総合格闘家・鈴木千裕は絶対王者になって新時代をつくる 防衛戦と師匠・五味隆典に恩返しする一戦への思い

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2024年04月28日 10:50  webスポルティーバ

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「キックとMMAの二刀流を目指す」と宣言、初代KNOCK OUT-BLACKスーパーライト級王座と第5代RIZINフェザー級王座のベルトを持つ二冠王者・鈴木千裕。『日本のRIZIN』を『世界のRIZIN』に変えるために絶対王者になると断言した王者は4月29日、東京・有明アリーナ「RIZIN.46」でRIZINフェザー級タイトルマッチの初防衛戦を控える。

前編>>RIZINフェザー級王者・鈴木千裕は「最短」にこだわる「子どもたちが格闘家を目指すキッカケをつくりたい」

――4.29有明で鈴木選手の持つRIZINフェザー級王座に金原正徳選手が挑戦します。金原選手の印象を教えてください。

鈴木千裕(以下同)「金原選手は自分自身の欠点をわかっていて、そこをキチンと補っている。彼は『俺はもうこれ以上強くなることはない。ただ、弱くなっていくスピードを遅くすることはできる』と言いました。学びきったうえでの発言だと思います。自分自身を理解しているからこそ、『スタミナが落ちたから練習しよう、パワー落ちてくるからパワーの練習しよう』と自分の弱点を補うことに卓越している。だから欠点が少ないんです。金原選手は格闘技の頭脳が優れていますね」

――記者会見で金原選手に対して「引退させないといけない」と発言。この発言について教えてください。

「これは金原選手自身も言っていますが、お互い使命があるんです。後輩の使命は『先輩を引退させること』。先輩の使命は引退させられないように『後輩たちの高い壁であり続けること』です。
 
 ジムでもベテランの先輩がいて、勝ったり負けたりを繰り返しながら、引退したいけど、まだできそう、まだやりたいと思っている人たちがいる。でも格闘家を長期間続けているとパンチドランカーになる危険もあります。格闘家として過ごす時間より、引退した後の人生の方が長い。ですから先輩に引退のきっかけを作り、『俺、もう戦えないんだな。じゃあ次の世界に行こう』という後押しなんですよ。

 今は勝ち続けたレジェンドたちが残っているんです。所英男さん、秋山成勲さん、青木真也さんや金原さんも、共通して全員勝ち続けています。だから、引退させるキッカケを作らなきゃいけないと僕は思っています」

――それはすごく大切な役目でもありますね。

「格闘技の中では、『師を超える』ことはリスペクトであり、恩返しでもあります。自分の先輩やレジェンドを実力で超えることは恩返しなんです」

――記者会見で、金原選手に勝つ3つのポイントは「圧倒的パワー、スタミナ、根性」だとコメントされていました。

「今、僕は年齢的にスタミナが彼よりもあるし、パワーも上です。もちろん他の人よりはテクニックもあります。ただ、僕はまだ若いし経験値が彼に比べて浅いので、テクニックでは分が悪い。それをスタミナとパワーで補うんです」

――4月29日の金原正徳選手とのRIZIN初防衛戦に向けて、鈴木選手は1月末からタイ合宿を敢行しました。強豪揃いと言われるタイガームエタイジムでのトレーニングはいかがでしたか。

「充実した練習環境で、柔道・柔術・レスリング・ボクシング・キックボクシング・ムエタイなどの多くのプロ選手が集まり、全てがひとつの場所で完結する。いろんな相手を自分で選んで練習できるのでよかったですね。

 それと参加者が全員初対面で、相手選手の手の内がわからないから新鮮でした。『この人、打撃がそれほど強くないから、組もう』と思ったら、実はレスリングの国内チャンピオンだったりするんですよ(笑)。打ち合った練習相手がボクシングのロシアチャンピオンだったり、柔道のチャンピオンだったり、予備知識がないまま向かい合うので、面白い。慣れてきたら徐々に相手のキャリアの予測ができるようになって、その判断の練習にもなりましたね」

