「ROG Phone 8(グローバル版)」を試す “とがったゲーミングスマホ”から“普段使いに適したスマホ”へ変化

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2024年04月29日 10:21  ITmedia Mobile

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原神も快適に遊べるだけの高い性能を備える「ROG Phone 8」

 2024年1月のCESで発表され、デザインやコンセプトが一新された「ROG Phone 8」に注目が集まった。同社では「第3世代」と称するレベルの進化を遂げた。


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 今回は先行販売されている海外版を手にする機会を得たので、レビューしたい。なお、本機種は技適を取得していないため、総務省の特例制度を利用している。特例制度では、技適のない海外の端末に対し、所定の届け出を行うとWi-FiやBluetoothの通信が可能になる。先行して販売された海外版のため、日本向けとは一部仕様が異なっている点は注意してほしい。


●第3世代のゲーミングスマートフォン AI処理のゲーミングアシストにも注目


 ROG Phone 8はゲームパフォーマンス重視のスマートフォンだ。本体のスペックは以下の通りだ。


・プロセッサ……Snapdragon 8 Gen 3


・メモリ……12GB/16GB


・ストレージ……256GB/512GB/1TB


・ディスプレイ……6.78型 振るHD+


・アウトカメラ……標準:5000万画素


・メインカメラ……超広角、1300万画素、望遠:3200万画素


・インカメラ……1600万画素


・バッテリー……5500mAh


・充電方式……65W充電、10Wワイヤレス充電


 画面サイズは6.78型と大型の部類だが、前作に比べるとかなりシェイプされた印象だ。画面はAMOLEDパネルを搭載しており、画面解像度はフルHD+となる。1〜120Hzの可変リフレッシュレート、165Hzのハイフレームレートに対応している。画面輝度も2500ニトと明るい画面となり、屋外での視認性も向上している。


 大きく変わったのは、パンチホールインカメラを備える一般的なスマートフォンと同様の画面になったこと。以前までアピールしていた「映像体験を阻害する要素がない」という意味では見劣りする形となった。


 今回のROG Phoneはカメラを意識したデザインで、大型化したメインカメラの出っ張りが印象的だ。センサーサイズは1/1.56型で「Zenfone」シリーズ同様に6軸のジンバル式の手ブレ補正機構を備える。本体デザインはガラスの背面と金属製のフレームの構成だ。今回選択したグレーでは、背面ガラスとフレームのコントラストが映える特徴的なものだ。


 プロセッサはQualcommの最新Snapdragon 8 Gen 3を採用。同社のAndroid端末向けプロセッサとしては最上位のもので、高い性能を発揮する。もちろん、基本性能だけにとどまらず、ISP性能やAI性能が向上したことで、カメラ性能などの向上にも大きく寄与している。


 メモリについてはLPDDR5X規格、容量は12GB、16GB、24GBとそれぞれグレードごとに設定されている。今回レビューするROG Phone 8では16GBも選択できるが、グローバル向けは12GBのみだ。


 従来同様、プロセッサを端末の中央部に配置して放熱性能を高めており、ベイパーチャンバーをはじめとした本体の冷却機構は従来比で20%の性能向上を果たしたとしている。本体は小さくなっても冷却性能は大幅に向上しているのだ。


 そんなROG Phone 8を実際に使ってみると性能の高さは折り紙付きだ。最新プロセッサと高性能な冷却機構の組み合わせによって、ファンなどなしでも長時間のゲームも問題なく遊ぶことができた。ストレージもUFS4.0規格の高速なものが採用されているため、セーブデータの読み出しも高速だ。


 もちろん、最新ハイエンド機のためブラウジング、SNSや動画視聴といった基本的な動作にストレスは感じない。例えばゲームでも「原神」のような高負荷なコンテンツを1時間ほど続けてプレイしても極端に「熱い」と感じることは少なかった。


 ROG Phoneらしく2つ目のUSB Type-C端子を本体側面に備える。横持ちでも本体側面の端子から充電することで、持ち手付近に突起を作らないようになっている。ここからの外部映像出力、急速充電も可能だ。


