30畳対応の大風量なのに静か、シャープ初の「サーキュレーター」が採用する“ネイチャーテクノロジー”とは?

0

2024年04月28日 07:21  ITmedia NEWS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia NEWS

シャープ「プラズマクラスターサーキュレーター<PK-18S01>」(実勢価格2万4200円)。カラーはアッシュブラックとライトグレーを用意

 シャープが、同社初となるサーキュレーター「プラズマクラスターサーキュレーター<PK-18S01>」を4月18日に発売した。最大30畳に対応する大風量と、最大で49dB(騒音レベルは“静かな事務所”)、8畳向きの風量(風量4)なら34dB以下の静音性を兼ね備えている。


【その他の画像】


 この大風量ながら静音性も実現したのが“フクロウの翼”形状を応用した新開発のファン「ネイチャーウイング」だ。シャープでは、このサーキュレーターの開発に3年以上をかけたという。


 さらに、工具不要で分解清掃できる構造、生乾き臭を消臭できる「プラズマクラスターNEXT」を搭載。新登場のサーキュレーターについて、開発を担当したシャープの馬場木綿子さんに話を聞いた。


●01年に休止の扇風機事業を11年に再開


 そもそも扇風機は、エアコンの普及が進んだ1990年代後半ごろに各社が海外生産へシフトした結果、価格競争が激化。シャープは01年の発売を最後に扇風機事業を休止した。しかし10年後の11年、東日本大震災による節電需要に合わせて扇風機の開発製造を再開。震災からわずか3カ月の6月には、プラズマクラスターを搭載した扇風機の1号機を発売している。


 その後、ラインアップの拡充や風質の追求などにより成長を続け、16年には事業規模が4倍以上に拡大。そしてコロナ禍の在宅生活により、サーキュレーターの需要増加が起きた。シャープの推定によると、扇風機市場全体に占めるサーキュレーターの構成比は、19年度まで20%以下だったが、23年度には37%にまで伸びた。24年度は40%に達すると想定しているという。


 「20年の新型コロナウイルスの流行に伴って、WHOや政府から換気が推奨された結果、サーキュレーター需要が一気に拡大しました。コロナ自粛が終わったいまでも、構成比は上昇を続けていて、40%近いところまで来ています。この背景には電気代の高騰があり、サーキュレーターをエアコンと併用することで効率よく冷暖房できることがあります。サーキュレーターの需要はますます拡大すると考えています」(馬場さん)


 そこで21年にサーキュレーターの開発構想をスタートしたが、発売まで丸3年かかった。開発時に重視したのが風力と静音性の両立だ。シャープの調査によるとサーキュレーターを購入するときに重視する点は風量で、対する不満点は「掃除しにくい」「ホコリが溜まりやすい」「音がうるさい」の3点だったそうだ。


 「サーキュレーターはすでに競合がいる市場でもあり、いい加減な製品は出せないと考えました。11年に3カ月で扇風機を開発したのは社内でも伝説になっていますが、現在はファン事業を長くやっていて、(アホウドリの翼の形状などを応用した)ネイチャーウイングやプラズマクラスターなどの価値にもこだわってきました。お客様もそれを期待されていると考えました」(馬場さん)


 しかし当初、この大風量と静音性の両立がなかなかうまくいかなかった。しかし中途半端な製品は出せないと考え、開発を一からスタートし直して4月の発売となったのだ。


●“フクロウの翼”を応用して運転音を低減


 プラズマクラスターサーキュレーターの最大の特徴が、フクロウの翼を模した羽根を採用していることだ。シャープではさまざまな家電製品に、動物や植物の形状を模したネイチャーテクノロジーを採用している。例えば扇風機の羽根には、ムラのない滑らかな風を届けるために蝶・アサギマダラの羽の形状、直進性の高い風を生むためにアホウドリの羽根の形状などが採用されている。


 今回採用されたフクロウは無音で飛ぶことができる鳥だ。深夜に狩りをするため、獲物に音を気づかれないような翼の構造になっている。シャープではこの構造をサーキュレーターに取り入れた。フクロウは、翼の断面にある膨らみの部分で空気を捉えて揚力(浮かび上がる力)を蓄え、翼の後ろの部分で風の勢いを強化することで、静かに羽ばたく。


 「このフクロウの翼のテクノロジーをファンの断面に応用したのが、今回のネイチャーウイングです。効率よく空気を捉えることで、優しい運転音で大きな風量を得ることができました。さらにネイチャーウイングを基本に、風の広がりを抑えて直進性を高めるらせん状ガードや、風路を絞ることで風の勢いを高める本体構造により、パワフルな風をさらに強化する工夫をしています」(馬場)


 このネイチャーウイングと本体構造により、開発時の目標だった「最大50dBを切る運転音」を実現している。さらに、全体的な音量を下げるだけでなく、耳障りなピーク音も抑えることができた。


●メンテナンス性の高さと消臭機能も搭載


 プラズマクラスターサーキュレーターは、メンテナンス性も高い。ガードやファンは全て手回しで外せる構造となっており、汚れが気になったらすぐに清掃できる。サーキュレーターは強力な風を出すため、室内のホコリなども吸い込みやすく、それが後ろガードやファンに付着してしまう。これを工具なしでさっと取り外し、さらに水洗いもできる仕組みになっている。


 また、サーキュレーターは部屋干し時に使われることも多い。そこでイオン濃度を5万個/cm3まで高めた「プラズマクラスターNEXT」を搭載。衣類に付着する生乾き臭を抑えることができるという。


 「サーキュレーターは、床に近いところに置かれたり、サニタリールームなどの繊維ごみが多いところに置かれることがあるため、メンテナンス性にもこだわりました。また搭載するプラズマクラスターは、当社で最も濃度の高いブランドである『プラズマクラスターNEXT』なため、生乾き臭に加えて、ペット臭や排泄物臭、加齢臭などさまざまな臭いに効果を発揮できます」(馬場さん)


 ネイチャーウイングに加え、メンテナンス性の高さとプラズマクラスターNEXTという3大機能に続いて注目したいのが構造・デザインだ。プラズマクラスターサーキュレーターでは送風部が台座から浮いたフローティングファンという形状を採用している。この構造により、上下140度に首振りができる。棚の上などに置いて下方向に風を送ることも可能。子どもの手の届かないところに置きたいというニーズにも応えている。


 また本体にはファブリック調のデザインを採用し、リビングなどに置いても違和感がない。グレー系のシックなカラーリングも高評価だ。


 発売前の段階から量販店などの反応もよく、空調家電では珍しく発売前から予約が入るほどに注目を集めたという。馬場さんは「販売店からの引き合いなどを加味して、当初の目標としていた月産3000台の2倍以上を狙っていきたい」と新製品の展望を語った。


(コヤマタカヒロ)


    ニュース設定