「全員!出禁です!!」閉店の日、町のゲーセンで配られたのは「出禁カード」!? 全国で相次ぐ廃業、店主が込めた愛

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2024年05月15日 19:10  まいどなニュース

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レーシングゲーム ※笠井さん提供(一部加工)

「全員!出禁です!!」

【写真】「過剰なまでに貢献」「再三の注意にも」…文面にも店主の愛が詰まった「出禁カード」

神奈川県横須賀市にて、1995年より営業を続けてきたゲームパラダイスゼロワン(@gameparadise01)。地元に根付くゲームセンターとして長年愛されながらも、2024年の2月に惜しまれつつも閉店となりました。

営業最終日となった2月29日には、多くの人たちが同店の有終の美を見届けようと来店。しかし、そんなお客たちに対し、店側が配布したのは、なんと“出禁カード”でした――。

「お客様は過剰なまでに貢献しており、スタッフの再三の注意にも関わらず遊技を止めなかったため、2024年2月29日をもって出禁とする。2024年3月1日よりいかなる理由問わず、ゼロワン店内に立ち入ることを禁止する」 

ゲーセン愛を忘れないで…店長からのメッセージ

「来店していただけたお客様が、ゲームパラダイスゼロワンの記憶と“ゲームセンター愛”を忘れずに、今後もゲームセンターで遊技してほしい」

出禁カードを配った理由について、同店の元店長・笠井さんはこのように語ります。ちなみに、案は「お客様との会話のなかで生まれたもの」だったとのこと。

カードをもらった人たちは、「初出禁くらった!」と笑ったり、泣いたりしながら「また同じようなゲームセンターのオープンを待っています」と言ったり、「今までお世話になりました!」とお礼の言葉を述べたりなど、反応はさまざまだったそうです。

笠井さんによると、総合複合ビル建設のために同店が入居するビルを含めた駅前一区画が再開発となったことが、閉店の理由だとのこと。

やむなく閉店となってしまったゲームパラダイスゼロワンではありますが、悲しい気持ちではなく、楽しい気持ちで終わって欲しい――出禁カードには、そんな店側のお客に対する心遣いが感じられます。

投稿されたX(旧Twitter)の公式アカウントにも、たくさんのコメントが寄せられました。

「涙と友情の…最高の出禁…」
「ゲーセンがなくなるのは本当に悲しい」
「学生時代に遊びにいってました」
「長い間横須賀を盛り上げてくれてありがとうございました」
「もし新規オープンしたら『あなた出禁カード渡しましたよね出禁です』ってネタをやってもらいたい」
「またお会いする日まで!!」

どんどん姿を消す街のゲーセン…古き良き文化を残したい

残念ながら閉店となってしまったゲームパラダイスゼロワンですが、ゲームセンターの閉店は同店に限った話ではありません。

2024年4月に発表された帝国データバンクの調査結果によると、ゲームセンターの店舗数はここ10年間で8000店近くも減少。特に、かつて若者の憩いの場として愛されてきた老舗の街のゲーセンは倒産・廃業が進み、徐々にその姿を消しているといいます。

このようなゲーセンの減少の背景には、消費税増税や硬貨の両替手数料、電気料金の引き上げなどの要因が関わっているとのこと。また近年ではクレーンゲームが主流となり、従来のアーケード機を主体にした店舗の集客が難しくなったという側面もあるといいます。

運営にかかるコスト・支出の増加、時代や流行の変遷といった要因で、苦境に立たされているゲーセン業界。

しかし、そんななか、笠井さんはこれからのゲームセンター業界に対して、古き良き文化を失わないで欲しいと願います。

「プライズゲーム(クレーンゲームなど景品の獲得を目的としたゲームのこと)のみに頼らずに、アーケード・ビデオゲームに関しても見捨てずに残して欲しい」(笠井さん)

笠井さんが店長を務めていたゲームパラダイスゼロワンでは、音ゲーや対戦格闘ゲーム、パズルゲーム、麻雀ゲームなど、幅広いジャンルのアーケード・ビデオ系のゲームを取り揃えていたといいます。

そのような環境で、最初は知らない人同士で遊技していても、店舗側が積極的に関わることで、お客同士もコミュニケーションを図れるようになる。店舗側と客全員が一つのコミュニティを作れるような空間を目指し、運営を続けてきたといいます。

ゲーム単体にも、多くの人たちが集って仲間になる――ゲームセンターがそんな空間であって欲しいと、笠井さんは願っています。

再開に向けて

地域の再開発により、閉店となってしまったゲームパラダイスゼロワン。

しかし、笠井さんは店の再開について、「難しいとは思う」としながらも、「可能性はゼロではない」とも語ります。

「再開となれば、許可の取れる場所が横須賀では厳しいので近隣で開業となりそうです。資金に関してはクラウンドファンディング等の可能性にかけてみても良いかもしれません」(笠井さん)

大きな課題はあるものの、望みを捨ててはいない笠井さん。

「“出禁カード”ではなく、今度は“入場カード”を手に入れて欲しい」と、常連だった皆さんに向けてメッセージを送ります。

「ゲームセンターという一つの空間で心に残る毎日を」

そんなゲーセンに対する強い情熱を胸に、笠井さんの活動はこれからも続きます。

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・竹中 友一(RinToris))

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