「退職代行」を使って内定辞退された人事の嘆き「小さな会社だから嫌になったのかな」という声も

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2024年04月28日 16:21  日刊SPA!

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 現在の大学生の就職戦線は売り手市場。リクルートの就職みらい研究所が発表する『就職プロセス調査』によると、この春卒業の大学生の就職内定率は3月の卒業時点で96.8%となっている。
 一方、これに対して24年卒の大学生の内容辞退率は63.6%。2社以上から内定を得た学生が47.5%半数近いことを考えれば当然のことだが、23年8月1日時点で辞退率が62.5%となっており、ほとんどの学生はそれ以前に内定辞退の申し入れを行っていることを意味する。

 しかし、少数ながら年明け以降の入社式が迫った時期で辞退する者もおり、これをやられる企業にとってはたまったものではない。工業用品の卸販売会社に勤める牧野満也さん(仮名・46歳)は、昨年まで採用担当を務めていたが、入社まで残り半月と迫った23年3月中旬、内定を出していた男子大学生が突然就職を辞退してきたという。

◆代行業者経由の内定辞退で本人と連絡を取れず

「内定承諾書にはサインしていましたし、その年の1月に行った内定者懇親会では『春からよろしくお願いします!』と元気に答えていたので完全に予想外の事態でした」

 しかも、内定辞退の連絡をしてきたのは、本人ではなく退職代行サービスを行っている業者。時期が時期なので自分で伝えにくかったのは理解できるが、裏を返せば会社側と直接連絡を取り合う意志がないということだ。

「上司は『こればっかりは仕方ないよ』と言いましたが、本人と話ができれば不安を取り除くことができたかもしれませんし、入社時期を遅らせる措置を取ることもできたと思います。ウチの会社は大企業じゃないので臨機応変に対応することも可能でした。だから、話し合いの余地すら与えられなかったことは悲しかったですし、大事な人材を逃してしまったことに採用担当として責任を感じました」

◆新人が来るのを楽しみにしていたのに…

 代行業者からは「一身上の都合」以上の詳しい理由は教えてもらえず、本人からのお詫びのメッセージなども特になし。牧野さんの会社には約50人の従業員がいるが、その半数は50代以上と高齢化が進んでおり、若い人材の確保が急務となっていた。ゆえにたった1人でも新入社員が減るのは思った以上の打撃だったのだ。

「2名の予定だった新卒採用者が1名になったわけですから。配属先や指導係を誰にするのかもすでに決まっていたのに全部パー。彼が入るはずだった部署の課長は新人が来るのを楽しみしていたため、私以上にショックを受けていました。また、専務も『ウチが小さな会社だから嫌になったのかなぁ』ってボヤくし、去年の春は新年度の始まりなのにあまりいい雰囲気ではありませんでした」

◆たった1人となった新入社員も内定辞退に動揺

 それにもう1人の内定者も入社するのは自分を含めて2人だと思っていたのに入社式当日は自分だけ。その事実を知って少し動揺していたそうだ。

「同期入社が誰もいないため、それに対しては申し訳ない気持ちです。入社後は社内全体でフォローしていますが、先輩社員だと気を遣うでしょうし、やっぱり同期だから話せることもありますから」

 ちなみに牧野さんの会社では、入社直前の内定辞退者は今回が初めて。実は、もともと社員の離職率も低く、新卒採用で入社後すぐに退社というケースもほとんどなかったとか。それだけに彼がどのような理由から入社を拒否したのかは未だに謎のままだ。

◆ギリギリでの内定辞退はやめてほしい

「ウチは40代なら年収700万円を超えますし、地方の中小企業の割には給料は悪くありません。残業だって月に5時間程度。どんなに多くても10時間を超えることはまずない。だから、不安や不満があったのか、好条件の別の会社の内定が取れてそっちを選んだのか、やっぱり担当者だったからいったい何が理由だったのかは知りたいですね。今となってはそれを知る術もありませんが……」

 なお、辞退した学生が通っていた大学には求人票を出していたため、就職課には報告。大学側に非はなかったが、先方の課長もこれには申し訳なさそうにお詫びの言葉を述べていたそうだ。

 一般的に内定承諾書に署名した場合、企業と労働契約を結んだとみなされると言われている。そのため、入社直前での内定辞退者に対しては、企業側が賠償請求を行ったケースもゼロでない。

「ただ、ギリギリでしたが入社式の2週間以上前だったため、会社としては応じるほかなかったんです。きっとその辺のことを調べていたんでしょうね。会社に入る・入らないは個人の自由かもしれませんが、入社式の直前で辞退されるとこっちも余計な仕事が増えて大変なんです」

 本当にやむを得ない場合は仕方ないかもしれないが、会社にも迷惑がかかっていることを知ってほしいものだ。

<TEXT/トシタカマサ>

【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。

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