夫婦、カップルでも“同意のない性行為”は罪になる?「不同意性交等罪」の功罪

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2024年05月29日 16:21  日刊SPA!

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 恋人や夫婦といつもどおり性行為をしただけで「こちらは嫌だった」などと言われ、訴えられたり逮捕されて5年以上の刑が科せられたりするかもしれない…。驚くなかれ、これは現実の話である。
 決して他人事ではない「不同意性交等罪」、一体どのような法律で、どのような行為が当てはまるのか。渋谷青山刑事法律事務所に所属し、実際に「不同意性交等罪」の相談を数多く受けている弁護士、有原大介先生に話を聞いた。

◆「不同意性交等罪」とは

 昨年2023年の法改正以前は、性行為をするために脅迫や暴行をした場合は「強制性交等罪」が、正常な判断ができない心神喪失の状態や抵抗が難しい状況を作り出して性行為をおこなった場合は「準強制性交等罪」が適用されていた。

「2023年6月16日に、さまざまな刑法案が成立しました。そのときに、“強制性交等罪”と“準強制性交等罪”という2つの犯罪が統合され、“不同意性交等罪”が新設。同年7月13日に施行されました。この法律は異性間だけでなく、同性同士にも適用されます」

 有原先生は、「この不同意性交等罪という法律は、本当は嫌だったのに『嫌だ!』と伝えられる状況になく不本意な性行為等を強要された人が声を上げやすいように新設されたということが根幹にあります」と続ける。

「改正前でも、カップルであれ夫婦であれ、相手が嫌だと拒否しているのに無理やり行為に及んだ場合などは強制性交等罪で罰せられています。ただ、強制性交等罪が成立するためには、暴行や脅迫を用い、反抗の抑圧が認められなければならないなど厳しい条件がありました。不同意性交等罪では、そういった要件が緩和され、暴行脅迫したり相手を心神喪失状態にしたりして行為に及ばなくても成立する可能性があります」

 この法律ができたことにより、日常的なDVやモラハラなどにより半ば性行為を強要されている状況など、救済の幅が拡大。ただ、処罰範囲が広がったことの負の側面として、恋人や夫婦と普段どおり性行為をしただけでも「本当は嫌だった」などと言われ、訴えられたり逮捕されたりする可能性も出てきたのだ。

◆どういうこと?いつもの性行為で逮捕も

「本当は嫌だったと後から訴えられることを防ぐために、一番わかりやすい方法は直接相手から行為の都度承諾を得ることです。はじめての相手ならともかく、恋人や夫婦との性行為で相手に承諾を得ながら進める人は少ないかもしれない。けれど相手から都度承諾を得ていたという事実は、いざ訴えられた時に当然ですが効果が絶大な反論になります。また、その都度“承諾を取る”という部分も注意すべきポイントです。キスをするときに相手から合意を得ても、キス以降は嫌かもしれない。相手からOKが出ない場合は、当然そこで止めなければいけません。つまり、動作のたびに相手の承諾を得る必要があるということです。ただ、こうなると雰囲気も何もない。興ざめしてしまいますし、現実的には恋人や夫婦間で都度承諾を得るということは難しいでしょう。

 本当に重要なことは承諾を得たか得ていないかという形式的なことではなく、相手の真意を読み誤らないことです。本当は相手は嫌がっているかもしれないと常に思いやり、相手の言動を見ながら慎重に行為に及ぶことが重要であり、それさえ守っていれば、大きなトラブルになることはないはずです。

 特に、恋人や夫婦であっても、稼ぎの違いなどから一方が経済的に大きく依存していたり、上司と部下など立場に大きな差がある場合は、相手がその影響力から性行為を半ば強要されているような状況になりやすいので、より慎重になる必要があるでしょう」

 法律が改正されて以降の相談率について尋ねたところ、「集計したわけではないのでハッキリとはわかりませんが、2倍ぐらいには増えた感覚です」とのこと。しかも、相手を陥れる目的で訴えるようなケースもあるというから恐ろしい。何か、対策はないのだろうか。

