パリ五輪がかかるイラク戦でもカギに 群を抜く荒木遼太郎が「世界」向きの理由

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2024年04月28日 07:50  webスポルティーバ

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 カタールで行なわれているU−23アジアカップで、U−23日本代表は準々決勝で開催国を2−4と下し、ベスト4に進出している。

 韓国戦後の記事にも書いたとおり、チームにとっては「パリ五輪本大会出場」というのが絶対的ミッションで、試合内容は問われない。グループリーグ3試合は、控え目に言っても凡戦だったが、勝てば官軍、負ければ賊軍。結果がすべだ。

 準々決勝カタール戦も、前半でひとり退場者を出した相手を攻めきれず、一度は逆転される始末だった。「中東の笛」が危惧されていたが、ふたを開けてみれば、むしろ判定で恩恵を受けていた(相手GKはペナルティエリア外でヘディングした時、確かに細谷真大を右足で蹴っていたが、左足で踏み切ってヘディングをする場合、右足を後ろに強く蹴るのは定石だ。一方で日本は、大会を通じ、ペナルティエリア内で相手に自由にシュートを打たれすぎている(ゾーン云々の問題ではない)。結局は疲労困憊した相手に追いつき、延長戦で勝ち越しゴールを決めたわけだが......。

 ただ繰り返すが、どれだけ退屈な試合を重ねていたとしても、すべては勝利で肯定される。

 大岩剛監督は完全にスランプ状態だったストライカー、細谷を信じて使い続けた。実際にカタール戦でも決定機を外し、自信のなさからか動きのダイナミズムを欠いた。だが、結果的に相手の退場を誘発し、決勝点も叩き込んでいる。こうした起用法と活躍も、美談で語られるのだろう。パリ五輪出場という結果を出せたら、あらゆることが正義だ。

 とにかく、日本はあと1勝というところまで来た。

 勝利を呼び込んでいる敢闘賞には、GK小久保玲央ブライアンの名前を挙げたい。DF木村誠二、関根大輝のふたりは、攻撃面では健闘しているが、守備では全体的に緩さが目立ち、その意味でも小久保はチームを救うセーブが際立った。中国やUAEの選手のシュート精度や強度が低かったのも事実だが。

 他に山本理仁は中盤でセンスのよさを見せているし、平河悠は「戦える」という点でサイドアタッカーとして大会屈指だろう。ふたりは技能賞と言ったところで、可能性を感じさせている。パリ五輪に向け、世界に実力をアピールするチャンスだ。

【ライン間のプレーで傑出】

 しかし、ひとり群を抜いているのは、荒木遼太郎だと言える。パリ五輪予選の前哨戦となったウクライナ戦でも、トップ下に近いインサイドハーフとして攻撃を牽引していたが、ゴールに向かう迫力があって、抜群のセンスを感じさせた。

「荒木はパス精度が高いし、スペースで受けるうまさもあるから、自然とボールが集まる」(藤田譲瑠チマ)

 荒木は技量が高く、スペースの感覚に優れ、タイミングの名人で"時間を操れる"。日本代表でいえば、鎌田大地(ラツィオ)、伊藤涼太郎(シント・トロイデン)の系譜を継ぐ選手だろう。「ゴールの予感」を与えられる選手だ。

 先発したUAE戦では、角度のないところから、右足でバーをかすめるシュートを放っている。オフサイドで取り消されたが、ニアサイドに入ってフリックするシュートも非凡だった。韓国戦も平河のパスをライン間で受け、ダイレクトで左へパスし、シュートチャンスを演出。さらに松木玖生からライン間でボールを受けると、反転からGKを脅かす際どいシュートを放っていた。

 いわゆる"ライン間の魔術師"と言える。カタール戦では、藤田からのパスをMFとDFラインの間に呼び込み、一瞬でターンすると、裏に抜けた細谷へ絶好のスルーパスを差し込んでいた。まさにほとばしるセンスだった。

 そのライン間でのプレーは特別である。サイドからのクロス、ニアゾーンの崩し、ミドルシュートなど、いろいろな攻撃パターンはあるが、ライン間で前を向けたらほとんど無敵。塹壕も遮蔽物も一瞬で取り払って、"丸裸の敵"をドリブル、パス、シュートと無制限に攻撃できる感覚だ。

 その点で荒木は傑出している。世界でいえば、ポルトガル代表ジョアン・フェリックス(バルセロナ)に似たファンタジスタと言える。フィジカルや目に見える守備を要求する監督やプレースタイルのもとでは、不遇をかこつことになるかもしれない。一方でボールプレーヤーとして自由を得ると、活躍に際限がない。

 もうひとつ、荒木は性格も「世界」向きだ。

「モチベーションはどの試合も一緒」
「いつでも、選ばれたら行く準備はできている。自分のパフォーマンスを上げるだけ」
「ボールを動かし、隙を作りながら、前進させる。もっともっとゴールに絡みたい」

 こうした荒木の言葉は、どこか飄々としているが、それは才気に恵まれた選手だけが持つ気概や果断さの裏返しだろう。ゴールへの道筋は見えている。もし、それをチームメイトと共有することができたら――。

 4月29日、U−23日本代表の準決勝はイラクとの対戦になった。イラクには、フル代表がアジアカップで金星を献上している。身体能力が高い選手が多く、高さやパワーを生かした攻守が伝統的で、タイプとしては苦手か。

 ただし、荒木のような選手が輝くことができれば、物の数ではないだろう。

このニュースに関するつぶやき

  • 韓国に負けた時はどうなるかと思ったけど、監督やコーチ、選手全員で上手く立て直したと思います。このままぶっち切って予選突破、優勝してほしいですね。
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