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たった四半世紀の間に、米NVIDIAの株価は3400倍以上に膨れ上がった。1999年4月の底値は0.33ドル程度だったが、現在の株価は1148ドル。25年間で3400倍と、驚異的な成長を見せている。
2024年の同社の時価総額は足元で2.8兆ドルに達した。すでにGoogleを運営する米Alphabetの時価総額を抜き去り、世界の時価総額ランキングにおいては米Microsoftと米Appleに次ぐ3位につけている。Microsoftが3.1兆ドル、Appleが2.9兆ドルであることを踏まえると、3社間の差はごくわずかであり、NVIDIAが「時価総額世界一」の称号を射程圏に収めたと言っても過言ではないだろう。
足元の急上昇は、イーロン・マスク氏のAIスタートアップ「xAI」がNVIDIAの技術を採用したことも一因である。一昔前は知る人ぞ知るIT関連企業であったNVIDIAは、どのように成長してきたのだろうか。
●NVIDIAが驚異的な成長を遂げているワケ
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NVIDIAは、1993年に設立され、グラフィックス処理ユニット(GPU)の開発で知られる企業だ。もともとは「Call of Duty」のようなFPSゲームなどにおけるグラフィックスカード分野でその名をはせたが、近年では人工知能(AI)やデータセンター、クラウドコンピューティングなど、幅広い分野での利用が急増している。
特に注目すべきは、NVIDIAのGPUがAI分野で果たす役割だろう。同社のGPUは、ディープラーニングのトレーニングにおいて欠かせない存在となっている。
さらに、NVIDIAはCUDAというプログラミングプラットフォームを提供しており、これにより開発者はGPUを用いた高度な計算処理を効率的に行える。こうした技術的なリーダーシップが、NVIDIAの成長を支えている。
また、データセンター市場への進出においても、大きな成功を収めている。NVIDIAの製品は、ビッグデータ解析やクラウドコンピューティングの分野で重要な役割を果たしており、これにより企業の収益を大幅に押し上げている。特に、AIの利用が拡大する中で、データセンター向けGPUの需要が急増していることも成長の要因だ。
●先駆者の地位確立を支えた戦略
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NVIDIAの成功は、その技術力だけでなく、戦略にも支えられている。CEOのジェンスン・フアン氏は、AIとGPUの可能性をいち早く認識し、企業全体をこれらの分野にシフトさせることで、市場の先駆者としての地位を築いた。
NVIDIAは、現代のAI(人工知能)ブームにおいて、まるで19世紀のゴールドラッシュにおけるつるはしやジーパンの販売業者のような役割を果たしている。
ゴールドラッシュで実際に金を掘り当てることができた人は一握りだったが、押し寄せてきた鉱夫が必要とする「ジーンズ」を売ることで巨額の利益をあげた企業が存在した。今日でも「リーバイス」ブランドで存在感を放つ米Levi Straussだ。
そのような企業と同様に、AIラッシュの中で、NVIDIAは参入者に自社製品を提供している。どの企業がAIの覇権を握るかにかかわらず、大きな成功を収めることができる立場にいるのだ。
AIブームは、さまざまな企業や研究機関が新たな技術やサービスを開発するための「金鉱」として注目されているが、その背後で必要となるのが高性能な計算能力である。NVIDIAは、そのGPU技術を提供することで、AI市場におけるインフラストラクチャを支えており、多くの企業がその技術を活用している。この意味で、リーバイスの成功と同様の形式を持つ。
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●青天井の株価にはリスクも……
このように、NVIDIAのAIチップとGPUの需要は、2024年の半導体業界の成長をけん引していることに間違いない。
しかし、NVIDIAの成功は他のコンピューティングリソース関連企業にとってもチャンスであることを忘れてはならない。例えば、AMDやIntelなどの企業もAIチップやデータセンター向けの製品開発を強化しており、業界全体の技術競争が激化しつつある。
このような競争は、市場の成長を促進する一方で、現状の“NVIDIA一強”の時代を終わらせる要因になり得る。
NVIDIAの株価は非常に高い評価を受けている点も忘れてはならない。その評価が正当化されない場合、株価の大幅な調整が起こる可能性がある。現在の予想株価収益率(PER)は39.96倍とS&P500指数平均の約20倍を大きく上回っており、投資家は今のNVIDIA一強の状態がしばらく続くと考えている。もし、AMDやインテル、またはその他のコンピューティングリソース企業が台頭してきたり、AIラッシュが比較的短期で終了してしまったりすると、期待が剥落し、株価が下落するリスクもある。
NVIDIAは、世界一の時価総額を誇る企業となるのか。一時的な熱狂があれば十分にあり得ると言える一方で、安定的な世界一の座を維持するためには、さらなる技術革新と戦略的な市場拡大が求められるだろう。
●筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCEO
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。
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