東芝・AUREX『AX-W10C(Walky)』は、マニアにも懐かし勢にもおすすめできる、現代のカセットテーププレーヤー

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2024年05月15日 11:01  マイナビニュース

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20世紀後半以降、一般リスナーが日常で音楽を聴くための手段が、テクノロジーの進化に伴い目まぐるしく変化したのはご存知の通り。

そして時代とともに移り変わった音楽再生手段の中で、“カセットテープ”という愛すべきメディアともっとも親密だったのは、1980年代にティーンエイジャーだった僕らくらいの世代ではないだろうか。


その頃、レンタルレコードショップと携帯型カセットプレーヤーが全盛期を迎えていたからだ。

○■カセットテープへのダビングが、音楽に親しむ最適の方法だった時代



1969年生まれの僕は、中学〜高校生だった1980年代の半ば、当時流行のパンク&ニューウェーブにどっぷりハマり、大の音楽好きになっていた。だが、まともに買ったらレコード2枚だけで吹っ飛ぶくらいしか月の小遣いをもらっていなかったので、聴きたい音楽の入手方法はもっぱらレンタルレコードだった。



レンタルレコードショップには置かれないようなマイナーなインディーズバンドのレコードは、たまになけなしの小遣いをはたいて自分で購入もしたが、同好の仲間内で貸し借りすることの方が多かった。


大学生の兄のレコードを拝借したり、友達の兄や姉からまた借りすることもしばしば。

そうやって“借りる”ことを中心とした音楽リスニング活動で何より重要なのは、レコードを返す前に、せっせとカセットテープへダビングすることだった。

1980年代に若者だった人は皆、多かれ少なかれ同じような経験をしていることだろう。



カセットテープの各メーカーはその頃、売り上げをぐんぐんと伸ばし、1989年には国内で年間約5億本以上の需要があったという。

当時の僕の部屋のコンポ周りにも、ダビングしたカセットテープの山ができていた。



しかしそんな僕も大学生になってバイト代で懐がいくらか温まると、好きなバンドの音源はレコードやCDで購入するようになり、ダビングのカセットがそれ以上増えることはなかった。

○■カセットテープとは完全にお別れしたと思っていたのだが



僕は一旦手に入れたらどんなモノでもなかなか手放さず、ひたすら我が手元に留めおく悪癖を持っている。

だから、中学〜高校生時代に集めた数百本のカセットテープも、割と最近までそのほとんどを保持し続けていた。

すでに追っかけで買い求めたCDやレコードがあり、そのタイトルをカセットで聴くことはなくなっても、捨てるのが惜しくてずっと手元に置いていたのだ。



でも10年ちょっと前だったろうか。

アップルミュージックをはじめとするストリーミングが音楽を聴く手段の主流となり、サブスク全盛時代になったのを機に、さすがにアホらしくなって、ほとんどのカセットテープを壊れかけのプレイヤーとともに、燃えないゴミとして出してしまった。



中高生時代の自分の筆跡が残るインデックスカードを見ながら、思い入れのあるカセットをゴミ袋に詰め込む作業をしている間は、それなりに切ないものがあった。



だけど出会いと別れがあってこその人生。

なんて大袈裟な話ではないのかもしれないが、レコードかCDで持っているんだし、持っていなくてもアップルミュージックかスポティファイですぐに呼び出せるのだから、このコレクションはさすがに無意味であり、限りある家のスペースの無駄使いだとも思ったのだ。



これでついに、僕の“カセットテープ時代”も完全に終了。

のはずだった…。



しかし、それからまたしばらくの年月が経過した今、僕がとても気に入って愛用しているのが、東芝(正確には東芝グループの一角の東芝エルイートレーディング)のAUREXというブランドのカセットテーププレイヤー、『AX-W10C(Walky)』なのである。

かつての大断捨離劇場を生き残り、手元に残った50本余りのカセットテープを、今再び端から聴きまくっているのだから、なんという無駄の多い、堂々巡りの人生だとあきれられてもしょうがない。


○■世界的に高まるカセットテープ人気に伴ってリリースされた新製品



『AX-W10C(Walky)』は古い機種ではなく、2023年7月に発売された現代のカセットテーププレーヤー(外部入力による録音機能付き)だ。

プラスチッキーな筐体や、物理ボタンをガシャンと押し込む機構、オートリバースも頭出しもないシンプルな機能性などは、1980年代にカセットテープとその再生装置の劇的な進化を見届けた世代からすると、ちょっとモヤつくものがある。



高級感とはほど遠く、昔ディカウントショップで売られていた名もなきメーカーの安物プレーヤーのようにも見える。


でも、Bluetooth送信対応のワイヤレス機能がついていたり、バーチャルサラウンド機能がついていたりするところはさすがの現代製品で、再生される音質も十分に納得できるものだ。


何よりも、カセットテープとプレーヤーを組み合わせてガチャガチャといじる感触そのものが、懐かしいったらありゃしない。

また、かつてレコードからダビングしたテープは、針を落とす音やパチパチというレコードの傷の音まで入っていて趣深い。



こんなものを買って、今さらカセットテープで遊ぶなんて、なんて時代錯誤的なアナクロ人間なのだと思われるかもしれない。

でも意外なことに、世の中ではここのところカセットテープの愛用者が急増しているという。



アナログレコードに続き、世界の各地でカセットテープの復権が著しく、イギリスでは2012年にわずか3823本まで落ちたカセット販売数が、2022年には19万5000本余りまで増加したという報道もある。

海外でも日本でも、有名アーティストが新譜をカセットでもリリースする動きが相次ぎ、リアルタイムでは知るよしもないZ世代の若者を中心に、カセットテープが注目されているのである。



この東芝AUREX『AX-W10C(Walky)』も、そうした世界的な動きに呼応してリリースされた商品であることは間違いないのだが、リアルタイムなカセットガチ勢である僕のようなおっさんもこうして楽しめるのだから、実に素晴らしい。



今さらながら、カセットテープを大量に処分してしまったあのときのことが悔やまれる。

やっぱり、モノは捨ててはいかん。

まあ、そんなことばかり言ってるから、いつまでたっても家が片付かないのだけど。



蛇足だが、カセットテープの形をしたBluetoothモバイルスピーカーなるものを見つけ、そちらも最近購入した。


カセットテーププレーヤー東芝AUREX『AX-W10C(Walky)』で昔のカセットテープを回し、Bluetoothでカセットテープ型モバイルスピーカーに飛ばして再生するという、なんともトリッキーなことをして一人ほくそ笑んでいるのだが、もう放っておいてください。


文・写真/佐藤誠二朗



佐藤誠二朗 さとうせいじろう 編集者/ライター、コラムニスト。1969年東京生まれ。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わり、2000〜2009年は「smart」編集長。カルチャー、ファッションを中心にしながら、アウトドア、デュアルライフ、時事、エンタメ、旅行、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動中。著書『ストリート・トラッド〜メンズファッションは温故知新』(集英社 2018)、『日本懐かしスニーカー大全』(辰巳出版 2020)、『オフィシャル・サブカルオヤジ・ハンドブック』(集英社 2021)。ほか編著書多数。新刊『山の家のスローバラード 東京⇆山中湖 行ったり来たりのデュアルライフ』発売。
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このニュースに関するつぶやき

  • 往年のWM-DD9みたいなドルビーC/メタル対応のプレーヤーが出れば買っちゃうだろうな‥‥ドルビーNRのICってもう作ってないんだっけ。
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