ゲーセンが減っても大人気! 「ゲーセンミカド」店長が語るゲームセンターの魅力と生存戦略

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2024年06月08日 10:20  週プレNEWS

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東京・高田馬場にある「ゲーセンミカドINオアシスプラザ」。1階はプライズゲームや音ゲーが、2階には格ゲーやシューティングゲームの筐体がズラリ

ゲームセンターの倒産や廃業が2年連続で増加するなど、苦境を強いられているゲーセン業界。そんな中で東京・高田馬場と池袋に店舗を構える「ゲーセンミカド」は、常識に捉われない「何でもやる」スタイルを貫き、毎日にぎわいを見せている。一例を挙げると、動画配信へのいち早い参入やコロナ禍での強化、大会やイベントの実施、グッズ制作、クラウドファンディング、店長と店の半生をつづった本の出版...。そして最近では銀座の高級ホテル「ハイアットセントリック銀座東京」とコラボし、レトロゲーム筐体をレンタルしてイベントを行っている。

街のゲーセンが減りゆく中で、ミカドがとった生存戦略とは何なのか? そしてなぜこれほどまでにゲームファンの支持を得るのか? 店長の池田稔氏に話を伺った。

【写真】ゲーセンミカド店長の池田稔氏

【写真】ゲーセンミカド店長の池田稔氏

◆大手ゲーセンにはない企画力とレトロゲームで勝負

――ゲーセンミカドといえば豊富なレトロゲームや、大会の配信文化のイメージが強いですが、そういった要素を大事にしている理由は?

池田 2006年にミカドの新宿店をオープンさせたんですが、設置してある筐体がレトロゲーム中心になっていったというのは、実はそうせざるを得なかったからなんですね。新しいゲームで大手のゲーセンに対抗しようとしても、どうしても資金面や規模では勝つことができない。だから、このままお客さんを他店と取り合うのは不毛だと感じて、『ストリートファイターII』など90年代の格闘ゲームなどを中心に揃えていったんです。

逆に大手ゲーセンは企画力がなくてもお客さんが集まりますから、企画を打ち出すノウハウがあまりない。そこでミカドはオープン当初から大会を行ったり、その様子を録画してYouTubeやニコニコ動画にアップしたりしていました。まだ「動画配信」なんて言葉が浸透していない頃から、筐体の映像を外部出力するために試行錯誤してましたね。

最初に大会の様子を生配信したのは2011年ごろ、YouTubeでもニコニコ動画でもなくてUstreamでした。




――名作ゲームはもちろんのこと、マニアックなゲームの大会も行うなど、ミカドはイベントへの力の入れ具合を感じますが、イベントにこだわる理由は?

池田 僕は高卒でゲームセンター会社に就職して、当初はゲーセン業界の売り上げはとても良かったんです。でも、時代が経つにつれて少しずつ陰りが見え始めてきました。そこで、さっきも言ったように企画を打ち立てて、SNSもない時代ですからチラシを撒いて集客する。そういう工夫をするのが当たり前だったんですね。

名作と呼ばれるゲームの世界大会なんかもやっていますが、一見「こんなの誰がやるんだよ」っていう変わったゲームでも、今は配信とSNSというツールがあるので意外とお客さんが面白がってくれてイベントが成立してしまう。イベントを運営していると、そういう面白い発見にしょっちゅう出会いますね(笑)。

その延長で、例えば「キャラクターを作ってグッズを売ろう」とか、「コロナ禍で休業要請が出たからクラファンを実施しよう」とか、これをやったら面白そうだというネタを柔軟に実行していくようにしています。



【写真】ゲーセンミカド店長の池田稔氏

◆ゲーマー以外にも意外なお客さんが

――客層はやはり往年のゲーマーが多いのでしょうか?

池田 もちろんそうなんですが、新しい客層もいます。ひとつは、動画配信のおかげで増えた10代・20代の若いお客さんですね。

もうひとつは、結婚したゲーマーが連れて来てくれるお子さんのお客さんです。僕自身も親にゲーセンへ連れて行ってもらったからこそ今があるので、子連れでミカドに来て『ストII』とか『グラディウス』をやってる光景を見るのはたまらないですね。



――ちなみに、インバウンドの影響による外国人の来客数はどうですか?

