元上司「音楽隊まとめる親分肌」=殉職の池内警部―長野4人殺害

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2024年05月25日 14:01  時事通信社

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時事通信社

 長野県中野市で住民と警察官の計4人が殺害された事件で、殉職した池内卓夫警部=当時(61)、2階級特進=は県警音楽隊に所属していた。元隊長で、県警察学校長も務めたOBの田中保さん(74)は、事件2週間前に再会しており「わずかに交わした会話が最後になった」と振り返る。

 田中さんは2002年度に広報課長兼音楽隊長だった。ドラム担当の池内さんは「親分肌で、隊員をまとめる性格だった」という。

 昨年5月12日に長野市内で開かれた危険業務従事者叙勲の伝達式。受章者として出席した田中さんは、少し早く会場に到着すると、演奏準備をしていた音楽隊員の中に池内さんを見つけた。

 「久しぶりだな、元気かや」「きょうはおめでとうございます」「きょうはお世話になる。頼むわい」。久しぶりの再会は、短いやりとりで終わった。

 約2週間がたった事件当日、警察官が撃たれたとのニュースをテレビで見た田中さん。音楽隊員は事件現場に駆け付ける地域課員が多く、「もしかしたら」との思いが頭をよぎった。その後、撃たれた警察官の一人が池内さんだったと分かり、「正義感が強いから真っ先に向かったのかな」と考えたという。

 事件後の昨年11月、自ら会長を務める住民自治協議会で、防犯や交通事故防止の啓発イベントを地元の公民館で開催した。県警音楽隊にも来てもらい、観客からは2度のアンコールが湧き起こるほど好評だった。ただ、パーカッションの中に池内さんの姿はなく、「いつもならいたはずなのに」と寂しさを感じた。

 事件から1年。伝達式の日に自宅の庭で家族と撮った記念写真に写っていたアヤメが今年も花を咲かせた。その様子を見て、池内さんとの最後のやりとりを思い出したという田中さんは、「警察官として職務を全うしたのだろう」と思いをはせた。 

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