レジ打ちの「立ち仕事」はキツい! ドンキが「イス」試験導入で労働環境改善、人手不足の解消も期待

0

2024年05月06日 08:00  弁護士ドットコム

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

弁護士ドットコム

記事画像

スーパーのレジなど、立ち仕事の人が座って働けるようにする取り組みが始まっている。ドン・キホーテは4月、一部の店舗でレジにイスを試験的に導入した。労働環境の改善や、人材の定着も期待できる。これまで立って働くことが当たり前とされてきた日本のレジ風景。大手の取り組みで、座ったり立ったりしながら働く流れが加速するかもしれない。店舗を取材した。(ライター・国分瑠衣子)


【関連記事:セックスレスで風俗へ行った40代男性の後悔…妻からは離婚を宣告され「性欲に勝てなかった」と涙】



●客途切れない免税レジ 「立ちっぱなしはきつい」

平日午前でもインバウンドで混雑するドン・キホーテ浅草店。24時間営業で、客の約7割が外国人観光客だ。4月中旬、店舗2階の免税レジカウンターには、20人ほどの外国人観光客が、コスメや菓子が入ったカゴを手に並んでいた。混雑する時は、階段付近まで行列ができるという。



9台あるレジカウンターでスタッフたちが、手早く免税専用の透明な袋に商品を入れていく。カウンター裏に回ると、背もたれのないコンパクトなイスが置いてあった。従業員はずっと座っているわけではないが、商品を袋詰めしている時などに座ったり、もたれたりしている。店長の花井章郎さんによると、息抜きポイントをおさえているベテランほどイスの活用が上手いそうだ。



浅草店でイスを試験導入したのは4月上旬。以前からレジの床にクッションシートを敷き、足に負担がかからないようにしていたものの、従業員から「立ちっぱなしはきつい」という声が上がっていた。





商品のPOPを作成する石原真紀子さんは、ドン・キホーテで働いて10年ほど。週5回、1時間の休憩を挟んで計8時間働く。坐骨神経痛のため腰に痛みを感じる時があり、同僚にも坐骨神経痛に悩む人がいるという。



石原さんは免税レジが忙しい時に、応援に入る。「イスにゆっくり座る余裕はありませんが、お客さんが途切れた時に少し座ったり寄りかかるだけで、疲れ方が違います」



買い物客にも感想を聞いてみた。中国・大連からの観光客の男性は「大連では急いでいるお客さんが多く、スーパーでイスは見掛けません。でも日本人はゆったりしているので(イスに座って働くことは)日本に合っていると思います」と話す。



イスは当面、免税レジに置き、様子を見て設置場所を増やすことも検討している。浅草店で働くアルバイトは180人ほど。花井さんは「インバウンドの回復で人手不足が続いています。働く環境の改善で人材の定着につなげたい」と話している。



ドン・キホーテは、浅草店のほかに神奈川と中京圏の計11店舗でイスを試験導入している。





●ドラッグストアやシューズショップなど6社導入

イスに座って働くことを広げようという今回の取り組みは、就職情報サイトのマイナビが企画した。ドンキホーテの他にもドラッグストアやシューズショップなど計6社にイスを提供している。



マイナビの担当者は、企画の狙いをこう話す。



「日本では、レジ業務は立つことが当たり前の価値観としてありますが、海外には座って仕事をする国もあります。『座って働いても問題ない』という考えが広がれば、少しでも働きやすい世の中になるのではと考えています」



今後は試験導入した店舗の意見を踏まえ、座って働くことを広げる計画だ。







●「常時座れるようにしている」は2割 

座って働くことを求める動きは他でもある。首都圏学生ユニオンは、アルバイトの大学生が中心になり、レジにイスの設置を求めてベイシアと交渉中だ。2023年12月には東京・新宿で「座ってちゃダメですか」というイベントを開き、立ったり座ったりを選択できる労働環境の改善を訴えた。



マイナビが3月、立ち仕事のパートやアルバイトがいる雇用主300人に行った調査では「パートやアルバイトが接客中にイスに座ってよいと思う」と回答した人は7割を超えた。それにもかかわらず「常時座れるようにしている」と答えた雇用主は2割にとどまる。



雇用主がイスを設置しない理由で最も多かったのが「お客さんからの印象の悪化を防ぐため」だった。現状では免税レジだけのイス設置ではあるものの、前述のドン・キホーテ浅草店では客から何か言われたことはないという。「レジ業務は立ち仕事」という固定観念を取り払い、少し座りたい時のために職場にイスを置くことは、それほど難しいことではないのではないだろうか。


    前日のランキングへ

    ニュース設定