RIZINフェザー級王者・鈴木千裕は「最短」にこだわる「子どもたちが格闘家を目指すキッカケをつくりたい」

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2024年04月28日 10:50  webスポルティーバ

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「キックとMMAの二刀流を目指す」と宣言し、初代KNOCK OUT-BLACKスーパーライト級王座と第5代RIZINフェザー級王座のベルトを持つ二冠王者・鈴木千裕。伝統派空手、キックボクシング、そしてブラジリアン柔術(茶帯)をバックボーンに持つ鈴木は、2023年11月4日にアゼルバイジャンで開催された『RIZIN LANDMARK 7』で、ヴガール・ケラモフを1RTKOで下し、第5代RIZINフェザー級王者に。またYouTubeチャンネルも運営しており、ファンとの交流も積極的に行なっている。

2021年7月18日、後楽園ホールで行われた初代KNOCK OUT-BLACKスーパーライト級初代王者に輝いた鈴木千裕は、勝利者マイクで総合格闘技への再挑戦を宣言。2カ月後の2021年9月19日さいたまスーパーアリーナで開催された『RIZIN.30』で総合格闘技再起、及びRIZINデビューを果たした。

――MMAへの再起戦の対戦相手は、パンクラスで活躍しライト級王座の経験もある昇侍(しょうじ)選手でした。

鈴木千裕(以下同)「『秒殺で行ったるわ』と意気込んで行ったら、打ちのめされました。正直、下馬評は僕が圧倒的有利。だからといって、余裕があったわけでもなく過信もしなかった

 でも、心のどこかでは『勝てるかも』と、ちょっとした自信というか自分への期待があったんですよね。

――鈴木選手は、試合の間隔が他の選手から比べると短いと思いますが、どうしてでしょうか?

「僕の中に人生、生き急いだほうがいいっていう哲学があって、とにかく『最短』にこだわっています。最短でチャンピオンにならなきゃいけない。

 というのも、格闘技は30歳前後での引退が相場。22歳でRIZINデビューした僕は、23、4歳でチャンピオンになるのを目標にやってきました。そしてその後は、一番体が動く25〜28歳で大活躍して、29、30歳ぐらいで引退。

 大活躍できる年齢で、チャンピオンになっていないと、格闘技界の中心に立って掻き回せない。だから遅くても25歳までにチャンピオンになっていたいという思いから、最短にこだわっています」

――2023年6月24日、RIZINフェザー級王者のクレベル・コイケ選手とのタイトルマッチでは、前日計量でクレベル選手が体重超過で王座を剥奪。そのため鈴木選手が勝った場合のみ王座獲得、クレベル選手が勝った場合はノーコンテストとの規定で、鈴木選手が敗れノーコンテストとなり、王座は空位となりました。

「あれは相手の体重が超過していようがいまいが、結果はたぶん変わらない。ひとつ言うなら、自分の意見を通さず、チームの作戦に従った。僕が強引に突っ込める瞬間があったけど、チームの作戦どおりにしようと思い、僕は行かなかった。

 負けた後、『なんで俺は第三者に委ねてしまったんだ。なんでチームに俺の人生を委ねてしまったんだ』とほんとに後悔しました。ましてやタイトルマッチだったので、『なんで人生の大一番を人に任せちゃったんだろう』って。反省しています」

――もう一度クレベル・コイケ選手と戦いたいですか?

「もちろんです。ただ『すぐに戦いたい』という焦りはありません。僕がチャンピオンでいれば、それは実現します。チャンピオンになりたくない人ってひとりもいない。だから僕がベルトを持っていれば、おのずとクレベルが勝ち上がって戦わざるを得ない。その時にリベンジを果たせばいい。

 あの試合は、僕の負けだと思っています。公式では7連勝ですが、僕自身7連勝だと思っていない。僕の中でクレベルに負けているっていう気持ちがあるので、必ずやりかえしますよ」

――クレベル戦からわずか1か月後の2023年7月30日、超RIZIN.2で現Bellatorフェザー級王者のパトリシオ・ピットブルと70kg契約で対戦し、鈴木選手がKO勝ちを収めました。