 独自の機能として本体側面にROG Phone ではおなじみの「Air Trigger」を備え、ゲームコントローラーでいう「L/Rボタン」の機能を割り当てることができる。今作では各種人気ゲーム用のプリセット配置も用意されており、人気ゲーム「原神」などが対応している。ゲーミングスマホらしく、3.5mmのイヤフォンジャックもしっかり備えている。


 OSについてはAndroid 14ベースの独自UI「ZenUI」を採用する。従来通りAOSPと呼ばれるAndroidの標準UI(ユーザーインタフェース)にASUS独自の便利機能が搭載される形だ。今回はゲーム用のAI機能をいくつか搭載し、ゲームのスクリーンショットから文字や画像認識で攻略情報を検索できる「AI Grabber」や、特定のゲームではAIが特定のプレイなどをアシストする「X Sense」がある。


 日本でも人気の「原神」や「崩壊スターレイル」ではいくつかの機能が利用できる。例えばX Senseではアイテムの自動回収、テキストの高速更新などは地味ながら役立つ便利な機能だ。快適にゲームを遊べるという意味では、性能向上以外の方法でユーザー体験を向上させる思想が感じられる。


●ROG Phoneでもカメラ性能と「使いやすさ」を強化 その背景に「新型Zenfone」の存在


 ASUSのスマートフォンはZenfoneシリーズにて近年「カメラ性能」を強化しているが、その流れがROG Phoneにもやってきた。同社はZenfone 9や10で好評の6軸手ブレ補正をゲーミングブランドのROG Phoneにも投入。静止画撮影はもちろん、動画撮影でも手ブレを抑えて撮影できる。


 メインカメラにはソニー製のIMX890というイメージセンサーを採用。従来モデルから一新され、Zenfoneシリーズ並みにカメラ性能は強化された。また、3200万画素の3倍望遠カメラと超広角カメラも備え、ゲーミングスマートフォンのカメラとは思えない構成へと変化した。


 ROG Phone 8は“ゲーミングスマホ”というカテゴリーではあるものの、かなりきれいに撮影できる。イメージセンサーの一新によるハードウェアの強化で、デジタルズームも比較的きれいに処理を行う。2倍などの画角でも画質が荒れる場面は少ない。


 強力な手ブレ補正を採用したことで、手ブレによるミスショットが少ない点は優位だ。6軸手ブレ補正によってアクションカムのような使い方も可能だが、本体は大型なので難しそうだ。


 3倍望遠カメラについては香港にてグローバル版の実機を試したところ、5倍クラスまでは実用域、10倍でもある程度ディティールを残せていた。この点は望遠カメラを備えない現行のZenfoneに対しても優位性を感じた。


 使いやすく進化したのはカメラだけではない。本体をシェイプしたことによる小型軽量化、IP68等級の防水対応やワイヤレス充電をはじめとした「普段使い」でも利用しやすくなっている。


 本体はROG Phone 7と比較して小型化。高さでは10mmもシェイプされ、厚さは1.4mm薄くなった。重量225gと実に20g近い軽量化を達成した。感覚的にはiPhone 14 Proシリーズから15 Proシリーズへ乗り換えたときの感覚に近く、この部分は数字以上に実感できるはずだ。


 IP68の防水・防塵(じん)性能も備えている。パフォーマンスを持続させる排熱性能と密閉性を求める防水性能は相反するもので、特にハイパフォーマンスを持続させるために、高い冷却、排熱性能が求められるゲーミングスマホでは防水性能の両立が難しいとされている。世界的に見ても珍しい構成だ。


 バッテリーは5500mAhのものを採用。合計では以前より500mAh減ったものの、2750mAhのバッテリーを2つ搭載する仕様とした。これに加えて、最大65Wの急速充電にも対応し、ROG Phoneでは初のワイヤレス充電にも対応する。電池持ちについては従来モデルには劣るものの、Galaxy S24 Ultraなどよりも大容量なこともあって、普段使いでは余裕で1日以上利用することができた。


 これらの“使いやすさ”の背景には、先日発表された「Zenfone 11 Ultra」の存在がある。本体デザインや各種スペックを見ると多くの点で似通っており、プラットフォームの共通化を行ったことがうかがえる。ROG Phone 8はとがりすぎたハードウェアではなく、あくまで「一般的なスマホ」をベースにゲーム向けチューニングを施したスマホなのだ。


