山手線沿線の再開発が進む 「新宿、渋谷、品川」駅の工事はいつ終わるのか

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2024年04月25日 07:51  ITmedia ビジネスオンライン

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「新宿、渋谷、品川」駅の工事はいつ終わるの?

 東京一極集中が進む中、国も東京都も「東京」の世界的競争力を高めようと、力を尽くしている。鉄道会社も深くかかわり、企業としての生き残りを図るべく、「都市改造」ともいうべき大規模な再開発を進めている。


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 首都圏、それも都心に近づくほど、都市を改造しようとする動きが進んでいる。その象徴が山手線沿線だ。いくつもの駅で再開発プロジェクトが進み、新宿駅は2040年代、渋谷駅は2027年度、品川駅は2036年度の完成を目指している。多くの人が集まる都心部が、変わろうとしている。


 そんな再開発エリアを、歩いてみた。


●永遠に再開発が行われる街、新宿


 江戸時代の新宿といえば、宿場のひとつ(内藤新宿)であって、明治時代になっても東京の「街外れ」であったが、今やすっかり東京の中心部になってしまった。日本の鉄道で最も多くの人が利用するのは新宿駅であり、巨大迷宮化と思えるくらいに駅の規模が広がってしまった。駅の内側も外側も、工事に次ぐ工事、さらに工事と相次ぎ、いつも工事をしているような状況になっている。


 駅の利便性向上を図るための工事もあれば、商業施設やオフィスなど、不動産価値を高め、収益力アップを目的とした工事もある。それらに、行政も鉄道会社も大きく関与している。


●「小田急百貨店」や「明治安田生命新宿ビル」が取り壊し


 最近話題なのは、「小田急百貨店」が取り壊されたことだ。現在、この建物が取り壊されたことで、「スタジオアルタ」が入っていた新宿東口駅前の「新宿アルタ」が西口側から見えるようになり、広い空が広がっている。


 この地には、地上48階、高さ260メートルの複合施設がオープンする予定だ。商業施設とオフィスを備えた建物となる。2029年度に竣工予定である。


 現在は建物が取り壊されたことで、非常にすっきりとした状態になっている。地下にある各路線の改札を結ぶ通路は複雑でも、地上はもうほとんど何もない、という状態だ。小田急百貨店の建物自体も大きかったが、それよりも大きな建物がこの跡地につくられる。


 道をはさんで反対側の「明治安田生命新宿ビル」も建て替えのため取り壊されており、ヨドバシカメラ新宿本店の全体像もよく見える。「いずれこのお店も建て替えとなるのだろうか?」と考えてしまう。


 新宿西口から南側へちょっと向かうと、こちらでもビル工事が進んでいる。京王電鉄とJR東日本が開発するビルで、地上37階、高さ225メートル。「新宿サザンテラス」に面している。


 このエリアの小さなビルの敷地や建物を両社が買い上げ、鉄道会社の力で巨大ビルを手掛ける。京王電鉄が関係しているということは、「京王百貨店」の建物にももちろん影響する。


 京王百貨店とJR東日本系列の「ルミネ新宿 ルミネ1」がある場所には、サザンテラスに面するビル群が建ち、2040年代の完成を目指している。現在は2024年なので、ずいぶん先の話である。これらのビルには、オフィスや商業施設、ホテルなどを入居させるとのことだ。


 なお、この工事で京王電鉄の新宿駅も変わる予定だ。新宿駅のホームを現在よりも北側にずらし、東京メトロ丸ノ内線に行きやすくする。


 そもそも、これらの計画は「新宿グランドターミナル」構想の基に進められており、個々の巨大建築はその一部でしかない。歩行者にとって使いやすい、つまり鉄道利用者にとって利便性が高いまちづくりを目指しており、そのことが都市の価値を高めるという考えのようだ。


 JR東日本新宿駅構内の工事も、こういったグランドデザインの一環である。長期にわたり都市を改造することによって、世界の中の東京、東京の中の新宿の存在感を高めることにつながる。それは、行政にも鉄道会社にもプラスとなる。


