どれだけ知ってる? 教習所で教わらないバイクTips 第42回 クルマとはカタチも扱い方も違うのはなぜ? ハンドルの重要性

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2024年04月28日 08:10  マイナビニュース

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バイクに乗る時、当たり前のように両手で握るのが「ハンドル」。クルマにもハンドルはついており、どちらも動かせば前輪が左右に切れますが、それぞれの形状はずいぶん違います。



また、バイクはクルマのようにハンドルを回さなくても曲がっていきますが、同じ「ハンドル」なのに何が違うのでしょうか? 今回はその仕組みや重要性について解説します。

■同じ「ハンドル」でも、クルマとバイクでは形も扱い方も大きく異なる



クルマのハンドルはリング状で、カーブを曲がる時はドライバーが両手を使って内側にグルグルと回さなければなりません。クルマは1トン以上の車重があり、少なくともその半分の重さが前輪にのしかかっていますが、ハンドルと前輪はギアやシャフトで連結され、油圧や電動のアシストもあるので、エンジンがかかっていれば軽い力で回すことができます。



対してバイクのハンドルはバー形状で、前輪がついたフロントフォークとトップブリッジに直接取り付けられているため、回す角度も30〜40度ほど。油圧などのパワーアシストもついていません。カーブを曲がる時にクルマのようにハンドルを内側に切ることはなく、強引に切ろうとすると車体は逆らうようにアウト側に傾いて直進を維持しようとします。この挙動は同じ二輪車である自転車も同様です。



二輪と四輪でハンドルの形状や扱い方が違う理由は、車体を支えるタイヤの本数が関係しています。クルマはハンドルでタイヤを内側に切ることで進行方向を変えますが、車体は遠心力でアウト側に飛び出そうとします。しかし、外側のタイヤで踏ん張ることができます。



バイクの場合はタイヤが前後に2つしかないため、クルマのように外側のタイヤで踏ん張ることはできません。そのため、遠心力には車体を内側に傾けることで対抗します。コインを転がすと傾いた方向に曲がっていきますが、バイクや自転車のような二輪車は主にこの現象を利用してコーナリングしているわけです。それならハンドルは不要かと言うと、そうではありません。


■繊細かつ重要な役割を持つバイクのハンドル(ステアリング)



クルマのようなハンドル操作は行わないのに、なぜバイクにもハンドル(ステアリング機構)がついているのでしょうか? それは、車体を傾けて曲がるバイクもステアリングがなければカーブを曲がるどころか、真っすぐ走ることすらできないからです。



バイクはハンドルから手を放しても真っすぐ走りますが、これは車体が安定して直進するように設計されているためです。見た目上、前輪は車体の先端にありますが、実際は後輪に押されたフレームに引っ張られるように追随しており、車体が倒れないように左右に切れてバランスを取っています。そして、バイクを曲げるには、この自動バランスをライダーが意図的に崩し、車体を内側に倒さなければなりません。



バイクがコーナリングに入る際のタイヤの軌跡を見てみると、曲がる直前に前輪は後輪よりも外側を回っています。前輪が外回りすることでバランスを失った車体が内側に倒れはじめ、ある程度傾いたところで再び前輪が内側に切れ始め、それ以上は倒れないように再びバランスします。



この仕組みは自転車と同じで、多くのライダーは自転車の経験から無意識に二輪車を操る感覚をつかんでいます。前章ではハンドルを無理に切るとバイクは反対側に傾こうとする挙動を解説しましたが、わずかにイン側のハンドルを押してアウト側に切り、シートやステップからの荷重も加えることで、前輪が外側に逃げてバランスを崩すという“コーナリングのきっかけ”を作り出しているわけです。



一般的にこの操作を「逆操舵」と言い、重くて曲がりにくかった昔の大型バイクではプロのレーサーも積極的に行っていました。今でも上級者は状況に応じてハンドル入力を行いますが、現在のバイクは思いきり逆操舵をしなくてもブレーキリリースと下半身からの荷重を意識するだけでコーナリングできるようになっています。無意識でわずかにハンドルを押し引きしているはずなので、強引にコジると旋回力が低下したり、フロントタイヤのグリップを失ってしまうので注意してください。

■ハンドル周辺に異常があるとどうなる?



このようにバイクにとってハンドル(ステアリング)はとても重要で、故障や劣化で作動性が悪くなると前輪の反応が遅れてしまいます。直進時やコーナリング時に突然フラついて倒れそうになるため、ライダーはバイクを信頼できず、とても怖い思いをするはずです。



バイクのハンドルは前輪がついたフロントフォークやブラケットに取り付けられており、これらがフレームとの接合部で左右に回転するようになっています。ここはスムーズに動くように上下2つのベアリングを挟んで固定されていますが、ハンドリングが悪化するトラブルの多くはこのベアリング廻りの異常によるものが大半です。



ベアリングに異状が出る原因は、経年によるグリス切れやサビなどの腐食のほか、前輪を路面の段差や窪みで強く打ちつけたり、事故や立ちゴケなどでハンドル廻りに大きな衝撃を受けた際にベアリングとレースを痛めてしまうことが挙げられます。



また、ベアリングを上から押さえつけているステムナットは締めすぎでも緩すぎでもハンドリングが悪化し、ベアリングとレースを痛める原因になってしまいます。メーカーの整備マニュアルには締め付けトルクの数値や手順が記載されていますが、ここの調整は非常にシビアなため、ほとんどのメカニックは個体差を考慮して微調整を加えています。


■初心者でもできるステアリングの点検方法



ステアリング周りの点検方法はそれほど難しくはありません。もしも走行中にフラフラしたり、加減速でステアリングから小さな音や衝撃が伝わるようならステム廻りのトラブルと考えてよいでしょう。ベアリングのダメージがなければグリスアップやステムの締め付け調整だけで直ることもあります。



しっかり点検するにはハンドルが自由に動くように前輪を浮かせます。バイクショップは専用のスタンドを使いますが、センタースタンド付きのバイクなら、リアに荷物を載せれば前輪が浮くはずです。フリーになったハンドルを左右に振って、特定の場所で引っかかったり、動きの渋さがないかを確認します。



DIYユーザーの中には自分でベアリングのグリスアップや締め付け調整のほか、フレームに圧入されたベアリングレースの打ち替えまで行う人もいますが、ここの調整はとても繊細なので初心者にはおすすめできません。ミスをすると転倒したり、部品を破損して高額な修理代がかかってしまうので、自信のない方は無理せずショップに依頼してください。



ステアリング以外にもタイヤやサスペンションなど、バイクは足廻りがしっかりメンテナンスされていると、直進時は矢のように安定し、コーナリングや切り返しも気持ちよく決まります。ライディングが楽しくなるので、ぜひ点検してみてください。


津原リョウ 二輪・四輪、IT、家電などの商品企画や広告・デザイン全般に従事するクリエイター。エンジンOHからON/OFFサーキット走行、長距離キャンプツーリングまでバイク遊びは一通り経験し、1950年代のBMWから最新スポーツまで数多く試乗。印象的だったバイクは「MVアグスタ F4」と「Kawasaki KX500」。 この著者の記事一覧はこちら(津原リョウ)

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