●とがったゲーミングスマホから、普通に使えるスマホへ変化 日本での正規展開にも期待


 ROG Phone 8はクセこそあるが、Zenfone並みに強化されたカメラ性能、IP68の防水防塵性能を備えたことで、ゲーミングスマホながら普段使いしやすくなった印象だ。同社が「第3世代」と銘打った背景には、さらなるゲームパフォーマンスはもちろん、AIアシスト機能や、カメラ機能強化や防水などの普段使い要素までしっかり強化してきたことが含まれるのだろう。


 一方で“ゲームに特化”した構成だったからこそ、前作までは他社製品と明確に差別化できていた面もある。特に本体スピーカーは顕著で、一般的なスマートフォンと比較すればROG Phone 8は高音質なものの、ROG Phone 7の左右対称のフロントステレオスピーカーと比較すると明らかに引けを取る。画面のパンチホールインカメラも、前作では「ないこと」で没入感を高められる点を他社への差別化になっていただけに、この方針転換には驚いた。


 これらの部分は妥協したと取れるため、「ゲーミングスマホ」としては魅力が落ちた部分だ。それでも“ゲームに特化したサブスマホ”ではなく、普通に使うスマートフォンとしてROG Phone 8は使いやすく仕上がったと評価したい。


 この変化を鑑みると、ASUSのスマートフォン戦略が少し変化したように思われる。今後はROG Phone は一般的な機種に近づき、Zenfoneはややゲーミング要素の強い機種になると考えられる。


 この方針転換はコンパクトハイエンドをアピールした「Zenfone 10」や「9」の不振が原因と考えられる。日本では大きな支持を集める小型のZenfoneだが、諸外国ではその限りではなく、競合の多さや知名度不足からROG Phoneよりも売れていない地域も存在する。


 この流れが世界的ならば、大画面を求める市場ニーズに応えるため、Zenfone 11 Ultraのような機種を展開するのは至って自然だ。むしろROG Phone 8はZenfone 11 Ultraにゲーミング要素を追加したチューンアップモデルと評価した方が適切なのかもしれない。


 ベースがZenfoneという一般的なスマホなら、各種スペックが類似する点はプラットフォームの共通化と理解できる。同じパーツを使用することでコスト圧縮も可能だ。ROG Phone 8は自動車でいうところの、市販車ベースにサーキットを追い込めるようなオプションを装備した“レーシンググレード”に近い感覚だ。


 さて、気になるのは価格だ。先行販売している香港ではROG Phone 8が8499香港ドル(約16万3000円)、上位モデルのROG Phone 8 Proは9498香港ドル(約18万2300円)、最上位のROG Phone 8 Pro Editionは11498香港ドル(約22万円)だ。いずれも日本でいう税別価格となり、決して安価ではない。オプションの空冷ファン「AeroActive Cooler 8」は799香港ドル(約1万5000円)だが、本体と同時購入すると日本円で約8000円割引されるなどの特典もある。


 一方で、カメラハードウェアを変更してまで安価に提供した中国向けのTencent版は4799RMB(約10万円から)だ。グローバル版と比較するとかなり安価に仕上げたものの、ここまで落とさないと競合の「nubia REDMAGIC 9 Pro」(同4699RMB〜)に負けてしまう厳しい市場だ。カメラのスペックダウンは背に腹は代えられない苦肉の策と評価できる。


 日本での展開はほぼ確実と考えられるが、為替の関係もあってROG Phone 8は高価になりそうだ。上記の価格は税別価格のため、日本で発売される場合はこの価格+消費税が参考価格となる。


 最後になるが、ROG Phone 8は「ゲーム特化」のゲーミングスマートフォンだけでなく、本体の軽量化、カメラ機能の強化、IP68の防水性能、ワイヤレス充電対応などで普段使いでも選びやすい機種に仕上がった。MVNOなどで取り扱われると日本でも大きく注目される1台になりそうだ。


●著者プロフィール


佐藤颯


 生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。


 スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。


・X:https://twitter.com/Hayaponlog


・Webサイト:https://www.hayaponlog.site/


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