「Xperia 1 VI」が大きな変貌を遂げたワケ 実機に触れて感じた「進化」と「足りないところ」

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2024年05月18日 11:01  ITmedia Mobile

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「Xperia 1 VI」の実機

 ソニーは5月17日、スマートフォンのハイエンドモデル「Xperia 1 VI(マーク6)」と、ミッドレンジモデル「Xperia 10 VI(マーク6)」の実機を報道関係者に披露した。カメラ、ディスプレイ、オーディオのデモンストレーションを行った。同日夜には一部の一般客を招き「Xperia SPECIAL EVENT 2024」を開催した。


【その他の画像】


 ここではXperia 1 VIの実機画像と特徴を交えて、先代の「Xperia 1 V」から大きく変わったアウトカメラ、ディスプレイのアスペクト比などを中心にお伝えする。


●光学7倍ズームの鮮明さはいかほどか 人を追い続けることも可能に


 まずはカメラから。超広角(16mm/1200万画素/F2.2)、広角(24mm/4800万画素/F1.9)、光学ズーム対応の望遠(85-170mm/1200万画素/F2.3-3.5)で構成されるアウトカメラは、スペックよりも体験にフォーカスし、Xperia 1 Vまでの課題を克服している。


 その1つが望遠だ。Xperia 1 Vは可変式の望遠レンズを搭載し、3.5〜5.2倍の光学ズームが可能だったが、Xperia 1 VIでは光学7倍と先代よりも光学域が広くなっている。倍率でいえばXperia 1 Vの最大5.2倍から最大7.1倍へと伸びている。


 広角カメラのイメージセンサーはXperia 1 Vと同じ2層トランジスタ画素積層型CMOSイメージセンサー「Exmor T for mobile」。光を多く取り込めることに加え、暗所でのノイズを低減できる。超広角と望遠の2つのカメラには小型かつ高感度の「Exmor RS for mobile sensor」を引き続き採用している。


 体験会ではXperia 1 Vとの比較はできなかったものの、Xperia 1 VIのアウトカメラで人物を撮影すると、超広角と広角の2つのカメラでは明るく撮れるが、望遠カメラでは暗くなってしまった。


 一方で、望遠力を生かした「テレマクロ撮影」が可能なため、光学ズームのため画質の劣化を気にせずに、遠くの被写体でも大きく拡大して高精細に写し出すことが可能だ。最大倍率は約2倍となる。また、ズームレンズの構造を活用して接写するテレマクロ撮影では、花芯の状態などでも繊細さを表現し、鮮明な描写と大きなぼけ感のある撮影が可能だという。


 ソニーはこれまでもカメラ機能にAIを取り入れてきた。例えば、Xperiaや一眼カメラには人間や動物の顔だけでなく、瞳にまでフォーカスできる技術を他社に先駆けて導入した。Xperia 1 VIは瞳AFをはじめとするソニーのトラッキング性能に加え、ソニーがデジタル一眼カメラαシリーズで培った「姿勢推定技術」を初搭載した。


 複数人がいるようなシーンでは、1人だけを追尾できるようになっている。1度狙った被写体を骨格レベルで認識、追尾し続けるため、遮る物や人が多いシーンでも逃さずに補足できる。ただし、実際に体験した限りでは、フォーカスが外れることもあり、ほんの一瞬だけ人が交差した場合であれば、1人を追尾し続けるようだ。このあたりは体験会以外のシーンでも検証してみたい。


 なお、姿勢推定技術は静止画撮影時かつ人物のみに有効で、動画撮影時、犬や猫などのペットには効かない。


●アスペクト比は19.5:9に クリエイターの声を聞いて決めた仕様


 ディスプレイはXperia 1 Vから大きく変わった。アスペクト比が19.5:9で、解像度がフルHD+となっている。パネルは有機ELだが、1シリーズ特有だった21:9かつ4K解像度ではなくなったため、クリエイターで意見が分かれるだろう。


 ソニーはこれまで1シリーズの初代から5世代目のXperia 1 Vまで一貫して21:9を貫いてきたが、なぜXperia 1 VIでアスペクト比を19.5:9に変更したのだろうか? モバイル事業部長の大島正昭氏によると、19.5:9のアスペクト比は「クリエイターの声を聞いて決めた仕様」で、「ユーザーの要望に応えた」ことを強調した。


 クリエイターを重視してきたソニーならではの決断といえるし、撮影専用機材やスマートフォンで制作されるSNSの比率は16:9だけでなく、1:1と正方形もあり、21:9のアスペクト比を持つXperia 1シリーズのディスプレイを十分に生かしきれていなかった。制作ツールとしても視聴デバイスとしても、市場のコンテンツや需要に対応するための変化が求められているようだ。


 解像度については4KからフルHD+になったことで、ディスプレイによる消費電力量を抑えられ、電池持ちの向上に寄与する。体験会ではXperia 1 VIとXperia 1 Vを並べて、同じ動画を再生し続けた場合、電池持ちにどの程度の差が出るのかを示すデモが行われた。連続再生時間の差としては10数時間以上だという。