「正直、一日も早く試合がしたかった。でも、『もっと休みを取ってリフレッシュしたほうがいい』と周りから言われて、僕は試合の6日前まで福岡にいました。海でバカンス気分を味わい、子どものイベントに参加して、東京に戻ってきました。

 戻った翌日、『試合があるぞ。どうする?』って言われて、『やります』と即答しました。1カ月に2、3回しか練習をやっていなかったけど、どうしても試合をしたくて、急ピッチで調整しました。

 その試合の作戦を立てる時に、『作戦いらないです。俺がやりたいように戦わせてください』と言いました。結果、自由に戦ったらいい試合ができた。今までで一番いい試合ができたと思っています。

 充分な練習をせずに挑んだ試合でしたが、心も安定して体も動いた。昨年7月のピットブル戦は、『こんなに格闘技って楽しかったんだ』って感じました。それまでは楽しむよりも、作戦を考えて勝つことに徹していた。そうじゃなくて、『楽しんだやつが最強』なんです。この試合で僕が一番学んだことですね」

――2023年11月4日、『RIZIN LANDMARK 7 in アゼルバイジャン」でのRIZINフェザー級タイトルマッチ。王者ヴガール・ケラモフ選手から秒殺KO勝ちを収め王座を獲得。目標としていたRIZINフェザー級王者となりました。

「『間違っていなかったな』と思いました。トレーナーも会長もジムも先輩も家族も周りの人たち全員が『鈴木千裕が絶対チャンピオンになる』って信じて応援してくれるわけじゃないですか。誰ひとりとして間違っていなかったと証明できたと思います」

――その試合後、『ファイトマネーの一部をアゼルバイジャンに還元します』とコメントしました。

「ファイトマネーを僕だけのものにしてもいいんですよ。でも、これを誰かのために使うことが大事。それを稼ぐのに、自分ひとりじゃ絶対無理なんです。心を支えてくれたり、面倒を見てくれたりするいろんな人たちがいる。まずは、そういう人たちのために使わないとダメだと思ってます」

――そういう考え方を持つようになったのはいつごろからか認識はありますか?

「キックのチャンピオンになってから、さらに認識しました。ファイトマネーの一部は、子どもたちが格闘家を目指すキッカケ作りに使いたい。子どもたちが『格闘技を通して、こんなことができるんだ』って感じて、数年後に『僕たちも格闘技がやりたい』って思ってくれればいい。そのキッカケを作るためのイベントを開催して、子どもたちが楽しく気軽に格闘技と触れ合えることに使いたいんです」

――そういう考えに至ったのは、どうしてですか?

「格闘技って、あまりいい流れがないじゃないですか。暴力的とか野蛮だとか悪いイメージが先行しているところもあって、格闘技に批判的な人もいるのが現状です。

 そんな中、実際にチャンピオンと触れ合うことで、『格闘家って優しいしカッコイイな』と感じて、将来その子どもたちが意思を継いでくれたらいいなと思います。

 残ったファイトマネーは、両親に何かプレゼントして恩返ししたり、会長や先輩たちに食事をご馳走したり、そういうことに使うほうが意味あるし、今の僕には価値がありますね」

後編>>総合格闘家・鈴木千裕は絶対王者になって新時代をつくる 防衛戦と師匠・五味隆則に恩返しする一戦への思い

■Profile
鈴木千裕(すずき ちひろ)/1999年5月14日生まれ、東京都三鷹市出身。身長173cm体重66Kg。クロスポイント吉祥寺所属。通称、クレイジー・ダイヤモンド、天下無双の稲妻ボーイ。2021年9月総合格闘技再起戦及びにRIZINデビュー戦となったRIZIN.30ではTKO負けを喫したが、2023年11月アゼルバイジャンで開催されたRIZIN LANDMARK 7ヴガール・ケラモフ戦で見事1RKO勝ちを収め、第5代RIZINフェザー級王座を獲得。KNOCKOUT(キックボクシング)とRIZIN(総合格闘技)の両団体の2冠王者となった。

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