【堂本光一 コンマ一秒の恍惚web】フェラーリとマクラーレンにタイトル挑戦のチャンスが出てきた

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2024年06月07日 06:10  週プレNEWS

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「タイヤ戦略の幅を広げるなどの思い切った特別ルールを設けないと、長い歴史を誇るモナコGPの価値が下がってしまう」と心配する堂本光一

連載【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】RACE9

第8戦モナコGPでフェラーリのシャルル・ルクレールが今季初優勝を挙げた。2位にはマクラーレンのオスカー・ピアストリ、3位にはフェラーリのカルロス・サインツがそれぞれ入り、王者レッドブルはドライバーを表彰台に送り込むことができなかった。

シーズンが進むにつれてフェラーリとマクラーレンの競争力が向上し、レッドブル一強の状況が崩れ始めているように見えるが、これからタイトル争いの行方はどうなっていくのだろうか!?

* * *

【写真】悲願の母国優勝を飾ったルクレール

■ルクレールの勝利を除けば退屈なレースだった

フェラーリのシャルル・ルクレール選手が悲願の母国GP制覇を達成し、今シーズン初勝利を挙げました。モナコGPで母国人が優勝したのはF1史上初とのこと。表彰式ではプレゼンターとして登場したモナコ公国のアルベール2世大公がルクレール選手とともにシャンパンファイトをされていました。そんなシーンはこれまで見たことながなかったので、びっくりしましたね(笑)。

でも今年のモナコGPの決勝はルクレール選手の優勝が唯一良かったことだったかもしれません。予選は上位勢のタイムが接近しており、非常にスリリングだったのですが、決勝に関しては、市街地コースが舞台となるモナコGPの一番悪いところが出てしまったと感じました。

ガードレールに囲まれたモンテカルロ市街地コースは狭く、現代のF1ではオーバーテイクがほぼ不可能です。だからピットストップでのタイヤ交換のタイミングが非常に重要となり、各チームがどういう作戦をとってくるのかというのが見どころだったのですが、今回のモナコでは1周目にクラッシュが発生し、赤旗中断となりました。

このタイミングで全車がタイヤ交換を行なったため、もはやピットストップする必要がなくなってしまった。その結果、上位のドライバーたちはみんな後ろを見ながらタイヤをいたわり、超スローペースでゴールを目指すという展開となったのです。まるで長い長いパレード走行を見ているようで、正直、退屈なレースでした。

■このままではモナコの価値が下がってしまう

これはF1のあるべき姿じゃないですよね。美しいモンテカルロの公道を封鎖してつくられた難コースを、ドライバーたちがガードレールギリギリに攻めて全開で走っていくのがモナコGPの醍醐味です。少しのミスがあればガードレールの餌食になるため、モンテカルロ市街地コースを制するためには、高い集中力とテクニックがドライバーに要求されます。

だからこそ、「モナコGPの1勝はほかのレースの3勝分の価値がある」とF1の世界では言われています。でも今年のようなレースを見せられると、いくらモナコGPは長い歴史と人気を誇る特別な一戦とはいえ、その価値が下がってしまうと思います。

超スローペースのレース展開になったのは、ドライバーのせいではありません。現在のレギュレーションがそうさせている部分が大きいと思います。近年、F1はレギュレーション変更によってマシンの大型化が進み、コース幅の狭いモナコでは追い抜きが困難というレベルではなく、まず不可能になっています。

さらにモナコは平均速度が低いためにタイヤにかかる負担が小さく、現行のタイヤではピットストップをしなくても最後まで走り切れてしまいます。レギュレーションでは各グランプリにハード、ミディアム、ソフトの3種類のタイヤが投入され、レース中に2種類以上のタイヤを使用しなければなりません。

でもモナコだけは特別ルールを設けて、ソフトよりも軟らかくて摩耗が激しいスーパーソフトタイヤを投入したり、2種類でなく3種類のタイヤを全部使うことを義務付けたり、そういう思い切ったことをしてタイヤ戦略の幅を広げていかないと、今回のような退屈なレースが再び行われるかもしれません。レギュレーションを見直すなど、何らかの対応をとってほしいと思います。

■100%完璧な仕事をしたRBの角田裕毅選手

モナコでは角田裕毅(つのだ・ゆうき)選手が8位に入り、第6戦のマイアミGPから3戦連続で入賞しています。予選でアストンマーティン勢を上回る8番手に入り、決勝でもそのポジションをしっかりと守り切りました。

でも角田選手も入賞したほかのドライバーと同様に後ろの選手を見ながら、スローペースで走るという戦略を強いられました。モナコの角田選手は速さがあり、決勝でも前を走るメルセデスのルイス・ハミルトン選手やジョージ・ラッセル選手にひけを取らないペースがあったと思います。

