日本代表にとって「6月開催の2試合」が意外と重要なワケ。消化試合かと思いきや「最後のチャンス」か

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2024年06月05日 16:11  日刊SPA!

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会見する森保一監督 ©産経新聞社
 FIFAワールドカップの出場を目指してアジア2次予選に挑んでいるサッカー日本代表は、6月6日(日本時間21:10キックオフ)にミャンマー代表、同11日(19:10キックオフ)にシリア代表と対戦する。
 3月26日にアウェイで北朝鮮代表と対戦する予定だったが、開催5日前に北朝鮮の意向で平壌での開催が中止。同30日にはFIFAが北朝鮮の過失によって没収試合となることを決定し、日本代表が3-0で不戦勝という結果になった。それにより日本代表のアジア2次予選突破も決定。今月行われる2試合は消化試合となることになった。

◆「消化試合」かと思いきや「重要な試合」

 選手、観客ともにモチベーションを保つが難しい消化試合ではあるが、ナショナルチームダイレクターの山本昌邦氏は「9月から始まる最終予選に向けて、本当に重要な2試合になろうかと思います」と、今回の試合の意義を説いている。

 9月からは2次予選を勝ち抜いてきたアジアの強豪国が、6チームの3グループに組み分けされてアジア最終予選を行うことになる。今年1月に開催されたアジアカップで日本代表は苦戦を強いられて、準々決勝で敗退。日本代表を苦しめた相手が集結するのが、最終予選である。

 それまでにはまだ3カ月ほど残されているが、実際のところ試合を行えるのはこの6月に予定されているミャンマー代表戦とシリア代表戦の2試合しかない。これを踏まえると、まさに山本ダイレクターが唱えるとおり「重要な2試合」で、アジアカップで露呈した弱点を対策する最後のチャンスになるのだ。

◆森保監督の口から珍しいコメントが

 森保一監督は、今回の選出メンバーを発表した会見で、この2試合を含む今回の活動における目的について以下のようにコメントしている。

「この2試合で選手を試し、そしてシステムを試して、全体的に戦術的な浸透度を上げて最終予選につなげていけるように活動したいと思います」

 森保監督は新戦力を試すことや戦術を浸透させることを目的として示唆することは常だった。しかし、今回はシステムを試すことに自ら言及する珍しいコメントを残したのだった。

◆サイドバックの人数が少ない理由は…

 改めて今回のメンバーを見てみると、招集されたサイドバックの人数が少ないことがわかる。所属チームにおいて、4バックのシステムでサイドバックを務めるは、長友佑都と菅原由勢の2人だけである。そして、所属チームは3バックだがサイドバックもできる選手として、橋岡大樹と伊藤洋輝が加わる。それでも少ないことには変わりがなく、前回はこの4名に加えて毎熊晟矢も招集されていた。

 推察されるのは、森保監督は今回の2試合で3バックのシステムを主軸に戦おうとしているのではないかということである。実際に、今回の活動が始まった合宿初日から3バックのシステムを試しているようだ。

 森保監督が3バックのシステムを採用したい大きな理由のひとつに、アジアカップで弱点として露呈したロングボールへの対策が挙げられる。

 アジアカップではサイドバックとセンターバックの間をロングボールで狙われ、マークのずれやカバーリングの甘さを相手に突かれた。その解決法として最終ラインにヘディングの強い3人を並べ、こぼれ球を拾うべき中盤を厚くする方法を見出したのだろう。仮に4バックのままだとしても空中戦に強い橋岡を右に、伊藤を左に配置して、露呈した弱点をカバーできると考えていることと思われる。

◆「攻撃的な3バック」を見せてほしい

 ただ、日本代表は守備を重視さえすれば高水準の力を発揮できると、先のワールドカップを含めて歴史が証明している。仮に今回の2試合で3バックを採用するのであれば、日本代表が本当に見せなければならないのは、守備への比重が重くならない攻撃的なシステムである。

 現・日本代表における最強の攻撃的な武器といえる伊東純也と三笘薫は今回も招集されなかった。このような不測の事態は最終予選でも起こり得るだろう。それでも結果を残してワールドカップ出場権を勝ち得なければならない。そのためには不在メンバーがいても落ちないクオリティを発揮できるようにしなければならない。むしろ、想像を上回るようなハイクオリティなプレーやコンビネーションで驚かせてくれることを期待したい。

 守備重視と思われがちな3バックのシステムだが、そのイメージを払拭するほど攻撃的な3バックシステムの戦術を見せてほしい。日本代表の現メンバーにはそのポテンシャルはあるし、実現することを想像すれば消化試合といわれる2試合も楽しみになってくる。

<TEXT/川原宏樹>

【川原宏樹】
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる

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