孤独・孤立対策メタバース「ぷらっとば〜す」を公開した理由 内閣府に聞いた

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2024年06月04日 21:21  ITmedia NEWS

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「ぷらっとば〜す」紹介ページより

 内閣府 孤独・孤立対策推進室が開設した、孤独・孤立対策のためのメタバース「ぷらっとば〜す」。同サービスを巡っては、メタバース上でのコミュニケーション禁止などの独特なルールが話題となり、SNSなどで物議を醸していた。なお、同サービスは5月31日をもって提供を終了している。


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 ぷらっとば〜すは、5月の「孤独・孤立対策強化月間」の広報・啓発活動の一環として同推進室が開設したサービス。「気軽にきてみて。ゆる〜くつながる場所」をコンセプトに、孤独や孤立で悩む人のための相談窓口や、サポーター養成講座などの各種ウェビナーの開催の他、自治体・NPOなどの取り組みを紹介。クラシックコンサートの生中継などのイベントもメタバース上で実施していた。


 サービス開始時は大きな話題にならなかったものの、5月26日に社会学者の古市憲寿氏が運営に関する意見をXに投稿したところ広く拡散される事態に。古市氏は、ユーザー間のコミュニケーション禁止や開設時間が午前10時〜午後6時に限られることなど、ぷらっとば〜すの独特な運営ルールなどについて指摘。「こんな孤独なメタバースって世界中探してもないんじゃないでしょうか」などと問題提起した。


 ぷらっとば〜すでは、音声通話・チャットを含めてユーザー同士の会話などを禁止している。一方で、マイクやカメラなどがデフォルト設定でオンになっており、ユーザー側でマイクとカメラをオフにし、通話の受信設定を「静音モード」に変更する必要があった。このルールに従わないユーザーには、「けいびのひと」というユーザーネームを付けた運営スタッフが近づき設定を変更するまで離れない、あるいは警告なしで強制的に退場させるなど、強硬手段を講じることもあった。


 こうした運用に疑問を抱いた人も多く、ユーザーからは「そもそもメタバースである必要があるのか」など、運営に対する多くの意見や指摘がSNSに投稿された。


●メタバースの採用は「広報のツールとしてポテンシャルが高い」


 なぜ孤独・孤立対策にメタバースを選び、独特なルールを設定したのだろうか。内閣府 孤独・孤立対策推進室の松川氏は、メタバースを選んだ理由について「メタバースは広報のツールとしてもポテンシャルが高いと考え採用しました」と話す。


 「政府から発信する情報はURLなどが散逸して分かりづらいと考えており、1つの空間からさまざまなリソースにアクセスできるところに注目しております。参加者同士のコミュニケーションというメタバースの大きなメリットをあえて活用していないため、ある意味変則的な活用であることは認識していました」(松川氏)


 ユーザー同士のコミュニケーションを禁止した狙いとしては「誰でも利用できる空間として設計しておりますが、現に孤独・孤立状態にある方や他者とのコミュニケーションの苦手な方に合わせて、相互のコミュニケーションは不可といたしました」と説明する。


 「誰でも参加できるという設計上、勧誘や詐欺など本来の利用目的ではない人が来場する危険性もあるため、ある意味変則的な活用であることは認識の上で、利用者の安全性確保を最優先する運用としました」(松川氏)


 ぷらっとば〜すのメタバース空間には、リモートワークのコミュニケーションツールとしても使われる「Gather」を採用している。選定の理由を聞くと「操作が容易な2Dメタバースを採用していること、空間デザイン設計の自由度が高いこと。高度な通信環境や周辺機器、専用アプリなどを必要とせず、PCからでもスマートフォンからでもメタバース空間にアクセスすることができるため、さまざまな状況にあるより多くの方に利用してもらえること」を挙げた。


 Gatherの採用にはメリットもある一方で、ユーザーにとっては一部不便な面もあった。コミュニケーションツールであるという特性上、Gatherのデフォルト設定ではカメラやマイクなどの機能が有効になっているが、ぷらっとば〜すはユーザー同士の会話を禁止していたため、ユーザーはサービス開始時にマイクやカメラを一度オンにした上で、手動でオフにする必要があった。


 設定をユーザーに任せることなく、最初から全てオフにする仕様にはできなかったのか。松川氏はこの疑問に対し「Gatherの仕様上、マイク・カメラを最初から全てオフにすることができなかったため、来場の皆さまに協力をお願いする運用としておりました」と述べた。


 ぷらっとば〜すは、古市氏の投稿をきっかけにユーザー数が急増すると、定員上限に達して入場ができなくなる時間帯も出てくるようになった。ルールを守らないひやかしのユーザーも増加し、システム不具合が原因で31日午前10時にサービスを早期終了した。


 これについて松川氏は「28日から利用者の集中等が見られるようになり、29日夕刻にシステムに不具合が生じたため、復旧に向けてメンテナンスを行っておりました。31日午後6時までの開設予定でしたが、31日午前10時の時点でも復旧のメドが立たなかったため、当初の予定を早め開設終了としました」と説明している。


 「今回の『ぷらっとば〜す』はいわば試行実施であり、孤独・孤立対策強化月間である5月限定の運用。メタバース空間の活用については、具体的な運営面の他、孤独・孤立の広報手段や、孤独・孤立に悩む方の相談の場として効果的かどうかなど、今回の試行結果を踏まえて後よく検討していきたい」と説明。指摘が相次いだぷらっとば〜すだが、今回の結果を受けて今後の対策支援を検討するとしている。


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