痛恨エラーやアクシデントが発生!デビュー早々やらかして、消えていった助っ人たち

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2024年06月04日 07:22  ベースボールキング

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2022年に楽天入りしたクリス・ギッテンス (C)Kyodo News
 新外国人選手が活躍できるかどうかは、運も大きな要素を占める。過去には開幕早々、痛恨のエラーや思わぬアクシデントでつまづき、そのまま消えて行った不運な助っ人たちもいる。


◆ 自信を失って7月に退団

 守備力を売りにしながら、開幕戦でまさかのエラーを2つも犯してしまったのが、1982年にヤクルト入りした外野手のラリー・ハーローだ。

 オリオールズ時代の1978年に147試合出場するなど、メジャーで6年間プレーした「俊足巧打で長打力も見込める好選手」は、オープン戦でも強肩を披露し、メジャー通算打率.248の打撃はともかく、守備には光るものがあった。

 ところが、4月3日の開幕戦、巨人戦、6番センターで出場したハーローは、デビュー早々、前年8月の中日・宇野勝の“ヘディング事件”を思い出させるような珍プレーをやらかしてしまう。

 0−0の2回一死一塁、ゲーリー・トマソンが鈴木康二朗のシュートに詰まり、センター定位置付近に力ない飛球を打ち上げた。

 ゆっくり前進すれば楽にさばける打球だったが、ハーローはなぜかいったん後方にバックしたあと、慌てて前進してグラブを差し出したが、直後、足を滑らせてスッテンコロリン! 打球は人工芝に腹ばいになったハーローの頭上を越えてセンターフェンスまで転がっていった。

 この間に一塁走者の淡口憲治が先制のホームを踏み、トマソンも三塁へ。直後、山倉和博の遊ゴロで2点目。珍プレーの代償は高くついた。

 さらに3−3で引き分け寸前の9回裏、ハーローはまたしても拙守で足を引っ張る。無死一塁で、柳田俊郎の平凡な中飛の目測を誤り、安打にしてしまったのだ。勢いづいた巨人は無死満塁とチャンスを広げたあと、松本匡史が中前に快打し、サヨナラ勝ちを収めた。

 2度にわたるハーローのボーンヘッドが原因で、開幕黒星スタートとなった武上四郎監督は「今日はラリーちゃん、一人の試合だった。(4打数無安打は)こんなものだろうが、あの守りは意外だった」と信じられないような表情。一方、ハーローに助けられた形の藤田元司監督は「こういうエラーをどんどんやってもらいたいね」とニンマリだった。

 ハーロー自身は「この球場(後楽園)はマウンドが高いので、センターで守っていると、自分がものすごく低いところにいるような錯覚を覚える。それに打球もスタンドに溶け込んで見にくい」と言い訳したが、その後、この転倒シーンが何度もテレビで放映されたことから、すっかり守備に自信をなくしてしまう。

 真面目な性格で、家に閉じこもって野球の本を読むことが唯一の楽しみとあって、気分転換もままならず、4月下旬以降、打撃成績も急降下。打率.164、4本塁打、12打点と結果を出せないまま、7月20日に退団帰国となった。


◆ 開幕シリーズで「サヨナラ暴投」

 ストッパー候補の期待も空しく、デビュー早々、サヨナラ暴投を演じたのが、1989年にヤクルト入りしたホアン・アイケルバーガーだ。

 同年のヤクルトは、前年オール救援でリーグ最多の18勝と17セーブを記録した伊東昭光が先発に復帰。その代役に浮上したのが、ユマキャンプでテスト入団したアイケルバーガーだった。パドレス時代の1981年に先発で8勝、翌82年も7勝を挙げ、前年在籍したブレーブスではリリーフとして20試合で2勝0敗、防御率3.86を記録していた。

 重い球質と切れの良い変化球を買われ、抑えを任されることになったアイケルバーガーは、3月28日のオープン戦、オリックス戦で8回の1イニングをピシャリと抑え、出足は順調だった。

 だが、4月9日の開幕2戦目の巨人戦、3対3の9回にリリーフとして来日初登板のマウンドに上がったアイケルバーガーは、いきなり四球を与えて自らの野選などで無死満塁のピンチを招くと、4番・原辰徳の打席で痛恨のサヨナラ暴投を犯してしまう。

 それでも関根潤三監督は「力のある球はあったし、もう少し様子を」と使いつづけたが、4月11日の中日戦でも敗戦投手になり、チームも開幕3連敗。さらに同19日の広島戦でも四球連発で試合をぶち壊し、3敗目を喫した。結局、8試合に登板し、0勝3敗、防御率7.04という散々な成績で、5月20日に解雇されてしまった。

 日本ではまったく活躍できなかったにもかかわらず、関根監督も「名前が面白くて獲った」と回想する“珍名”から、今でもサヨナラ暴投とセットで「ハンバーガーみたいな名前の投手」を覚えているファンも少なくない。


 近年では、2022年に楽天入りした内野手、クリス・ギッテンスの“骨折事件”が記憶に新しい。

 193センチ、111キロの立派な体格からマイナー通算47試合で15本塁打を記録し、大谷翔平級の打球速度を売りにする右の長距離砲は、チームの得点力不足を解消する救世主と期待された。

 ところが、4月5日の来日デビュー戦、西武戦で、3回の2打席目に空振りした際に、なんと左手首を骨折。約4カ月戦線離脱し、わずか21試合出場の打率.242、0本塁打、8打点に終わった。

 2年目もクビがつながり、「最低でも20本塁打」の目標を掲げたものの、下半身のコンディション不良や左手親指負傷などアクシデント続きで、1軍出場のないまま戦力外に。「ケガの多い助っ人」として記憶されている。

文=久保田龍雄(くぼた・たつお)

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