サンリオが昭和・平成の百貨店“名物催事”を復活、デジタル世代の子どもにあえてアナログ体験「親子で訪れられる場所と思い出を」

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2024年05月03日 09:10  ORICON NEWS

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このGWに行われている『サンリオキッズフェスティバル』の模様(C)2024 SANRIO CO.
 ある一定より上の世代にとって、百貨店とは親子や3世代で訪れる場所だった。屋上遊園地やおもちゃ売り場、レストラン、催事場イベントなどにワクワクした思い出がある人は多いはずだ。しかし、今や百貨店の数も減る一方で、そもそも子ども連れで気兼ねなく、かつリーズナブルにお出かけできる場所も減っているのが現状だ。そうした中、昭和〜平成にかけて全国の子どもたちを夢中にさせた百貨店のとある“名物催事”が、このゴールデンウィークに復活している。

【貴重画像】「懐かしすぎる!」知ってる? 昭和・平成の『サンリオフェスティバル』

■1970年代〜2000年代、世の子どもたちを夢中にさせた百貨店の名物催事

 昭和から平成にかけて、全国百貨店の催事場で開催されていた『サンリオフェスティバル』 が、このゴールデンウィークに『サンリオキッズフェスティバル』として復活している(京王百貨店新宿店 5/6まで)。同イベントは、ハローキティなどのキャラクターでおなじみのサンリオが、1970年代から行なってきたもの。80年代〜90年代半ばの最盛期には、全国20ヵ所ほどの百貨店でお正月や夏休み、大型連休などに恒例開催されていた“名物催事”だった。

 この復活のニュースを受けて、ネットでは「子どもの頃、地元の百貨店に来てくれた」「おばあちゃんに連れていってもらった」など当時を懐かしむ声も。サンリオ執行役員の広木義直さんは、「覚えてくださっていてうれしいです」と微笑む。

 「私も懐かしいですね。新入社員の頃は、毎年のように現場に駆り出されていました(笑)。今でこそ当社のキャラクターは幅広い世代に親しんでいただいていますが、当時は小さなお子さんが中心でした。『サンリオフェスティバル』はお子さんたちに日頃の感謝を込めて、『商品以外の形でキャラクターと触れ合ってほしい』『親子の思い出を作ってほしい』という思いから始めたものでした」(広木さん/以下同)

 子ども向けイベントといえば、近年はショッピングモール等のイベントスペースで開催されることが多いが、昭和の時代にはそうした“場”がなく、大型イベントも百貨店の催事場で開催されることが多かった。

 「何より、かつては『百貨店にお出かけする』ことがファミリーのレジャーの定番の1つでした。『サンリオフェスティバル』は収益目的のイベントではなかったのですが、百貨店さん側としてはファミリーの集客が見込める催事として重宝されていたんです」

 かつては、子どもたちにとっても特別な場所だった百貨店。しかし2000年代に入ると、郊外型ショッピングモールの進出やECへのシフト、人口減少などを背景に地方の百貨店の廃業が相次ぐ。かたや都市部の百貨店は、富裕層やインバウンド需要がメインターゲットになり、子どもがワクワクする場所ではなくなりつつあった。

 一方で、2000年代はキャラクタービジネスが“子ども向け商売”から幅広い世代へ広がった時代でもあった。中でもサンリオのハローキティやマイメロディは、ティーンから20代女性の間で大ブームを巻き起こす。ところが「実はこの頃、お子さんの“サンリオ離れ”が起きていました」と振り返る。

 「2000年代の子ども向け市場で注目されたのが、ジュニアファッションでした。ポップなキャラクターがあしらわれた洋服が子どもたちに大人気となる一方で、サンリオのキャラクターが“子どもっぽい”と敬遠されるようになったんです」

 近年、大人ターゲットのキャラクターが続々と登場しているのは、こうした背景もあるのかもしれない。もちろん少子化の影響もあるだろう。『サンリオフェスティバル』が2000年代に終了した理由には、こうした百貨店とサンリオの双方が直面した社会的背景があったようだ。

■デジタルとアナログ、子どもたちの記憶に残るのは?「あえて昭和〜平成期の頃から変えない」

 キャラクター消費が子どもから大人へという逆転現象が起きる中、サンリオでは「原点回帰」の意味合いを込めて、『サンリオキッズフェスティバル』 として復活させた。

 「2000年代から、大人世代の方々が当社のキャラクターに親しんでくれた理由。それはきっと、子どもの頃の楽しい思い出がベースにあるからでしょう。次世代ファンを作るためにはモノを売るだけでなく、記憶に残る体験が重要なのだと改めて実感しています。近年は百貨店さんも同様に、モノ消費からコト消費に注目されるようになっています」

 会場は京王百貨店新宿店(東京)の7F大催事場。マスコットすくいやビニール焼き画、マジックねんどチャーム作り、砂絵作りなど、今時珍しいアナログな遊びが多数用意される。

 「コンテンツはあえて、昭和〜平成期の頃から大きく変えていません。アップデートした点としては、コロナ禍明けから間もないこともあり、お子さん同士がなるべく接触しないことなど安全面の配慮をしています」

 現代の子どもたちは生まれた時からスマホやタブレットに親しんでおり、デジタルの体験型アクティビティも世に溢れている。しかし、そうしたデジタル体験がどこまで記憶に残るのかは、今は過渡期ゆえにわからない。一方で、子どもの頃に親子で訪れた百貨店、いつも一緒だったキャラクターのぬいぐるみといった肌感覚、アナログの記憶が大人になっても深く残り、世代を超えて受け継がれていくのは、過去のサンリオの取り組みからも明らかだ。

 「あくまで個人的な感想ですが、流れては消えていくデジタルサイネージ広告よりも、紙のポスターのほうがインパクトが残る印象があります。もちろんサンリオもデジタルには注力していますし、 『サンリオキッズフェスティバル』はYouTubeアニメ『Sanrio characters Super Cute Adventures』の世界観と連動させたものです。デジタル/アナログの両輪に取り組む中でも、特に小さなお子さんには手で触れたり、親子で一緒に何かを作って笑顔が生まれたり、そんな思い出をたくさん残してさしあげたいと考えています。大人にとってはベタすぎるアトラクションばかりですが(笑)、現代のお子さんにとってはむしろ貴重かもしれません」

 参加は、小学生以下と保護者に限定。8月には大阪・高島屋で開催を予定。そのほか、全国の百貨店などへの巡回も考えている。

 「社内では、『1人でも多く集客するには年齢制限はないほうがいいのでは』といった意見もありました。しかし、おかげさまでサンリオのファン層が広がった今、大人のお客さまが集まりすぎてしまったらお子さんに伸び伸びと遊んでいただけない可能性もあります。あくまでお子さんのためのイベントとして、ファンのみなさんにもご理解いただければと思います」

 かつての百貨店のように、親子で気軽に訪れられる場所が減っている。小さい子ども連れの場合は、「周囲に迷惑をかけないように」と親が萎縮することさえある有様だ。「親子の思い出作り」という当たり前の幸せもままならない中、未来への投資とファンへの還元に取り組む百貨店とサンリオに、このゴールデンウィーク、救われる親子は多いのではないだろうか。

(文:児玉澄子)

(C)2024 SANRIO CO.,LTD.  著作(株)サンリオ

このニュースに関するつぶやき

  • 懐かしい。サンリオフェスティバルとか東映まんがまつりなんかは夏休みのおでかけ定番だったよ。いまでもサンリオ好き。最近はクロミのファンになった。
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