母子家庭の平均年収272万円…シングルマザーのお金問題「働き詰めで子どもが荒れてしまった」

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2024年05月16日 22:10  All About

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ひとり親となった理由の7割以上が「離婚」である。そして、特に女性のひとり親にのしかかるのがお金の問題だ。1日中働き詰めでケアが足りずに子どもたちが心身のバランスを崩すことも珍しいことではない。
こども家庭庁による「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」によれば、母子世帯数は 119.5 万、父子世帯数は14.9万にのぼるという。ひとり親になった理由は、母子世帯の約80%、父子世帯も約70%が離婚である。

ひとり親になった母や父は、その後、どうやって子どもたちと生きてきたのだろうか。

結婚5年でDV夫から逃げた二児の母

女性は協議離婚の際、養育費の取り決めなどをしない人も少なくない。DVやモラハラなどで「とにかく離婚したい」「夫と関わりたくない」ため、離婚を優先させて取り決めできなかったという理由が大半だ。

「うちもそうでした。4歳と2歳の子を連れて夫のDVから逃げて2年、知人が間に入ってくれてようやく離婚できた。養育費も一応、決めたんですが、振り込まれたのは最初の3カ月だけ。知人は元夫側の人間でしたし、とにかく関わりたくない一心でした」

スミコさん(48歳)は、離婚した13年前を振り返る。結婚生活はわずか5年だった。独身時代はときに強引にぐいぐい引っ張っていってくれる彼が魅力的だったが、結婚後、それはモラハラに変わった。

「自己中な人でした。子どもができれば変わるかと思ったけど変わらなかった。子どもがうるさいから家で寝られないと言って、平日は帰ってこないこともしょっちゅう。それなのに帰ってくればセックスを求めてくる。上の子が寝室の前で泣いている、下の子は隣のベビーベッドで泣いている。

それなのに無理矢理され続けたことがあります。突き飛ばしたら殴られて……。それが家を出たきっかけです」

離婚後、実家から母が手伝いに来てくれた。彼女は母の助けを借り、ひたすら働いた。朝から晩までパートを3つも掛け持ちしていたこともある。ずっと母にいてほしかったが、父が病に倒れたこともあり、上の子が小学校に入るころに母は実家に戻っていった。

「その後は完璧にひとりでした。夜の仕事をしていたこともあります。そこはシングルマザーのためにいろいろ気を遣ってくれたのでありがたかったけど、朝から深夜まで働き過ぎて倒れてしまって」

必死で働く日々、思春期になると子どもは荒れた

子どもたちが中学生になるころ、店のお客さんが自分の会社に雇ってくれて、ようやく生活が少し落ち着いた。それでも経済的には苦しかったので週に3回は近所のスナックで働いていた。

「子どもたちとのコミュニケーションはとっているつもりでした。だけど彼らにとってはやはりいい母親ではなかったんでしょう。子どもたちが荒れるようになっていった」

長男は中学時代、他校の生徒とケンカを繰り返していた。現在、高校生になり、大学を受けたいと言い出してから変わった。「あのころはお母さんがいなくて寂しかった」と先日、本音を打ち明けてくれたという。

一方、長女は小学生のころから掃除や洗濯などを一生懸命やってくれていたのだが、疲れてしまったのだろうか、現在は中学校に通っていない。

「私が子どもたちの人生を変えてしまったんですよね。そう思うと離婚などしなければよかったのか、私が我慢すればよかったのかと考えることもあります。でもあの状態だったら、私だけでなく子どもたちだって心身の危険があった。

息子はトンネルを抜けて光が見えてきたけど、娘は今、苦悩と闘っている。今は私が娘に寄り添わなければと思っています」

お金の苦労をさせたくなかった

ひとり親の平均年収は、母が272万、父が518万円だという。この格差が母子世帯の生活をより苦しいものにしている。

「私は子どもたちにお金がないからやりたいことができないと思わせたくなかった。だけど私が稼ぐためには朝から晩まで働くしかない。その結果、子どもたちのメンタルまでケアできなかった。コミュニケーションをとっていると思っていたのは、私のひとりよがりだったんでしょう」

もちろん、夫婦がそろった家庭でも親子がうまくいかないことはよくある。ひとり親だから子どもたちへのケアが足りないと自分を責める必要はないはずなのだが、「それはわかっていているけど」とスミコさんの表情が曇る。

「中学に通えなくなった娘には、息子がときどき言葉をかけてくれています。息子とは少し話していますが、学校に行かない理由は言わない。私とは話そうとしないので、娘はもちろん私に不満があるんでしょう。一生懸命やってもうまくいくとは限らない。私の選択が子どもたちに悪影響を与えているとしたら、耐えられないものがあります」

不登校になった娘に「恨まれているだろう」

世の中のシングルマザーの多くが、スミコさんと同じような気持ちを抱えながら生きている。子どもたちを育てるために頑張っているのだ。過去にとらわれるより、先を見すえなければと彼女もわかってはいる。

「今後は勉強して仕事のスキルアップを図って少しでも収入を増やしたいですね。今までは無我夢中だったけど、ここらへんで人生を見直してみたい。どういう状況であっても人生、思い通りにならないのはわかっていますが、娘には恨まれているんだろうなと思う」

それでもいつかきっと「頑張ったお母さん」のことは理解してくれるよと息子は励ましてくれる。

離婚した夫は家族には執着がなかったようで、子どもたちに会いたいと1度でも連絡してきたことはない。スミコさんの苦労はまだまだ続いていくのだろう。

※参考:「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」(こども家庭庁)

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(フリーライター))

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  • 養育費を貰えるように第3者に仲介してもらわないと!
    • イイネ!18
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