」と、指をしゃぶるポーズで同じく人気を博していた人形の「マドモアゼル・ジェジェ」だ。


 モンチッチというネーミングは、響きのかわいさからフランス語で「私」という意味の「モン」と、「小さくかわいいもの」という意味を持つ「プチ」を合わせた造語だという。おしゃぶりをいつもチュウチュウと吸っていることから、モンチッチの名が付けられた。


 「よく『モンキーだからモンチッチだ』と解釈する方も多いが、モンチッチは猿ではなくモンチッチというキャラクター。『お猿のようにかわいい』という表現はするものの、100%擬人化されているキャラクターで、モンチッチも人のようにいろいろなモンチッチがいる」(山口さん)


●人気の理由は、設定に縛られない「自由度の高さ」


 このように誕生したモンチッチだが、日本だけでなく欧州や米国、アジア圏など、なぜ異なる文化圏の国々で多くのファンに支持されているのだろうか。


 同社ではその理由として、立体(商品)からつくられたキャラクターであるがゆえに、細かなプロフィール設定がなく、楽しみ方の自由度が高い点が挙げられるとしている。


 「キャラクター商品はイラストから入るアート先行のものが多いが、モンチッチに関してはぬいぐるみという商品から広がっていった経緯がある。現在はアート商品もあるが、モンチッチというキャラクターについては『絶対にこう』といった設定がない」(山口さん)


 「モンチッチを手にした人が、例えば友達、兄弟、子どものように、それぞれが思い思いの感情移入をしている。家に帰ったら『モンチッチ』ではなく別の名前で呼んでいる人もいるほど、自由度の高い点がモンチッチの大きな魅力であり、愛される理由だと感じている」(山口さん)


 近年はモンチッチの誕生日である1月26日に合わせて東京駅で期間限定ショップを開設し、撮影会も行うなど、オフラインのイベントにも力を入れている。ファン同士がそれぞれの“マイモンチッチ”を持ち寄り、異母兄弟のように交流している姿も見られるという。


 性別は分けているものの、年齢や居住地などの細かなプロフィールはなく、日本にいるモンチッチもいれば海外にいるモンチッチもいる。公式のプロフィールに縛られることなく、自由に楽しめる点が魅力の1つといえる。


●約10年の「休み」期間を経て、苦労したこと


 冒頭でも触れたが、モンチッチには50年の歴史の中でフランスを除いた国で販売を一時休止していた時期がある。理由は「メーカーとして別のものに注力するためだった」としているが、あくまで休止期間であり、その間も同社には多くのファンから熱心な声が届き続けていた。


 そんな顧客の声に応えるべく、モンチッチ誕生20周年となる1994年に復活を決定。約2年の準備期間を経て、1996年に日本および米国(ニューヨーク)、ドイツで再デビューを果たした。


 その際、同社としては予想外の出来事が起きてしまった。もともと売れなくて販売休止をしていたわけではないのだが、約10年の間に、モンチッチが『懐かしい』と思われるキャラクターになってしまっていたのだ。


 「発売当時とは年代も変わり、モンチッチに対して『昔いた』『懐かしい』という印象を持つ人が多くいた。復活当初は『しょうがない』と思っていたが、5年〜10年たっても『懐かしい』といわれてしまうことがあった」(山口さん)


 そうしたイメージを払しょくするために、新商品の発売に加え、積極的にイベントも開催。詳細なキャラクター設定を持たない自由度の高さを生かし、「今もモンチッチは現役で活動している」ことを広く認知してもらえるよう、取り組みを続けている。


 2010年からはメインの客層である25〜50歳以外の層へもアプローチすべく、高校生とともに開発した「JOLモンチッチ」を発売。デザイナーやアーティスト、人気キャラクターとのコラボ企画も積極的に実施しているほか、セキグチの本社がある東京都葛飾区と協業した各種取り組みも行っている。


 モンチッチを手にした人がいずれ親世代となり3世代、4世代で楽しむなど、後世への広がりも期待しているが、実際にイベントでは親子3代で参加しているファンも多いという。


●SNSによる予想外の反響も


 モンチッチはX(旧Twitter)やInstagramなど、各SNSでも活動の幅を広げている。フォロワー数が最も多い公式Instagramを見ると、30〜50代が半数以上。昨今の昭和レトロブームもけん引し、モンチッチを知らなかった若年層へもSNSでリーチしており、「かわいいキャラクターだと思い、調べたらモンチッチだった」という今の時代ならでは顧客接点も生まれている。


 国別では、特に近年タイでの人気が拡大しているという。「芸能人やインフルエンサーがタイ語でモンチッチのハッシュタグを付けて投稿ところ、一気に認知度が広がり、国境を越えてモンチッチを認知してもらう機会が増えた」(新井さん)


 モンチッチの誕生日に合わせ行うイベントに関しても、タイからの問い合わせが増加。購入希望の声も多数届いているようだ。


 「こうしたSNSでの広がりを見ていても、最も大切なのは世の中に出続けること、新しいモンチッチをつくり続けることではないかと感じている。今後はモンチッチファミリーや『チムたん』などの友達キャラクターも一緒に育てつつ、100周年に向けてモンチッチが長く多くのファンに楽しみ喜んでもらえるよう、途絶えることなく続けていきたい」(山口さん)


(熊谷ショウコ)


このニュースに関するつぶやき

  • じぇじぇもせきぐち!(◎_◎;) 当時高くて買ってもらえなかったなあ。 おしゃぶりの麦わら帽子かぶったお人形。 当時はやっていたな。 変わりのにたお人形買ってもらったけど。
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