新NISAスタート直後に なぜ、三井住友カードはクレカ積み立てのポイント還元率を変えたのか

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2024年05月21日 12:41  ITmedia NEWS

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 2024年3月、クレジットカードを使った投資信託積立の規制が緩和され、月額上限額がこれまでの5万円から10万円に増加した。投資促進策としては効果の大きい取り組みだが、これによって対応を迫られることになったのが、証券会社とクレジットカード会社だ。クレジットカード積立はカード会社がポイントを還元しているが、積立上限額が倍増したことで、そのままでは還元額も2倍になるからだ。


【画像を見る】10月から変わるクレカ積立のポイント還元率まとめ


 5万円を超えてもそのまま同率でポイントを還元するところ、5万円を超えると徐々に還元率を落とすところなど、各社各様の変更を行ったが、大きく還元の制度を変更したのが三井住友カードとSBI証券だ。


 特に上位クラスの「プラチナプリファード」カードでは、これまで積立額の5%を還元していたところ、秋からは通常で1%、最大で3%に還元率を変更することを発表した。これを受けて、ネットでは「改悪」などの言葉も飛び交った。


 三井住友カードの狙いは何か。投信積立の還元制度に携わる三井住友カードの小林奈美江氏、西澤徹哉氏に聞いた。


●なぜポイントの還元率に変更したのか


――三井住友カードはSBI証券との提携によるクレジットカード積立サービス(クレカ積立)について、ポイント還元率の大幅な変更を発表しました。その背景を教えてください


 もともと、SBI証券様との間では、クレジットカードを使った新しい投資サービスを始めるというコンセプトで始めました。普段から積極的に投資をしている方というよりは、初心者の方やこれから投資を始めようという若い世代の方に、カードで投資をするとポイントがたまることをきっかけに、まず試しにクレカ積立を使っていただこうというのが出発点でした。


 おかげさまで、使っていただける方もどんどん増えてきて、金額も非常に増えてきていますが、今回の変更は、提供しているサービスの質を一段引き上げたいという思いが一番大きいです。


 今までは単にクレジットカード積立でポイントがたまるというサービスでしたが、今後はキャッシュレス全般を推し進めていく中で、キャッシュレスの利用とクレカ積立を組み合わせて、よりお客さまにお得で便利なサービスを提供できるよう、サービス設計を変えていきたいと考えています。


 そのため今回、積立金額に対してポイント付与するだけでなく、カードの利用金額との組み合わせに組み替えさせていただきました。


――今回の変更では、カード等級によって積立のポイント付与の条件が異なっています。これは何を目的としたものでしょうか?


 カードの券種ごとにカード利用金額によるバーを設け、利用額がそれを超えると還元率を上乗せしています。例えば一般カードなら、利用金額が10万円以上で0.5%のポイント付与。ゴールドカードなら10万円と100万円の2段階の基準があります。プラチナプリファードだと、さらに300万円、500万円の基準が加わります。


 属性が異なるお客さまに対して、カードの券種に応じて利用金額の基準を設定することで、カードをよりたくさん使っていただける方にポイントを多く還元できるようにしたいと考えてこのような形にしました。


●還元率の上限を3%にした理由


――今回の変更は、クレカ積立の月間上限額が5万円から10万円に引き上げられたタイミングと重なっています。しかし、当初「10万円引き上げを行う」という発表のみで、還元率などの具体的な詳細は最後の最後になっての発表でした


 10万円に引き上げる際の条件などについては、何カ月も前からSBI証券様と議論を重ねていました。コンセプトとしては、私どもとSBI証券様がカード事業を推進し、より拡充していくためには、カードをしっかり使っていただいて、当社にも利益が出る形にしないといけないということで大筋の合意はできていました。


 ただ、細かい条件の擦り合わせや、十分な告知期間を設けたいと考えていたので、そのスケジュール調整などはSBI証券様と時間をかけて行っていたということです。


――新還元率の上限を3%と置いた理由はなんですか?