 プロダクトデザイナー 八木隆典氏は「ユーザーの体験をより良いものにしていくため」の決断だと前置きした上で、特に注力したところとして、電池持ちを挙げる。Xperia 1シリーズのユーザーの中には、「かなりハードな使い方をする人もいる」とのことで、そうした人でも“電池長持ち”を実感してもらえるようにしたかったようだ。


 画質にこだわりを持つソニーとして、Xperiaに磨きをかけていることがある。それは映像美だ。ソニーが「Powered by BRAVIA」と銘打つこの技術は、テレビ「BRAVIA」の画質をXperia 1 VIで再現し、スマートフォンのディスプレイ体験を向上させる。10億色相当の色データをもとに、AI画質調整技術を活用して、高精度にBRAVIAの色彩、質感、立体感を再現している。


 再現までの工程はこうだ。まずBRAVIAとXperiaそれぞれの画面色を測定し、そのカラーデータを比較。10億色のカラーテーブルを用いながら画質エンジニアが味付けする。生成したパラメータをXperiaに持たせることで、精緻にBRAVIAの色彩、質感、立体感を再現できる他、静止画と動画でパラメータを分け、コンテンツによって最適な画質を実現する。さらに、工場で出荷前に1台ずつホワイトポイントを調整しており、個体差が出ないようにしているという。


 Xperia 1 VIでは画質設定も行える。コンテンツのクリエイターが意図した色調を忠実に再現する「クリエイターモード」、オリジナルの色域を拡張した色で表示する「スタンダードモード」、HDRコンテンツ本来の映像信号や品質を担保する「リアルタイムHDRドライブ」の3つが用意されており、Powered by BRAVIAの技術はスタンダードモードで利用でき、「TVer(ティーバー)」での配信コンテンツを視聴する際に効果があるとしている。


 また、Xperia 1 Vにはなかった「サンライトビジョン」という新機能が追加された。画面の区画ごとの階調を調整することで、自然なコントラストとなる。輝度がXperia 1 V比で約1.5倍明るくなり、サンライトビジョンの効果もあり、直射日光下での視認性が上がっているという。


●音質もUIもブラッシュアップしたXperia 1 VIのオーディオ


 オーディオもソニーが得意とする分野で、こだわり続けるポイントでもある。Xperia 1 VIでもステレオ感のあるサウンドとなるよう、LとRのどちらもユーザーに向く、フルステージステレオスピーカーを採用している。


 フルステージステレオスピーカーに関するXperia 1 Vからの進化点は、新しいスピーカーユニットを搭載したことで、低音域が聞き取りやすくなったことに加え、大きな振動に伴う音のひずみを低減し、よりクリアに聞こえるようになったことだ。数分ではあるが、実際にXperia 1 VIとXperia 1 Vのスピーカーから出る音を聞き比べると、1 Vよりも1 VIの方が低音域が増した他、音場が広く、よりクリアに聞こえる。


 合わせて、有線ヘッドフォン/イヤフォンでの音質向上も図られている。仕組みとしては「Audio IC」から出た信号がオーディオジャックを経由し、有線ヘッドフォン/イヤフォンへ伝わるが、基板回路設計を改善したことで、信号が送られる課程で起こる、左右の音声信号の干渉を低減した他、イヤフォンで聴いたときに分かる空間や低音域の再現性が向上したという。


 映像も音も満足できるように設計されているのがXperiaだが、3.5mmイヤフォンジャックをいまだに搭載し続けているのもXperiaの良さだ。同時期に発表されたハイエンドスマートフォンを見ると、「Galaxy S24」「Galaxy S24 Ultra」「AQUOS R9」「Xiaomi 14 Ultra」などはイヤフォンジャックを搭載していない。


 音楽/動画再生時の音質の設定項目も見やすくなった。音をイメージできるイラストに加え、1つのアクションで音楽と動画、それぞれに適した「音質重視」「立体音響」などのエフェクトをかけられるようになった。


 Wi-FiやBluetoothの切り替えが可能なクイック設定パネルの下に位置するダッシュボードでは、適用しているサウンドエフェクトを確認、変更できるようになり、サウンドエフェクトを切り替える度に設定アプリを開かずに済む。


●Xperia 1 VIに触れて感じた、Xperiaに足りないもの


 Xperia 1 VIは「トータル性能が上がっており、(カメラ、ディスプレイ、オーディオを含む)全体のパッケージとして、お客さまにより良い体験価値を届けたい」(プロダクトデザイナー 八木氏)という思いで、設計されているようだ。


 一方、Xperia 1 VIに触れて感じたのは、コンテンツの少なさだ。全面いっぱいに表示できる、いわゆるフル画面表示はYouTubeで確認できたが、拡大により四隅は見切れてしまう。多くのコンテンツは4:3や16:9なので、21:9から変わったとはいえ余白(黒色の帯)が出てしまう。実現は難しいだろうが、19.5:9のアスペクト比をフルに生かせるコンテンツが欲しいところだ。


 Xperia 1 VIのディスプレイやオーディオの技術を生かせるコンテンツが増えなければ、宝の持ち腐れになるはずだ。例えば、ソニー・ピクチャーズが制作した映画やテレビ番組、あるいは新たなサブスクリプションサービスと、Xperiaのセット売りがあると、分かりやすいと感じた。


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