「すごい高校生がいる」 アルバイトからココイチFC社長に就いた22歳、その素顔は?

1

2024年06月12日 10:51  ITmedia ビジネスオンライン

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia ビジネスオンライン

22歳でココイチFCの新社長に就任した諸沢莉乃さん

 スパイスの香りが漂う店内。その中に、ひときわ笑顔の輝く女性の姿があった。諸沢莉乃さん22歳。5月、「カレーハウスCoCo壱番屋」(ココイチ)を1都8県でフランチャイズ(FC)展開するスカイスクレイパー(群馬県太田市)の新社長に就任した。


【写真】「毎回、泣きながら参加していました」 毎月の経営会議で


 アルバイト従業員として働いていた19歳のとき、全国のココイチで当時15人しかいなかった接客のスペシャリストの称号「スター」を最年少で獲得。これが人生の転機となり、アルバイトから社長への大抜擢となった。


 22歳の新社長とは、一体どんな人なのか。その素顔に迫った。


●「すごい高校生がいる」


 社長を打診されたのは、2022年1月のこと。「スター」の称号を獲得した祝いの席で、創業者の西牧大輔社長(当時)から「次の社長をやってみないか」と声がかかった。


 「最初は冗談を仰っているのかなと。けれど、不思議と不安な気持ちはなく、『私なんか』という気持ちもなく。単純に面白そうだなと思い、その場で『はい』と即答しました」(諸沢さん)


 スカイスクレイパーは、西牧社長が26歳だった1996年、壱番屋の独立支援制度を使って設立した企業。現在、群馬県など1都8県で「ココイチ」25店舗と「ラーメン大戦争」2店舗を運営する。年商は約20億円、社員約45人、パート・アルバイト従業員約390人を抱える。


 諸沢さんがアルバイトを始めたのは、高校1年生のとき。周りの友達がアルバイトを始める中、楽しそうだなと思い、友達と一緒に面接を受け、横浜市緑区のココイチ店舗で働き始めた。


 カレーの仕込みや洗い場、ドリンクやカレーの提供、レジ精算――と、業務全般を経験した。「高校時代の青春はココイチ」と言い切るほど、接客業の楽しさに夢中になった諸沢さん。当時、同い年の女子が多く、「いつかうちらでお店を回そうね」と誓い合った。「皆は辞めてしまい、かなわない夢でしたが(笑)」


 高校を卒業後もココイチのアルバイトを続け、19歳のとき、本部認定の接客のスペシャリスト「スター」の称号を獲得した。全国に約2万人いるココイチ従業員のうち、16人目の「スター」で、いまも全国に31人しかいない。


 「すごい高校生がいる」――。諸沢さんの接客スキルの評判は、社内で瞬く間に広がった。「同年代のアルバイト従業員のスキルアップに力を貸してほしい」と、各地の店舗に応援に赴いた。


 そんな社内の信頼があったからこそ、22歳新社長の誕生にも、「社内に混乱はありませんでした。『あの諸沢さんならね』と、自分の娘のように応援し社長就任を祝う社員がたくさんいました」とスカイスクレイパー広報室長兼執行役員の今村弥生さんは話す。


●「泣きながら参加した」経営会議


 約1年後(2024年5月)の次期社長就任に向けて、猛勉強がスタートした。西牧社長とともに、社外の関係先に挨拶に回った。経営を学んだ経験はなく、月に一度開催される経営会議では、知らない用語と、損益計算書など分からない数字ばかりで「毎回、泣きながら参加していました」と打ち明ける。


 それでも分からないことが出てきたら、その都度、出席する幹部に質問を投げた。「会議を中断してしまうのは申し訳なかったけれど、分かったふりをして社長に就任するほうが、それこそ人に迷惑がかかる。今ここで少しの恥をかいておこうと思いました」(諸沢さん)


 諸沢さんには、いつも心掛けていることがあるという。それは、即答すること。「目の前にチャンスが降ってきたら必ずつかむ。迷ったらダメ」


 西牧社長から次期社長の打診を受けたときも、迷わず即答した。とにかく苦手を克服し、高みを目指したいという成長意欲が人一倍強いと自身を顧みる。


 中学生のころ、運動が得意ではなかったが、あえて運動部を選び、バスケットボール部に入部した。体育の授業では、50メートル走で同級生に後れを取り、悔しくて「もう一度走らせてください」と先生に懇願したことも。「2回目も1回目と変わらず11秒でした」と笑いながら振り返る。


 運動が得意になったわけではないが、当時の努力は「無駄だったとは思わない」と語る。「バスケ部で人一倍、声を出して応援したことが、今の接客に生きていると思います」


●「いまどきのマインドではないけれど」


 22歳といえば、いわゆるZ世代にあたる。コスパやタイパを重視し、業務における無駄を避けたいと考える人が多いと言われる。周囲を見渡せば、仕事よりもプライベートを重視する友達が多く、「仕事が大好き」な自分は「いまどきのマインドではないのかも」と諸沢さんは話す。


 「社員、アルバイト、パートの皆さん、それぞれの働き方がある。自分の『仕事大好き』を押し付けようとは思っていなくて、それぞれに合った働き方を提案してあげたい」


 いよいよ5月1日から新社長に就任。これから3年間は西牧前社長が会長として伴走する。当面の目標は、2024年中にまずは1店舗、新規出店を実現することだ。そのためには売り上げを確保し、店長クラスの人材を育成していく必要がある。


 「社長になっても、現場に入って仲間と一緒に汗をかいて、お互い成長し高め合っていきたい」(諸沢さん)


このニュースに関するつぶやき

  • 22歳の女性がアルバイトから社長って、令和最大の出世でしょうね。20歳の時に社長にならないかと打診があり、2年間社長になる為の修行をしていたと言うわけですが、凄いですね。人柄も良いのでしょう。
    • イイネ!4
    • コメント 6件

つぶやき一覧へ(1件)

ニュース設定