 新しい還元率の上限を3%と設定したのには、いくつか理由があります。まず、カードの利用金額との組み合わせを考えました。積立の上限が10万円に引き上げられたことも踏まえ、クレジットカード積立以外の買い物でもカードを使っていただくことを想定しながら、いろいろとシミュレーションを重ねた結果、3%という数字に落ち着きました。


 また、プラチナプリファードでは、年間ボーナスポイントの仕組みによって年間利用額400万円までが追加ポイント還元の対象となっています。つまり、400万円を超えて利用しても、ポイントが追加でたまらず、お客さまからは「400万円以上利用するモチベーションが湧かない」といったお声もいただいていました。


 そこで今回、新たに500万円のバーを設けることにしたのです。つまり、400万円までとは別枠で、500万円以上利用していただくと、さらにポイント還元率が上がるという仕組みにしました。これは、400万円以上カードを利用されているお客さまに、「もう少し使えばさらにお得になる」と思っていただけるインセンティブになればと考えたものです。500万円という数字は、プリファードカードのヘビーユーザーの方でも十分到達可能な、目標設定になっていると思います。


 それぞれのカードの券種に応じて、「自分は普段このくらいカードを使うので、このカードが自分にとって最大のメリットを得られる」と実感していただける水準に設定したつもりです。


――還元率はそのままで、5万円以降はポイントを付けない、還元率を徐々に低下させるなどの方法もあったのではないでしょうか


 他社の動向を見ると、そういった方針を取られたところもあります。しかし、最終的には、積立額の上限を10万円に引き上げつつ、5万円以上の積立にもポイントを付与する現在の形に落ち着きました。


 政府が推進しているNISA制度の拡充により、つみたてNISAの年間非課税投資枠が120万円に拡大されました。私としては、こうした流れを追い風に、若い世代を中心により多くのお客さまに投資を始めていただきたいと考えたのです。そのためには、5万円以上の積立に対してもインセンティブを用意することが必要だと判断しました。


――今回の還元率変更によって新規会員獲得数や解約数などに、どのような影響があったでしょうか


 還元率変更による大きな影響は見られていません。新規会員の獲得ペースは、以前と変わらず順調に推移しています。


 ただし、現在は積立の上限を5万円から10万円に引き上げただけの状態で、本格的な還元率の改定は10月以降です。10月の改定のタイミングでは、影響が出てくるかもしれません。そのあたりは注意深く見守っていきたいと思っています。


 もちろん、改定の内容を十分にご理解いただくためには、丁寧なコミュニケーションが欠かせません。10月の本格実施までには、ポイント還元の仕組みをより分かりやすくお伝えしていくことが責務だと考えています。


●還元率変更でユーザーはどう動いた?


――今回の変更発表は、クレカ積立に対する影響はありましたか?


 この施策の発表以降、クレカ積立もものすごく利用が増えています。もちろん、5万円から10万円に変更した方も一定数いらっしゃいますが、それ以上に、新規に積立を始める人が大幅に伸びています。積立の設定件数、金額ともに大きく増加しています。


 直近の数字を見ると、3月25日時点で積立設定金額が500億円だったのが、4月1日には600億円を突破しました。わずか1カ月で100億円以上増加したことになります。さらに4月10日の締め切り後の数字を確認したところ、700億円に迫る勢いで伸びていました。つまりこの2カ月間だけで、200億円以上の積立設定金額の増加があったということです。


 これは、1年前のOliveの発表会で掲げた「3年で500億円を目指す」という目標を、わずか1年で軽く超えてしまったことになります。


――クレカ積立は、三井住友カードの新規顧客獲得にどんな効果を及ぼしましたか?


 三井住友カードにとっても新規顧客獲得に非常に大きなインパクトがありました。


 カードの入会理由を尋ねるアンケートを見ると、直近の半年間は常に1位が「SBI証券のクレカ積立サービスがあるから」となっています。今では実に約50%もの方が、クレジットカード積立を三井住友カードを選んだ最大の理由に挙げています。


 こうした数字を見ると、SBI証券様との提携が、当社の新規顧客獲得の非常に大きな柱になっていることが分かります。特に、クレカ積立に対する関心が高いお客さまは、金融リテラシーも高い傾向にあります。SBI証券様とのタイアップは、当社にとって、質の高いお客さま層の獲得にも直結しているのです。


 一方で、SBI証券様にとっても、当社グループ経由の口座開設が増加の一途をたどっていると聞いています。まさに相乗効果が生まれている状態だといえるでしょう。


――ユーザーにメッセージをお願いします


 今回の変更に、一部で「改悪」といった声もいただいておりますが、弊社のカードをメインカードとして使っていただくことを想定すると、むしろメリットが大きくなると考えています。私どもとしては、他社と比較しても負けない、ナンバーワンの還元率になるよう設計していますので、ぜひそこをご理解いただければと思います。


 積立だけでなく、キャッシュレス利用も含めてトータルで考えると、三井住友カードがお客さまにとって一番お得になるはずです。そういったメリットをいかに分かりやすくお伝えできるか。それが10月の改定に向けたわれわれの課題だと考えています。


このニュースに関するつぶやき

  • 長々と言い訳を並べているだけで言っている内容が楽天と一緒ですね。改悪でしょう。
    • イイネ!1
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