SEO対策は「オワコン」か? 検索エンジンへの生成AI実装、予測される未来は

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2024年06月04日 08:21  ITmedia ビジネスオンライン

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 Googleが2024年5月に最新の生成AI「AI Overview」を発表し、とうとうGoogle検索に生成AIが本格的に実装されます。全世界シェア率が90%以上のGoogle検索が大きく進化し、私たちの「検索する」という行為が変わろうとしています。


【画像】生成AIで代替できるライターは不要になる可能性


 こうした影響により、マーケティング施策の1つである検索結果の上位に表示させる「SEO対策」の不要論が再び議論されそうです。


 果たして本当にSEO対策はオワコン(終わったコンテンツ)となるのか? 本記事ではその真相について解説します。


●検索結果の最上位がAIなら順位の重要性は下がるのでは?


 まず生成AIと検索の未来で考えられるのは、SEO対策が重要ではなくなることです。


 AI OverviewはGoogleへの登録は不要で、検索エンジンの一部として誰でも使える生成AIの機能です。2024年5月時点の仕様としては、Google検索の検索窓にキーワードを入力することで、検索結果の最上部で生成AIがそのキーワードの回答として適した回答を文章や画像を交えながら表示してくれます。


 ただし、サイト運営者側としては1つ大きな懸念があります。それは、サイトをクリックせずに目的の情報を得る「ゼロクリックサーチ」と呼ばれる現象が多発することです。


 このAI Overviewは全てのキーワードに対して一律に表示されるわけではなく、ジャンルによって表示が異なるため、現時点でAI Overviewの実装が必ずしもビジネスの売り上げなどに直結するとは言いきれません。とはいえ、少なからず以前までのGoogle検索と比べてゼロクリックサーチは増えることが予想されます。キーワードやジャンルによっては検索順位の上位に表示させることの重要性が下がり、SEO対策自体がオワコンになる可能性があります。


●生成AIの実装でGoogle検索自体がオワコン化の可能性も?


 続いて生成AIと検索の未来で考えられるのは、Google検索の「ググる」という行為がなくなることです。


 ナイルの調査によると、今まではGoogle検索を使う人の約40%がGoogleの生成AIの存在を知っており、その内の60%が実際に使用したことがある人でした。しかし、AI Overviewが実装されることでGoogleユーザーに認知され、使用率も100%近くまで上がるでしょう。


 今まで生成AIを使ったことがない人も使うようになり、その利便性を実感すれば、Google検索を使うよりも、ChatGPTやGeminiのような生成AIチャットボットを使って調べるユーザーが増えるかもしれません。


 今後のGoogle検索の利用率は生成AIの利便性や、スマートフォンのデフォルトの検索としてどう組み込まれるかによって変わってきますが、もし生成AIチャットボットが検索の主役に移り変われば、「ググる」という行為が減り、Google検索自体がオワコンになる可能性があります。


●AIで書けるならライター・外部コンサルは不要では?


 もう一つ考えられる未来は、生成AIを使えば誰でも簡単に検索ユーザーのニーズに適したコンテンツを作ることができるため、ライターや外部のSEOコンサルタントが不要になることです。


 生成AIへプロンプトを入力する際に、例えば「あなたはベテランのマーケターです。初心者に向けて専門用語をなるべく使わずに、マーケティングの定義について説明文を書いてください」と入力すれば、ターゲットとなる読者を想定したライティングが可能です。さらにプロンプトの粒度を細かく設定すれば、ライティングの質を上げることもできます。


 プロンプト次第ではSEO対策も考慮したコンテンツを作成できる可能性があります。そうなると生成AIで代替ができるため、ライターや外部SEOコンサルタントがオワコンになる可能性があります。


●キーワードやコードも作れるならSEO担当者も不要では?


 最後に考えられるのは、生成AIで対策キーワードの候補出しやHTMLのコード作成ができるので、インハウスでSEO対策する場合も専門知識や技術を持った担当者が不要になることです。


 従来のSEO対策キーワードの選出では、検索ユーザーのニーズやGoogleのアルゴリズムを深く理解する必要がありました。そのため、たとえ優れたツールがあっても、使用する担当者にSEOの基礎知識と経験が求められていました。しかし生成AIに粒度の細かいプロンプトを設定し、さらに検索ニーズやSEOの難易度を学習させれば、SEOに精通した担当者がいなくとも生成AIで対応できる可能性があります。


 また、生成AIは具体的なHTMLコードが作成可能です。表現したいデザインや挙動を具体的に入力すれば、SEOを考慮したプログラミングについて専門的な知識を持たずとも、適切なコードが生成できる可能性があります。


●今後は生成AIと共創できるSEO人材が必要


 ここまで生成AIと検索の未来において、SEO対策がオワコン化する可能性について解説してきましたが、結論としてはSEO対策は完全にオワコンとはならず、今後も形を変えてマーケティング施策の一つとして残り続けると予測されます。


 その理由の1つ目が“生成AIの精度の低さ”です。Googleも公式ドキュメントで生成AIの問題点をいくつか挙げていますが、中でも「ハルシネーション」と呼ばれる事実に基づかない情報の生成が大きな問題です。今後、この問題が飛躍的に改善されない限りは、生成AIをGoogle検索エンジンの代わりとして使用するのはリスクが高いといえるでしょう。


 2つ目は、必ずしも全ての人が生成AIだけで検索を完結しないことです。簡単な調べ物であれば生成AIで足りるユーザーもいますが、コンテンツを深く読み込んだり、サービスや商品を見比べたり、生成AIによって生成された情報をうのみにせずに自分の目で実際に確かめたいと思うユーザーは一定数いるはずです。そのため、生成AIで表示される参照元URLに選ばれるための対策や、検索表示の掲載順位を向上する従来のSEO対策は依然として重要だと考えられます。


 そして3つ目は、生成AIにとって定量化しきれない不完全な仕事は人の代替が難しいため、ライターも外部コンサルタントもSEO担当者も、生成AIに完全に置き換えるのは難しいことです。これらの役割には定量化しきれない要素が必ずあり、生成AIを活用したとしても、最終的には専門性や信頼性、権威性や体験性を持った人間による監修が必要です。


 生成AIが進化することで、HTMLコードやテキスト量、外部リンクなどにこだわる古典的なSEO対策は確実に終わっていきます。そのかわり、生成AIの長所・短所を理解し、ユーザーにとって有益な情報を生成AIと共創する「新しいSEO」が求められることが予測されます。


 ビジネスにおいて、AIを使うことが日常となり始めています。AIをどれだけうまく使えるかで、競合との間に差が出てくることでしょう。AI人材の育成・採用や、AIを活用したマーケティング施策の開発を日々進めていくことが今まで以上に重要になると認識する必要があります。


●筆者プロフィール:田中雄太


株式会社デジタルアイデンティティに2023年にジョイン。前職の株式会社アダムテクノロジーズでは執行役員。現在はSEOエヴァンジェリスト、コンサルタント。Googleヘルプコミュニティ・検索セントラルのプロダクトエキスパート。SEO集客からの売り上げ・問い合わせ増加など、セールスファネル全体のコンサルティングが可能。


『薬機法管理者』の資格を有し、表現の規制が厳しい薬機法関連分野のマーケティングにも精通。


X(旧Twitter):@yuuta_tanaka88


会社HP:https://digitalidentity.co.jp


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