スターバックスが、モバイルオーダー&ペイ向けのサービス「App Clip」を本格展開した。iPhoneのカメラで読み取るだけの簡単な操作で、アプリのインストールや会員登録なしで、モバイルオーダーが利用できる。
App Clipは、2024年2月に六本木エリア5店舗からテスト運用でスタートし、5月22日から東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、愛知県の約1000店舗にて導入する。2024年7月には全国約1900店舗での展開を予定している。なお、モバイルオーダー&ペイは全国約1900店舗で導入済みだ。
この記事では、まずApp Clipを使ったモバイルオーダーの具体的な利用方法を解説する。さらに後半では、モバイルオーダーとApp Clipについて、スターバックスの担当者にインタビューを行った。インタビューに応じたのは、スターバックス コーヒー ジャパン のデジタル戦略本部 CRM部 部長の清水省吾氏と、App Clip担当の伊東聖実氏だ。
●iPhoneのカメラで読み取るだけ、登録不要
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App ClipはiOSの機能で、アプリをインストールせずに、アプリの動作の一部を使える仕組みだ。スターバックスの場合は、モバイルオーダーの注文フローの一部をApp Clipに組み込んでいて、店頭のコードを読み込むだけでコーヒーやドーナツをスマホで注文できる。
App Clipを使ったモバイルオーダーでは、スターバックスのアカウント登録を必要としない。さらに、店頭でコードを読み込むため、店舗を選択する必要もない。支払いはApple Payで行うためスムーズだ。モバイルオーダーで手間になりがちな手順が簡略になっているため、手軽に使い始めることができる。
使い方は簡単だ。App Clip対応店舗では、専用のコードが掲示されている。iPhoneのカメラにかざして、タップ操作を2回で注文画面を表示できる。
メニューは10秒程度で読み込まれる。スターバックスラテのような定番商品から、ストロベリーフラペチーノのような季節商品まで注文できる。
●App Clipはアプリ一覧にしばらく保存される
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App Clipは一度利用するとiPhoneのアプリ一覧に表示される。またモバイルオーダーを使いたいときには、アプリ一覧から呼び出して使える。App Clipをしばらく利用しないと、自動でiPhone上から削除される。
スターバックスのモバイルオーダーで会員登録なしで利用する場合は、会員プログラムの「スターバックス リワード」の特典は得られない。また、ドリップコーヒー(カフェミストを含む)の2杯目を特別価格 で購入できる「One More Coffee」も対象外だ。
●アプリ登録済みでもApp Clipコードは使える
継続して利用したい場合は、スターバックスの公式アプリをApp Storeからインストールしよう。スターバックスアプリをインストール済みの場合でも、店頭のコードを読み込むとアプリが起動する。
店舗選択を省略して、モバイルオーダーの注文画面がすぐに表示されるので、アプリの操作を時短できる。すでに会員登録済みのiPhoneユーザーにも、App Clipは便利な仕組みだ。
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●モバイルオーダーはカスタマイズが分かりやすい
モバイルオーダー&ペイの最大の特徴は、列に並ばずに注文できる便利さだが、それ以外にも魅力がある。
その1つが、柔軟なカスタマイズに対応することだ。スターバックスのドリンクはトッピングやミルクの種類を柔軟にカスタマイズできるが、店頭で注文するのは慣れていないと難しかったり、気恥ずかしかったりする。
アプリでは複雑なオプションを把握し、アプリ上で注文できる。カスタマイズにはどのような種類があって、追加料金がいくらなのかを知らない一般スタバユーザーでも凝ったカスタムがしやすい。
複雑な例としては「ホイップクリーム多めでチョコレートチップとエスプレッソショットとシトラス果肉を追加してアーモンドミルクに変更したキャラメルフラペチーノ」もアプリから注文できる。
また、季節商品の発売に合わせて、季節限定のトッピングが提供されることもある。例えば、5月なら「メロン果肉トッピング」(※記事掲載時点で販売終了)を追加できる。
●手軽さと利便性を追求した「App Clip」 スターバックス担当者に聞く
モバイルオーダーとApp Clipについて、スターバックスの担当者にインタビューを行った。
清水氏 2019年6月に導入した「モバイルオーダー&ペイ」は、お持ちのスマートフォンからスターバックスの商品を注文できるサービスです。2020年11月に全国で導入し、2021年からはLINEアプリ上から開けるようになっています。
