圧倒的に成長しているグミ市場。逆転された飴やガム、若い世代は本当に関心がないのか?

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2024年04月28日 19:00  クックパッドニュース

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【あの食トレンドを深掘り!Vol.51】90年代に流行した「ティラミス」、数年前に話題になった「おにぎらず」、直近では社会現象にもなった「タピオカ」など、日々生まれている食のトレンド。なぜブームになったのか、その理由を考えたことはありますか? 作家・生活史研究家の阿古真理さんに、その裏側を独自の視点で語っていただきました。

終売が多数!飴とガムの役割がグミに変わっている

2月末にチェルシーの生産が終了し、昨年1月末にはサクマ式ドロップスの佐久間製菓が廃業、昨年3月末には明治がガム事業から撤退した。小腹をちょっと満たす、あるいは口さみしさを抑えるなどの目的で食べる菓子が次々と消えている。もしかすると、菓子の世界で世代交代が起きているのか。

何しろ、どの菓子も手に入らなくなることを残念がるのは主に、昭和育ち。挙げたのはどれも、20世紀誕生のロングセラーである。サクマ式ドロップは、アニメ映画『火垂るの墓』にも登場した歴史があり、発売はなんと、明治時代の1908年で国産初のドロップだった。チューインガムの製造が始まったのはGHQの占領下で、チョコレートと共に兵士が配っていたことを、当時を描くドラマなどで知った人も多いだろう。ガムのシェアNo.1のロッテが、ガムの製造で事業を始めたのは1948年である。チェルシーは、明治が1971年に発売。

そして今、若い世代を中心に圧倒的に人気が高いのはグミだ。スーパーでも、コンビニでも、グミは目立つ一角にズラッと並んでいる。グミを日本で最初に生産したのは明治で、1980年発売のコーラアップで、バラエティが豊かになったのは1990年代以降だ。誕生時期を比べれば、明らかに時代が違う。もしかすると、昭和世代の味覚は古いのか? なくなったどの菓子にも親しんできた昭和世代の私としては、自分が「前世紀の遺物」になるのは捨ておけないので、この現象の背景を改めて分析してみたい。

明治のガム撤退時と、チェルシー終売発表時には、各メディアが時代の変化と報じている。飴は長時間舐めていなければならないので飽きる、とタイパを重視する世代から敬遠される。ガムはマスクをつけていると食べにくく、口臭を気にしなくて済むので、コロナ禍で口にする必要性が減った。挙げられた要因の一つ一つは、「そうかもしれない」と思わせる説得力はあった。

本当に飴とガムは若者にウケていないのか?

しかし、飴やガムは本当に時代遅れなのか。ローソンが2022年にテスト発売した「味のしない?飴」は注目を集めて、2023年に再発売している。甘いものが苦手な人ものどを潤せる、という理由が大きく、SNSでは「虚無感」もウケていた。

また、『オリコンニュース』2022年12月16日配信記事「『パインアメ』、同年創業の『サクマ式ドロップス』と明暗なぜ?飴不況でもシェア広げる大阪の“アメちゃん”秘策」が、パインアメの好調ぶりを報じている。メーカーのパイン株式会社は2010年からツイッター(現X)を開始しており、翌年に神戸屋とコラボした「パインアメパン」を発売し、その後もゼリーや飲料、入浴剤など70点以上ものコラボ商品を出してきたことを報じている。そういえば、昨年の阪神タイガース優勝時も、ビールかけで祝う選手たちの映像に、パインアメの被り物を被った原口文仁選手が写されていた。改めて調べると、岡田彰布監督が声が枯れないように試合中も舐めており、優勝記念商品が出されていた。パイン株式会社は、阪神の地元、大阪の会社である。

実は私、昨年ロッテにガムの取材をしたが、その際、WBCで選手らがガムを噛む、キシリトールガムのボトルを日本チームのベンチに置いているといったシーンが放送され売り上げが伸びたことや、韓流アイドルのBTSをCMやパッケージに起用する、昔人気だったガムを復刻するなどして人気が上昇した話を聞いた。

つまり、ロングセラー商品と言えども、販促に努め注目を集めれば再評価される。あるいは人気を維持しやすいのである。味も大事、見た目も大事。しかし、もしかするとSNSの発信力が強い今は、人気になる最大の要因は、露出の頻度かもしれない。大胆に言ってしまえば、ロングセラー商品が店頭から消えるのは、存在感が薄れるからなのだ。当然といえば当然の結論だが、これだけモノがあふれる時代なのだから、情報発信力と話題性が、売れ続けるうえで何より重要なのである。

実は、私もチェルシーのヨーグルト味がお気に入りで、終売発表後に行った各地のスーパーなどでないのを確認してあきらめていた。何しろ、SNSでも「あちこちのスーパーやコンビニ、菓子屋で探したがない」という投稿が溢れていた。ところがたまたま、3月末に東京駅の駅ビル内ドラッグストアに立ち寄ったところ、当たり前のように売られているのを見つけてしまった。ヨーグルト味10粒入り2箱、ヨーグルトスカッチ味、バタースカッチ味、コーヒースカッチ味も入った3種類入りアソートパック1袋を買って、今も大事に食べている。時代の変化は悲しいが、新しい魅力ある菓子も次々に誕生している。チェルシーにゆっくり別れを告げ、私も次へ向かうとしよう。

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  • 飴は口の中が切れることがあるし、ガムは歯の被せ物が取れまくるからグミのほうがいいな、微量ながらもタンパク質摂れるし。
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