フルサイズセンサーなのに小型軽量、「LUMIX S9」はSNSユーザーのための“初めてのカメラ”

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2024年05月25日 08:31  ITmedia NEWS

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ブラックモデルを正面から。四角くてコンパクトでシンプルなボディが特徴だ

 パナソニックが小型軽量フルサイズセンサー機「LUMIX S9」(DC-S9、以下S9)を発表した。一番大きくてゴツいのがS1、小さくて軽いのがS9というわけだ。


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実は、そろそろパナソニックが小型軽量系のSシリーズを用意してるんじゃないかと確信したのは、2月の「CP+2024」でのことだった。


 パナソニックのSシリーズは、フルサイズミラーレス一眼としてはゴツくて重めのボディという印象で、主力の「LUMIX S5 II」は約740g。だいたい他社の主力モデルは700g弱くらいなのでちょっとゴツいのだ。


 でもここ1〜2年で登場したレンズをみると、ボディに似合わないくらい小型軽量レンズが充実しているのだ。2023年3月に登場した14-28mmは約345g、今年2月に登場した100mmマクロは約298gでマクロレンズとは思えない小型軽量で話題になった。28-200mm F4-7.1が約413gと、S5 IIがターゲットならそこまで軽く小さくする必要はないんじゃないか、もしかしたらこれらのレンズに似合うボディがくるんじゃないかと思ったわけである。


 それがS9だったのだ。


●電子シャッターのみと思い切った小さなボディはあり?


 S9は、S5 IIをベースに思い切って外せるものは外して、超小型にしたミラーレス一眼である。重さはバッテリーやSDカード込みで約486g。


 フルサイズミラーレス一眼でS9のような小型軽量ボディを特徴とするカメラはソニーの「ZV-E1」や「α7C II」、そしてシグマの「fp」がある。


 重量感としてはZV-E1と同じくらい。α7C IIより軽くて、fpより重いというところだ。


 大きさが気になるだろうから、発表会の会場で(私物の)α7II Cと並べて撮ってみた。一番近いライバルはZV-E1かと思うが、手元にあったのがα7C IIだったので。


 α7C IIの方がグリップが飛び出ていたりEVFが付いていたりで体積としては大きくて重いが、全体のサイズ感は同じだ。フルサイズセンサー搭載することや、カメラとしての持ちやすさ扱いやすさを考えるとこのくらいのサイズになるのだろう。


 ただ、S9の方が凹凸がないぶん、よりシンプルで昔ながらのカメラっぽい雰囲気を見せてくれる。そのミニマムなデザインはいい。


 センサーは35mmフルサイズで2420万画素。像面位相差AFに対応している。


 ボディ内手ブレ補正は搭載。


 ただ、メカシャッターはなく、電子シャッターのみだ。


 小型化はしたいが、ユーザー層を考えると手ブレ補正機構は外せない。そこでメカシャッターをはずしたと考えるのがいいだろう。


 電子シャッターのみだと高速に移動するものを撮影したり流し撮りしたときのローリングシャッター歪みが気になるが、それについてはS5 IIと同等ということである。


 連写性能もS5 IIと同等、プリ連写も可能で、最高で秒30コマまでいける。


 このあたりは、電子シャッターのみのS5 IIと思えばいいかも。


 実はバッテリーもS5 IIと同じ。ボディサイズに対して大きなバッテリーなので持ちも悪くなさそうだ。


 操作系は非常にシンプル。


 電子ダイヤルはシャッターボタン周りと背面のロータリーダイヤルのみで、ボタン類も最小限だ。


 ボタン類を最小限にしつつ、目立つのはLUT(ルックアップテーブル)ボタン。


 LUTというのはもともと映像の世界で使われる用語で、映像の色を調整し、全体の調子を自分好みの色表現で統一するためのデータと思っていい。色の入力に対してそれを変換して出力するためのテーブルといったら余計分かりにくいか。


 それをリアルタイムで行うのがリアルタイムLUTで映像のみならず写真に対しても当てることができる。S9では写真用のフォトスタイルに対してもリアルタイムLUTを当てることができるようになった。


 わざわざLUTボタンを設け、瞬時に当てたいLUTを選ぶことができるのがユニークな点だ。どのフォトスタイルに対してもLUTを当てられるので、より幅広く扱えるようになった。


●S9は動画用? 静止画用?


 電子シャッターのみだったりLUTに力を入れていたりと、Vlogをはじめとする動画用のカメラか? と思われがちだ。


 アクセサリーシューはあるが、コールドシュー……つまり伝記的接点を持たないシューなので外付けフラッシュも使えない。主にマイクやLEDライトの装着を念頭においた仕様だ。


 でも話を聞いてみると、Vlogカメラというわけではなく、静止画も動画も関係なく、撮ったものをSNSへ簡単にシェアできる今の時代にあったカメラ、というコンセプトのようだ。


 本体と同時に力を入れていたのがスマホ用の新しいアプリ「Lumix Lab」。Wi-Fiの立ち上がりも転送も従来より高速で、快適に画像や映像をスマホに転送できると強調していた。


 LUTを作成したりダウンロードしてS9に転送することもできる。


 そして撮影したらスマホに転送してシェアする。その一連の流れを重視したカメラという位置づけで、メインターゲットは、デジタル一眼を初めて購入するSNSユーザーだ。


 そういう人に向けて、よりデジタル一眼らしい写真や映像を撮れるフルサイズセンサーを搭載した小型でかさばらず、シンプルなボディのカメラを用意し、スマホアプリも一新して撮影からシェアまでの流れを快適にしようとしているわけだ。


 そして、冒頭で書いたようにここ1〜2年に登場した、軽くてコンパクトなレンズ群がS9に似合うのである。レンズが大きくて重いと小さなボディの機動力も生かせないからね。


 動画メインで自撮りもするならより広角に強い14-28mmが、写真メイン、あるいは望遠も撮りたいなら新しい28-200mmがいい。発売はまだ先(年内予定)だが、今回「LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3」という新しい小型軽量標準ズームレンズも発表された。


 SNSを見ていると、スマホがあればOkという層と、本格的なデジタル一眼で写真や映像の作品撮りをする層の間が、ぽっかりと空いていると感じる。そこをコンパクトで分かりやすいカメラが埋めるというのはアリで、S9はそこを狙っている。


 カメラを知っている人から見ると、メカシャッターがないとかEVFがないとかひっかかるところはあろうが、初めてのカメラだったり携帯性重視のスナップ用セカンドカメラとして割り切って使うには大きな問題ではなかろう。


 フルサイズ機としては価格も抑えられており(ボディのみで20万8000円前後)、28-200mmとのキットでも28万7000円前後。期間限定ではあるが、発売記念キャンペーンとしてMFのパンケーキレンズ26mm F8をもれなくプレゼントというお得感もある。


 ボディのデザインもいいので、こういうミニマムなカメラはアリなんじゃないかと思うのである。


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