攻めの走りを見たかったですが、事実上、追い抜きができないモナコではトラックポジション(見た目の順位)が重要なので仕方がありません。角田選手本人もフラストレーションが溜まったと思いますが、予選の順位を守ってポイントをしっかりと持ち帰るというチームのオーダーに応え、ドライバーとして完璧な仕事をしたと思います。

角田選手(獲得ポイント19)はモナコGP終了時点のドライバーズランキングでフェルナンド・アロンソ選手(獲得ポイント33)に続く10位。ここ数戦、好調をキープするRBは、アロンソ選手の所属するアストンマーティンと肩を並べるパフォーマンスを発揮できています。

RBのマシンは開発が進んで速くなってきていますが、クルマの総合的なポテンシャルとしてはまだトップグループ、レッドブル、フェラーリ、マクラーレン、メルセデスなどと、予選・決勝を通して互角の勝負ができるレベルまで来ていません。中団グループのウイリアムズやアルピーヌも速くなっており、今後のさらなるアップデートに期待しています。

■絶好調のマクラーレンと先行き不安のレッドブル

第8戦のモナコGPではフェラーリが1位と3位、マクラーレンが2位と4位にそれぞれ入り、王者レッドブルはマックス・フェルスタッペン選手が6位に終わりました。モナコは市街地という特殊なサーキットが舞台でしたが、フェラーリとマクラーレンはマシンのアップデートが進み、レッドブルとの差は確実に縮まっているように見えます。

モナコの前に行われたエミリオ・ロマーニャGPでもマクラーレンのランド・ノリス選手が最後まで優勝したフェルスタッペン選手と僅差のバトルを演じており、もはや昨シーズンのようにどんなサーキットでもレッドブルが強いという状況ではなくなってきています。

特にマクラーレンはマシンが良くなってきている上に、若いドライバーふたりに勢いがあります。第6戦のマイアミGPで自身初優勝を達成したノリス選手とデビュー2年目のオスカー・ピアストリ選手がお互いを刺激し合い、パフォーマンスを高めているように見えます。

マクラーレンはかつて何度もタイトルを獲得した名門チームでしたが、2010年代中盤頃からは低迷して、勝てないシーズンが続きました。でも昨シーズンから24歳のノリス選手と23歳のピアストリ選手という若いコンビが元気な走りを見せてくれ、マクラーレンが完全に生まれ変わったという印象があります。しかもマクラーレンは近年、シーズン中のマシン開発で成果を上げているので、これからが非常に楽しみです。

その点で、レッドブルは不安です。マシン開発の最高責任者のエイドリアン・ニューウェイ氏が25年の第1四半期限りでチームを離脱することが決まっており、すでに技術ミーティングに出席しておらず、開発の第一線から外れています。レッドブルの伸びしろはどれぐらいあるんだろうなあと考えてしまいます。

エミリオ・ロマーニャGPとモナコGPでフェラーリとマクラーレンが大量得点したことで、コンストラクターズ選手権をリードするレッドブルのポイント差はかなり縮まりました。しかもレッドブルはセルジオ・ペレス選手がここ数戦、調子を落としていることもあり、フェラーリとマクラーレンにタイトル挑戦のチャンスが出てきたと思います。

次のカナダGP(決勝6月9日)の舞台となるジル・ビルヌーブはモントリオール市内の公園の周回路を利用したサーキット。市街地のモナコ同様に特殊なコースで、マシンの本当の実力は見えづらいと思いますが、ガードレールや壁が近く、荒れる展開になることも多いので、どんなレースになるか今から楽しみです。

☆取材こぼれ話☆

4月から5月にかけて帝国劇場で行なわれた主演ミュージカル『Endless SHOCK』が5月31日に千秋楽を迎えたが、公演中も毎戦欠かさずF1をチェックしていたという。

「ヨーロッパでのレースは基本的には22時にスタートするので、夜の部が終わったあとは慌ただしくなります。スピンオフの『Endless SHOCK ‐Eternal‐』編は本編よりも上演時間が30分短いので、まだ時間的に余裕があります。モナコGPのとき(5月26日)はEternal編だったので、18時開演の夜の部は20時半過ぎに終わり、それからミーティングを済ませ、自宅に帰ってもレーススタートまで時間があります。

でもエミリオ・ロマーニャGPのとき(5月19日)はヤバかったですね。本編の場合は終演が21時15分で、レース開始まで45分しかありません。さすがにF1があるからといってミーティングを早く切り上げるわけにはいかないので、終わったら速攻で自宅に帰って、スタートにギリギリ間に合いました」

スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/AKM ヘア&メイク/大平真輝)

構成/川原田 剛 撮影/樋口 涼(堂本氏) 写真/桜井淳雄

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