●東急の街・渋谷、JR東日本と東京メトロも一緒に


 新宿に続き、渋谷も長期にわたって工事が進められている。副都心線の開業、同線と東急東横線の接続、合わせて東急東横線の地下化から、渋谷駅周辺は長い工事期間に入っている。


 この工事により、利用者の間では渋谷駅の迷宮化や、移動の不便さが問題視されるようになった。ただ、渋谷駅は継ぎ足しに継ぎ足しを重ねて駅が形成されてきた歴史もあり、それらを整備しようとすると大規模な改造工事が必要になるのは、致し方ないことである。


 JR東日本では埼京線や山手線、東京メトロでは銀座線のホーム再整備や移設などが行われ、そのたびに運休などが実施された。「でも、そもそも東京メトロ銀座線の渋谷駅って、東急グループの実質的創業者・五島慶太による東京高速鉄道の駅だったよなあ」とも思ったりする。


 渋谷を巡ってさまざまな経緯を持つ鉄道各社と行政の調整により、現在の再開発が進められることになった。


 渋谷駅周辺の再開発は、順調だ。渋谷駅桜丘口エリアでは、東急主導の開発であるにもかかわらず、JRの改札が備えられる。混雑の激しい渋谷駅の改札をよりスムーズにできる、といったメリットがある。


 同エリアの住民にとって、ここに改札口ができることは悲願であった。2024年秋に改札ができ、駅舎は2027年の完成を目指している。現地を見て、ここに改札ができると渋谷駅周辺の混雑は緩和できると感じる。


 渋谷駅の面倒くささを解決できるのは、2027年度オープン予定の「渋谷スクランブルスクエア」(中央棟・西棟)が開業してからのことになりそうだ。現在オープンしている渋谷スクランブルスクエアは東棟で、巨大な建築物であるものの、計画の一部でしかない。こちらができることで、渋谷駅はより利便性の高いものになり、駅周辺の回遊性も高くなる。


 「できるまで、もうしばらく辛抱が必要だ」と言ってしまっていいのか分からないが、完成することで駅自体は使いやすくなるだろう。


 再開発で不動産価値を向上させるだけではなく、鉄道の価値も向上させる。そのために、いったんは不便にせざるを得ない、というのが渋谷駅である。もっとも、不便になっている期間が長いため、利用者から不満が出てくるのも理解できる。


●駅の改造もともなう品川駅や高輪ゲートウェイ駅周辺の再開発


 品川駅周辺でも、複数の鉄道会社が関与する再開発計画が進んでいる。この再開発とJR東日本の高輪ゲートウェイ駅周辺の開発は、一体となって行われている。


 品川駅周辺の事業を進めているのは、京急電鉄とJR東日本。京急電鉄では、現在高架になっている駅をあえて地上に降ろし、橋上駅舎にする。それにより駅自体のホームを増やし、混雑の激しい京急電鉄品川駅が抱える課題を解決したい狙いだ。


 JR東日本の品川駅と京急電鉄の品川駅が同じフロアになることで、乗り換えルートを分かりやすくする。


 品川駅には、東京メトロ南北線が白金高輪方面から乗り入れ、かつ(いつできるか分からないが)リニア中央新幹線の発着駅となることで、より一層の拠点性向上が期待される。合わせて、高輪ゲートウェイ駅の「高輪ゲートウェイシティ」の開発も進む。


 京急電鉄品川駅の建物は封鎖され、駅周辺の多くがさら地になっており、巨大な建物を建築することが予想できる。高輪ゲートウェイ駅周辺に行ってみると、高層ビルが次々に建っており、急ピッチで工事が進められていた。


 今回見てきた山手線主要駅の再開発は、その駅にかかわる鉄道会社が企業価値を高めるため、行政が都心部の価値を高めるため、そして世界における東京が主要都市として生き残るために進めているものである。


 それゆえに大規模なものになり、完成までに時間がかかる。今後は、池袋駅西口の再開発も進む予定だ。このエリアはまだ雑居ビルなどが建っており、近く整備が始まるのだろう。


 2030〜40年代にかけて、山手線エリアは大きく生まれ変わる。


(小林拓矢)


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