◆陥れられそうになるケースと対策

 性行為中には嫌がる素振りなどまったくなく、本人も同意していた可能性が高いにもかかわらず、警察へ駈け込まれたり訴えられたりすることも、法改正以降増えているようだ。このようなケースでは“フラれた逆恨み”、“浮気や不倫を知ってしまった怒り”などがトリガーになることが多い。

「中には、結婚相談所や出会い系アプリで相手の年収が嘘だった場合に不同意性交等罪で訴えてきたケースもあります。訴えられた側は、合意の上での行為であったと反論していくことになりますが、これが結構大変です。

 行為中は基本密室の中で2人きりのため、行為そのものに関しての客観的な証拠はなく証言してくれる人もいません。そのため、互いの供述の信用性を、2人が行為の事前事後にどのようなやり取りをしていたのかなどの証拠を集めるなどして判断し、不同意性交等罪が成立するかどうかを見極めていくことになります」

 一時的にでも逮捕や裁判となれば、真実はどうあれ社会的評価が下がることも考えられる。また、不同意性交等罪は相手が「嫌だった」と訴えれば基本的には捜査の対象になってしまうし、時効も15年と長い。性的な関係を持つたびにビクビクしながら暮らすしかないのだろうか。

「証拠は無いよりもあったほうがいいので、反論の手段として、LINEやメールのやり取りを残しておくという方法があります。別れたら相手の連絡先やメッセージの内容を完全に消去してしまう方もいますが、交通事故のときもドライブレコーダーの映像で有利になることがあるように、証拠が救ってくれることもあります。そのため、すぐに削除せず、何かあったときのために残しておいたほうがいいでしょう」

 LINEだと、簡単にブロック削除(ブロックしてから削除して、LINE上での関係を完全に絶つこと)できるが、グッと我慢して残しておきたい。心配な人は、アーカイブや2人で撮った写真などを残しておくという方法もあるだろう。

「とくに、“相手が素っ気ない”など変化があったとき“や“お互いの関係性が崩れてきたかも?”と感じたときは、要注意。行為のときには動作ごとに相手からの承諾を得て、やり取りなども残しておいたほうがいいでしょう。 また、相手から『訴える』と言われたり代理人弁護士や警察から連絡が来たりしても、『そんなはずはない』と放っておくと大事になる可能性もあります。逮捕等されて身動きがとれなくなる前に、早めに弁護士に相談するのがおすすめです」

 有原先生はそう説明しつつ、「すれ違いや性格の不一致などで普通に別れ、『相手を貶めてやろう』と考える人は少ないはず。しっかりとコミュニケーションを取り、相手を思いやって過ごしていれば、それほどビクビクする必要はないようにも思います」とも続ける。

 逆にいえば、遊びや相手が嫌がるような行為、浮気や不倫といった不誠実な対応をしていれば訴えられる可能性が高くなるのは必然ともいえるだろう。これを機に、相手と誠実に向き合うことや相手を思いやることの大切さを再認識する必要があるかもしれない。

◆盗撮動画で冤罪を立証しようとした男の話

 性的な関係を持つ相手と良好な関係を築き、継続していくことはもちろん、ときには訴えられたときに備えておくことも必要だろう。もっと確実な証拠を残しておきたいと考え、性行為の前に書面を作成してサインをもらおうとする人もいるかもしれない。

「こういったこともすべて同意しますというような書面をお互いに作成したものがあったとしても、ないよりもあった方がよいですが、結局『脅迫されて書いた』という主張が出てくれば無効になる可能性もあります。絶対に訴えられないよう対策を講じる方法は、ないといえるでしょう」

 ではさらに、性行為の様子をそのまま録画しておけばいいと考える人もいるかもしれない。ただ、相手に内緒で行為中の動画を隠し撮りすることは盗撮であり、犯罪です。あとから何か言われたら困るので録画しておいたという言い訳は通用しません。このような盗撮として立件されるケースも法改正以降増えてきています。確実な証拠を残すのは難しく、場合によっては自分が不利になる可能性があることも頭に入れておきたい。また、施行されたばかりで戸惑う内容も多い不同意性交等罪だが、訴えられる云々の前に、望まない性暴力への牽制や救済が根底にあることを忘れてはいけない。

<取材・文/山内良子>

【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意

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