池田 大手のゲーセンだとクレーンゲーム目当てで中国人のお客さんが多いようですが、ミカドは北米やヨーロッパからのお客さんが多く来られます。特に北米ではアーケードゲームの文化が90年代に一度滅びてしまっているので、貴重な実機が残っている日本に子供の頃の思い出を求めて足を運ぶゲームファンが多いみたいです。

ヨーロッパのゲームファンは日本のドット絵をアートとしてとらえる方も多いようですね。「ドット絵はとてもクールなのに、今の日本のゲームはどうして何でも3Dにしちゃうんだ」なんて声も聞いたことがあります。

それと、海外でも漫画『ハイスコアガール』(スクウェア・エニックス刊)の人気が高くて、作者の押切蓮介さんがミカドのイメージキャラクター「ミカドちゃん」をデザインしてくれているので、おみやげにミカドちゃんのグッズを買ってくれる方が多いですね。

【写真】ゲーセンミカド店長の池田稔氏


◆ゲームをやるならアーケードの実機が一番

――6月30日までの期間限定で、銀座のホテル「ハイアットセントリック銀座東京」とコラボイベントが行われていて、ミカドがレトロゲームの筐体を提供しています。この経緯は?

池田 ミカドでの売上ももちろん大事ではあるのですが、ポップアップストアなどの「外へ広げる展開」も重要であると僕は考えていて。例えば、ミカドのお客さんの中には地方からわざわざ来てくださる方もいるんですが、ということはその地方にミカドの支店の需要があるかもしれないですよね。

ただ、ゲーセンを出店するということは意外と条例や法律などのハードルが高くて、簡単なことではない。その点、ホテル内に筐体を貸し出すコラボというのは制度面での相性も良いので、今後の地方展開への足掛かりになるかもしれないなと感じています。

――そういった地方展開以外にも、将来的に何か考えているビジョンはありますか?

池田 ひとつは、先ほども話に出た海外のお客さんをよりたくさん呼びたいということですね。例えばミカドの大会を海外のYouTuberに配信してもらったり、実況してもらったりして、もっと多くの海外の方にもミカドを注目してもらえないかなと思っています。

もうひとつは、ミカドのオリジナルゲームを作れないかということ。「ゲーセンのゲーム」としてゲーセン文化を発信しつつ、100円で満足感を得られるレトロゲームの魅力が詰まった、お賽銭感覚のゲームを作りたいですね(笑)。

そういう新しい企画も含めて、これまでのイメージを崩してしまうくらいのアツいアイデアを持った若者がどんどん企画を提案してほしいなって思っています。次の時代に向けて新陳代謝ですね。

――週プレNEWS読者の中には、昔はよく通ったゲーセンへ足が遠のいている方もいるかと思いますが、改めてゲーセンの魅力とは?

池田 今は家庭用ゲーム機に移植されたレトロゲームも多いですけど、やっぱり実機ならではの迫力を味わってほしいんですよね。遅延の少ないブラウン管とか、レバーやポタンの触り心地。家庭では味わえない独特のサウンド。シューティングゲームだったら最適化された連射装置も付いていますし、家庭用のゲーム機では到底及ばない魅力がたくさん詰まっています。

それに、最近の家庭用ゲームってクリアするまでに結構時間がかかりますけど、アーケードだったら5分10分で気軽に遊べて、達成感や満足感などは一瞬で得られる。100円で10分で大迫力。やっぱりゲームをやるならアーケードの実機が一番だっていうことを体感してほしいです。

それと、ミカドだったら配信に出ている名物プレイヤーに会うこともできます。「いつも見てます!」って簡単な挨拶をするだけでもいいし、もしかしてそこから仲間とか友達ができるかもしれない。ゲームは1人で遊ぶよりも、大人数で遊んだり観戦した方が絶対に面白いですから。

***

■池田稔(いけだみのる)
1974年生まれ。ゲーセンミカド店長で、オリジナルDVDやライセンシー商品の企画発売を行う株式会社INHの代表取締役社長。小学生時代からゲームセンターに通い始め、高校卒業後にゲームセンター店員として働き始める。2006年に「ゲーセンミカド」を開店。著書に「ゲーセン戦記―ミカド店長が見たアーケードゲームの半世紀 」(中公新書ラクレ)。

■ゲーセンミカド
「高田馬場ゲーセンミカド IN オアシスプラザ」、「池袋ゲーセンミカド IN ランブルプラザ」、「ゲーセンミカド×ナツゲーミュージアム in 白鳥会館(高田馬場)」の3店舗を構えるゲームセンター

取材・文/ゆん 撮影/山添 太

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  • ここにはメタルホークの躯体があるだけで素晴らしいんです。
    • イイネ!10
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