『Animal Well』プレイレビュー 暗くて不気味な世界観に、パズルとメトロイドヴァニアの融合が光る傑作アクション

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2024年05月27日 10:00  Sirabee

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Sirabee

(©ニュースサイトしらべぇ)

Sirabee読者の皆さんこんにちは、突然ですが皆さんはもし、自分がなれるとしたら何の動物になりたいですか?

私は厳しい自然界で生きていける自信がないので、イエネコでお願いしたい系VTuberの幽霊坂ゆらぎです。

今日は、つよつよな動物に命を狙われて自分の無力さを実感する新作アクションゲーム『Animal Well』を紹介してみたいと思います。

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■暗めのビジュアルが印象的

今回紹介する『Animal Well』は、5月9日にBigmodeからSteam/PlayStation 5/Nintendo Switchで発売されました。

本作は個人でゲームを制作しているBilly Basso氏が7年の歳月をかけて作り上げた作品で、ゲームのジャンルを簡単に説明すると「謎解き要素強めなメトロイドヴァニア」という感じです。

作品の大部分を占めるアクションパズルは正確な操作を求めるものからじっくり考えこむものまで沢山あり、思わずパズル好きが唸るようなギミックも満載。

さらに、ストーリーやバックグラウンドに関して一切テキストによる説明をしないため、自分であれこれ想像を働かせるのも楽しみの一つです。

独特のタッチで描かれる世界観は美しくも不気味で、古井戸の底のような暗く湿った世界をさまよっている時のゾクゾクするような感覚は、他のゲームではなかなか味わえない感覚です。

プレイヤーの分身である玉ねぎ君(仮)。一体何者なんでしょうか?

そもそも『Animal Well(動物の井戸)』というタイトルにも関わらず、開始早々にプレイヤーの分身として操作することになる、玉ねぎみたいな子は一体何者なんでしょうか。

しかも、探索していると突然「闇」とか「おばけ」としか言い表しようのない存在に襲われるので、私は当初本作をホラーゲームかと思っていました。

探索中に突然現れるおばけは、対抗手段を持たないとかなり凶悪。

 

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■「二段ジャンプ」は甘え?

本作が他の多くのメトロイドヴァニアと違うところとして、謎解きやパズルにかなりの比重を置いていて、「戦闘らしい戦闘」はほとんどない点が挙げられます。

(『メトロイドヴァニア』というジャンルについては、別記事で解説もしているので良かったら読んでね!)

なので、プレイヤーの前に敵が立ちはだかる時は、ほとんどの場合ギミックやパズルを解く、あるいは全力で逃げる必要があります。

フリスビーに群がる犬たち。立ちはだかる障害は知恵とひらめきで解決だ。

一応体力の概念はありますが、レベルアップやボス撃破による成長などもないので、多くの場面では純粋なひらめきやテクニックで勝負することになるでしょう。

ちょっと細かい話になりますが、このジャンルの多くの作品では、ゲームの進行にしたがって「二段ジャンプ」「ダッシュ」「壁破壊」などをアンロックしていくがある種の王道パターンなのです。

ゲーム序盤から見える、明らかに怪しい場所。

新たに入手した能力で、それまで見えていたのに行けなかったエリアに到達する。数あるゲーム体験の中でも、最高に気持ちいい瞬間の一つですよね。

ですが、本作で入手できる、それらの能力の代わりとなる道具は「シャボン玉」「フリスビー」「コマ」と、他の作品ではあまり見ない珍しいものばかり。

それらの使い方も自分で発見・工夫する必要があり、前述の通り説明はほぼないに等しいので、終盤になってからまったく新しい使い方を発見する、なんてこともありました。

このアイテムの使い道ははたして…?