お店の席に座ってから注文できるのも特徴で、列に並ばずにスマホから注文できて、オンラインで決済まで完結します。
―― 新サービスのApp Clipはどのような特徴がありますか。
伊東氏 App Clipによるモバイルオーダーは、よりシンプルな手順で注文できるので、これまでよりも多くの方により手軽にご利用いただけます。
これまでのモバイルオーダー&ペイは、使い始めるとスムーズに注文できて快適な体験を提供していますが、初回の準備に不安を感じるお客さまもいらっしゃいました。App Clipはこの初回の体験をよりスムーズにすることを狙いとしています。
一方で、お客さまの中には使い始めの段階で、「どういう準備が必要なんだろう」と悩まれる方もいらっしゃいました。この最初の1回の体験をスムーズにしようというのが、今回のApp Clipを導入したサービスの狙いです。
SNSでは、実際に使われた方から以下のような好評の声をいただいています。「本当に何も登録せずに決済ができるので、良いサービスだと思った」という方や、「店舗を選ばなくていいから、便利」といった声です。
―― モバイルオーダーを試したことがない人にとって、App Clipの「専用のコードをカメラで読み取る」という行為もハードルが高そうに思います。
伊東氏 そうですね。その点では、まずは試していただけるように、店頭での掲示を工夫しています。コードを大きく表示したポスターを作って、その後の注文の流れもイメージしやすいようにしています。
モバイルオーダーの便利さは、列に並んでいるときこそ実感できると思います。そこで、メニューのような形状の細長い案内資材も作りました。列が長くなってきて、並んでいても時間がかかりそうだというときに、店舗のパートナー(従業員)が案内します。
パートナーは「かざすだけで注文できます。注文が終わったらカウンターで受け取るだけなんですよ」とシンプルに案内することで、お客さまに試していただけるようになっています。
●会話が生まれるニックネーム機能
―― 店頭のコミュニケーションを重視しているスターバックスならではの案内方法ですね。他にもスターバックスならではの工夫はありますか。
清水氏 スターバックスは、1杯のコーヒーを通してお客さまとのつながりを育んでいくという理念を大切にしており、店頭でのコミュニケーションを重視しています。
そういった理念を反映したモバイルオーダーならではの機能が、「ニックネーム機能」です。これは、モバイルオーダーで商品を受け取る際に呼ばれる名前を、お客さまご自身で設定できる機能です。
ニックネーム機能には、受け取り間違いを防ぐという実用的な側面もありますが、それ以上に重要なのは、パートナーがラベルを見て「あのお客さまの商品だな」と認識できることです。これにより、ラベルに「お疲れさまです」とメッセージを添えたり、毎回ストローを必要とされるお客さまにそっと付け加えたりと、コミュニケーションのきっかけとして活用できるのです。
―― 店頭スタッフが個人に合わせた接客する際に役立つということですね。
清水氏 そうです。この機能を導入してからSNSで興味深い反響がありました。
例えば、あるお客さまが人気アイドルグループのメンバーにちなんだニックネームを設定していたところ、コーヒーをお渡しする際にスタッフから「私も好きなんです」と話しかけられて盛り上がったというエピソードがXに投稿されていました。
お客さまに商品をお渡しするだけでなく、お客さまとのつながりを育んでいけるようになっているところが、私たちのサービスのユニークな点だと考えています。
―― メニューのカスタマイズ機能が柔軟にできるのも面白いですね。
伊東氏 モバイルオーダー&ペイを試験的に開始した2019年当初は、カスタマイズのニーズも限定的でした。しかし、お客さまの多様なニーズにお応えするために、徐々にカスタマイズの選択肢を増やしてきました。
店頭で注文する際のカスタマイズをモバイルオーダーでどのように表現するかについては、特にこだわりを持って取り組んでいます。
カスタマイズの例としては、氷の量の調整やミルクの温かさの指定などがあります。これらは従来、店頭でのお客さまとパートナーとの対話の中で実現されてきたもので、中にはデータ化されていないものもありました。私たちは、そうした細やかなカスタマイズをいかにしてモバイルオーダーの画面上で実装するかについて、入念に検討し、工夫を重ねてきました。
―― 最後に読者の方にメッセージをお願いします。
伊東氏 お店に着いてから、列ができていて「あまり時間もないしやめようかな」と思ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。モバイルオーダー&ペイは、そうした方にも「これだったら自分の時間を大事にしながら便利に使えそう」と思っていただけるようなサービスに作り込んでいます。ぜひ一度、体験してみてください。
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