ハードウェア製品をサービス化するXyte、3000万ドルの資金を調達|メーカーのHaaSモデルへの変革を支援

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2024年06月12日 20:00  Techable

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Xyteは、イスラエルと米国を拠点に、デバイス・ハードウェアメーカー向け管理プラットフォーム「Xyte Device Cloud(以下、XDC)」を展開しているスタートアップ。

同プラットフォームは、メーカーがハードウェアのサブスクリプションである“ハードウェア・アズ・ア・サービス(Hardware-as-a-service:HaaS)”事業を実行するためのクラウドである。

そんなXyteが、今年1月に3000万ドルの資金調達を行ったと発表。調達資金のうち2000万ドルは、Intel Capitalが主導し、Samsung Nextおよび既存の投資家であるS CapitalとMindset Venturesが参加したシリーズAラウンドで調達したもの。この資金は主に米国とヨーロッパでの事業展開に使う計画だ。

BlackRockからの借入枠である1000万ドルは、メーカーのHaaSモデルへの変革を資金面から支援するために使う予定だという(参考)。
産業サービス化のトレンドの先にあるHaaSモデルSpotifyやNetflixなどのデジタルコンテンツ、ソフトウェアの世界でオンデマンドのサブスクリプションモデルが当たり前になってからずいぶんと時が経つ。

これは「顧客を獲得して売り切って保守するフロー型ビジネスモデル」から、「顧客と関係性を築くストック型サブスクリプションモデル」への変革であった。また顧客からみれば「所有する」から「使用する」へのパラダイム変革でもある。

顧客に優れたCX(カスタマーエクスペリエンス:顧客体験・顧客経験価値)を提供することがビジネス成功の第一の要因であるとの認識が広がったことが、その背景にある。

HaaSモデルへの変革は、顧客コミュニティとの長期的な関係を構築し、その関係をてこにして、企業に継続的かつ安定的な収益をもたらすことを意味する。

ハードウェアやデバイスの分野においても、HaaSモデルの事例が数多く登場している。日本でも自動車のサブスクリプションサービスなどが登場しているため、身近な話題だ。

HaaSモデルでは、顧客はハードウェアの使用料金を定期的に支払うが、そのハードウェアを購入する必要はない。メーカーやサービスプロバイダーは、必要に応じてハードウェアの監視、保守、更新、アップグレード、および交換の責任を負う。高額な料金を最初に支払うことなしに、保守が行き届いた最新の製品を利用できることが優れたCXに直結するのだ。
HaaSモデルへの変革を助ける統合パッケージXDC[caption id="attachment_236889" align="aligncenter" width="1365"] Image Credit:Xyte[/caption]デジタルコンテンツやソフトウェアを提供するSaaSとは異なり、HaaSへの変革は、ハードウェア製品特有の課題を持つ。

まず、ハードウェアを管理するためのクラウドベースのインフラ構築が必要だ。また、一度(もしくは分割)で会計が終わるハードウェアの販売とは違い、HaaSでは顧客への請求や税金の支払いなどの資金繰りが複雑であるため、高度な運用機能が求められる(参考)。

とりわけ小規模企業の場合、HaaSに関する知識の欠如により、導入が困難になる可能性も。

そこでXyteはそれらの課題を解決するために、サービタイゼーション・プラットフォームとしてXDCを提供している。

[caption id="attachment_236890" align="aligncenter" width="619"] Image Credit:Xyte[/caption]XDCの主要機能には以下のものがある。
・リモート管理と監視:メーカーはデバイスの稼働状態を監視し、診断を行い、リモートでファームウェアを更新できる。
・予防保守:デバイスからデータを収集し、製品の使用状況とパフォーマンスに関する洞察を得ることができる。これにより予防保守が可能になる。
・顧客サポート品質の向上:チケット管理機能を備えた顧客サポート機能による顧客満足度の向上を支援する。
・Eコマース体験の提供:サブスクリプションベースのEコマース体験を提供する。またサブスクリプションの課金管理を容易にするための請求機能を持つ。
・資金調達の支援:Xyteは金融機関と提携し、サブスクリプションモデルへの変革に必要となる資金調達を支援する。
XDCにより、メーカーはデバイスやハードウェアが倉庫を出た瞬間から顧客に届く瞬間、そしてアフターマーケットでの販売までを管理できるようになる。
HaaSモデルへの変革の動向を見守り続けるハードウェアやデバイス産業のサービス産業化の流れは歴史の必然であるように思われる。ハードウェア産業の関係者の中には「つくって売り切る」製品中心主義の伝統的なビジネスモデルに限界を感じている人も多いだろう。しかし問題は、仮にそうだとしても、どれくらいの速さで、どれだけのメーカーが、HaaSモデルに変革できるかだ。

HaaSモデルは新たに登場したコンセプトではない。2012年頃にはGEの航空機エンジン部門がエンジンを「つくって売る」ビジネスモデルを放棄した。エンジンにつけた2000個のセンサーからのデータを解析することで予防保守につなげ、エンジンの稼働時間に課金する「サブスクリプションモデル」に変革したのだ。

GEの航空機エンジン部門は、ボーイングなどを戦略パートナーとし、このサービスビジネスモデルへの変革によって莫大な収益をあげ注目を浴びた。

しかしこのGEの事例からわかるのは、HaaSビジネスモデルへの変革は、思ったよりも簡単ではないことだ。

マーケティングと営業を変革し、新たな方法で、新しい戦略パートナーや新しい顧客コミュニティを構築する必要がある。在庫管理の方法はゼロから一新されるため、財務管理の方法も一新する必要がある。リモートサービスや顧客サービス部門の新設が必要かもしれない。良いものをつくるコアコンピタンス以外は、全部、つくりなおす必要がある。

そのうえデータ分析機能をハードウェアやデバイスに持たせる変革も必要だ。そしてこれは、その企業に根付いた風土や文化までをも変革することを意味する。

Xyteのこれからの道行は、パートナーたる顧客の強い変革の熱意に左右されることだろう。

参考・引用元:Xyte

(文・五条むい)

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