 

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■高い自由度とパズルの密度

世界観やビジュアルだけでも個性の強い部分が目立ちますが、本作を語る上で絶対に外せないのは「謎解きの密度」です。

インディーズなど小規模開発のゲームで遊んでいると、ときおり制作者の熱量がすごすぎる作品と出会うことがありますが、本作はまさにソレでした。

ジャンル的にはTom Happ氏がたった1人で5年かけて作り上げた『Axiom Verge』が真っ先に思い浮かびますが、あの作品も謎解きの量が尋常ではないという奇妙な共通点がありますね。

謎解きが多いとは言っても、本作はプレイヤーがある程度攻略ルートを自由に構築できる上、ただクリアするだけであればそこまで難しいパズルやギミックはないと思います。

しかし、ほとんどの人はゲームをクリアした段階でマップが全然埋まっておらず、解いていない仕掛けだらけで「アレは一体なんだったんだろう」と困惑することになるでしょう。

初見では何を表しているかもわからないヒントがあちこちに隠されています。

なんとなく戻ってそのパズルを解いてみると、そこで新しい道具が手に入ってしまい、さらにそれを使ってパズルを解くと、新たなエリアへの道が開けて、そこには新しい謎が…。

これらの謎解き要素は世界観と直結しているものあり、何一つ言葉で語られない不思議で不気味な世界観について、思わず考察したくなること請け合いです。

新しいアイテムを持ってくると、全く別のヒントがみつかることも…。

高純度の謎解きにどっぷりと浸かりつつ、たまには背景の物語について思いをはせてみるのもいいですね。

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■これ全部、1人で解ける?

先ほどクリアするだけならそれほど難しくないと書きましたが、パズルの難易度はものによってはとてつもなく高く、長考や発想の転換を必要とするものもあります。

そういったケースは迂回が可能だったりそもそもクリアに必要はなかったりするのですが、人によっては大きく足止めされてしまうかもしれません。

たまにパズルが殺意マシマシで襲ってくることもあります。

私が本作をプレイする前の印象では、謎解きとアクションの割合は「9:1」くらいパズル寄りだと思っていたのですが、実際にはアクション性を要求される場面が多かったのは意外でした。

崖際からのギリジャンは頻繁に要求されますし、こちらには攻撃手段がないのでとにかく敵から攻撃を受けないように逃げ回るのが大変なのです。

特に多くのプレイヤーにとって難関となりそうのが、ギミックを発動させると「とある動物のゴースト」に追い掛け回されるパート。

ストアページでも紹介されている、恐らくみんなのトラウマになっていそうなシーン。

このゴーストは地形を貫通し、画面をまたいでもどこまでも執拗に追いかけてくるので、初見では本当に恐怖しかありません。ワープしても追われるのはトラウマものです…。

このギミックは仕組みさえ理解してしまえばじつは攻略自体は簡単なのですが、当然説明は一切なく、とにかく見た目が超怖いので人によって理不尽に感じるかもしれません。

暗い赤に染められたエリアは、まるでホラーゲームのよう。

個人的な感想ですが、本作の謎解きの難易度にはグラデーションのような何層ものレイヤーがあり、ストーリークリアに必要なものは「遊んでいて自然に気が付く」ようにできていると思いました。

反対に、完全な寄り道であったり、あるいはコレクションのような要素に関しては初見で気が付くのはかなり難しく、目の前のゲーム画面を隅々まで見るような「観察力」が必要でした。

何かのコレクション棚。ここには何度か戻ってくることになりそう…。

例えば本作では謎解きの補助としてマップにスタンプやメモを書き込める機能があるのですが、とある謎解きで実際にそれを使う場面があり、それに気づいた時には鳥肌が立ちました。

こんな風に「どこにも説明されていないことを頑張って発見する」ことが大好きなプレイヤーは、どこまでも深く探索する喜びがきっと味わえると思います。

もっとも、中にはコミュニティパズルのような一人では完結しない謎解き要素もあるので、全ての謎を独力で解くのは難しいかもしれません。

発売から少し時間が経った今もすべての謎は解かれておらず、本作のフォーラムでは多くのプレイヤーが積極的に情報を交換していますので、自信のある方は是非参加してみてくださいね。

 

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■深い印象が残る傑作

本作は総評としては骨太なアクションゲームであり、謎解きにかける製作者の情熱や、パズルの質・量に関しては間違いなくここ数年でトップレベルに入る作品だと思います。

また、プレイするほどに引き込まれていく世界観の描写も秀逸で、語り部が一切存在しないことが逆に想像をかきたて、謎解きと同じくらいにファンによる考察が盛り上がっています。

万人向けとは言い難いですが、メトロイドヴァニアの謎解き部分が大好きな人、あるいは考察しがいのあるストーリーや世界観が大好物な人には間違いなくオススメできる作品です。

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(文/Sirabee 編集部・幽霊坂ゆらぎ)

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