――鈴木選手は師匠・五味隆典選手とともにKNOCK OUTのリアリティ番組「THE KNOCK OUT FIGHTER」のコーチに選ばれました。そして、2024年6月23日、KNOCK OUTメインカードとして五味選手とボクシング対戦が決まりました。「戦いの中で学びたい。それはレジェンドを超えるために必ず必要だ」と発言しましたね。

「五味さんはキャリア的に、いつ引退してもおかしくない。だから、五味さんと試合できる人はもう限られています。それはたぶん、片手に収まる人数だと思う。次の試合で引退するかもしれないし、数試合後かもしれない。それはわからない。僕の師でもある五味さんに、恩返しをするタイミングが一生ないって考えると、嫌ですよね。だから五味さんが現役で戦える時に戦いたい。

 五味さんは弟子である僕に対してもフルスイングをかましてくるような人。それを公式の場で向き合った時に、『こんなに圧力があるんだな、こんなにパワーがあるんだな』ということを僕は体で学びたいんです。それができるのは日本人でも限られている。だから最後の授業を受けたいです。そして、師匠を越えて恩返しをしなければいけない。五味さんの生きた証を格闘技の歴史として僕が継承します。

 金髪は僕のトレンドマークです。五味さんも金髪だったので、そこは継いでいますし、リングで『天下無双の稲妻ボーイ』も僕が継ぎます。五味さんが格闘技で残してきた歴史は僕が継承していくので、まだまだ消えないですよ。

 僕がこの稲妻ボーイをいつかの誰かに継承した時に、先代の五味さんから僕、僕から誰か、そこからまた次の誰かに、天下無双シリーズが続けば、五味さんの歴史は途絶えることはない。そして、僕の歴史も途絶えることがないんです」

――今後の夢や野望は何ですか? UFCへの挑戦など、海外進出などは視野に入れていますか?

「UFCを狙うとか海外を目指すとか、それは違うと思います。日本のRIZINを世界のRIZINに変えるんですよ。

 今後、僕の考えも変わるかもしれない。でも、現時点では日本のRIZINを世界のRIZINにして、お前らが日本に来いよっていうスタンスでいるべきだと思うんですよ。

 五味さんがPRIDEで10連勝した時、『GOMIを倒せ』と海外から乗り込んできたんですよ。それは五味さんが最強だったから。それって傍から見たら世界対戦じゃないですか。

 PFLやBellator、他団体のチャンピオンに勝って複数のベルトを持った時、『いつでも、誰とでも戦うよ』という絶対的チャンピオンがいれば、おのずと世界と対等の位置につける。要請があればUFCに乗り込んでも構わない。でも所属はRIZIN。『RIZINから戦いにきた』っていう感じですね。それがカッコいい。だから目下の僕の目標はBellatorのベルト獲得です」

――そしたら三冠王ですね。

「3本目のベルトを巻いた時に、三冠王の僕に挑戦したい候補がどんどん手を挙げるわけです。それって世界のトップが集まるってことなのでUFCと同等。だからそれが僕の中のUFCです。そういった新しい流れを作るには時間がかかるし、運命の歯車がかみ合うことも必要なんですけど、誰も挑戦したことのない新時代を作っていくのってワクワクするじゃないですか(笑)」


■Profile
鈴木千裕(すずき ちひろ)/1999年5月14日生まれ、東京都三鷹市出身。身長173cm体重66Kg。クロスポイント吉祥寺所属。通称、クレイジー・ダイヤモンド、天下無双の稲妻ボーイ。2021年9月総合格闘技再起戦及びにRIZINデビュー戦となったRIZIN.30ではTKO負けを喫したが、2023年11月アゼルバイジャンで開催されたRIZIN LANDMARK 7ヴガール・ケラモフ戦で見事1RKO勝ちを収め、第5代RIZINフェザー級王座を獲得。KNOCKOUT(キックボクシング)とRIZIN(総合格闘技)の両団体の2冠王者となった。

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