ホンダ「ヴェゼル」はマイナーチェンジでどう変わった? 試乗で確認!

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2024年06月13日 11:40  マイナビニュース

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ホンダがコンパクトSUV「ヴェゼル」にマイナーチェンジを実施して発売した。アウトドアテイストの「HuNTパッケージ」が登場するなど内外装の変更点に目が行きがちだが、肝心の乗り味はどう変わったのか。ハイブリッド車「e:HEV」にじっくり試乗してきた。


ヴェゼルのグレード展開は?



ヴェゼルの現行型は2021年に発売となった2世代目。初代ヴェゼルは2013年に誕生し、コンパクトSUVの先駆者となったクルマだ。そのあまりの人気ぶりに、同じようなサイズ感のトヨタ自動車「C-HR」が誕生したほどである。



現行ヴェゼルには2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」を搭載したハイブリッド車(HV)と1.5Lガソリンエンジン搭載車の選択肢がある。今回のマイナーチェンジでもパワートレインの選択肢には変更がない。人気はe:HEVで、ヴェゼル購入者の9割以上がHVを選んでいるという。マイナーチェンジ後の受注動向でも比率はほぼ変わらないそうだ。ちなみに、ガソリンエンジンを搭載するホンダのコンパクトSUVに乗りたいという人には、2024年3月に発売となった「WR-V」という選択肢もある。


今回の試乗では売れ筋のe:HEVで前輪駆動(FF:フロントエンジン・フロントドライブ)とAWD(オール・ホイール・ドライブ:4輪駆動)を乗り比べた。



ヴェゼルのマイナーチェンジモデルには「G」「X」「Z」の3つのグレードがある。「X」では「HuNT(ハント)パッケージ」、「Z」では「PLaY(プレイ)パッケージ」が選べる。パッケージというのはクルマの見た目や雰囲気を変える一連の装備品をまとめたものだ。


走ればわかるマイナーチェンジの効果



今回はFFのプレイパッケージとAWDのZグレードに試乗した。



マイナーチェンジの成果は走り出して間もなく体感した。車載バッテリーの電力に余裕があるためモーター走行からの出だしとなり、あたかも電気自動車(EV)に乗っているかのような乗り心地だった。車体に追加された防音材も室内の静けさに一役買っているはずだ。



もともと、2代目のヴェゼルは発売当時から上質な印象があり、初代に比べると格が上がった感じだった。その上質感が、マイナーチェンジでさらに高まったようだ。


EVのような滑らかな走りと静粛性は、車載バッテリー制御の改善に負うところもある。バッテリー容量の限界近くまで電力を使うことにより、EV走行領域が増え、快適さが割り増しされた。



2代目ヴェゼルは後席の乗り心地の良さが大きな特徴になっている。正直、初代ヴェゼルの後席は長く座っているのが辛いほど上下振動があった。それが2代目で大幅に改善し、マイナーチェンジモデルでは快適さがさらに向上している。後席が主役と思えるほど乗り心地がいい。とくにFF車の居住性は、ずっと座っていたくなるほどだった。



後ろの座席は座面と床との距離が適切で、足を下におろし、正しい姿勢で座ることができる。これも乗り心地のよさと走行中の姿勢の保持に役立っている。

車載バッテリーの充電量が減ったり、強くアクセルペダルを踏み込んだりすると、発電のためエンジンが始動する。モーター走行から様変わりする瞬間だ。しかし、エンジン音が耳に届いても、それほど違和感はない。



ホンダのe:HEVと似たハイブリッド方式である日産自動車の「e-POWER」も、エンジンが始動しても乗員に違和感を感じさせないような制御となっている。「シリーズハイブリッド」といって、エンジンが主に発電のために使われる方式では、モーター走行とエンジンの発電によるモーター走行との隔たりを縮めることが、商品性向上につながる。



ヴェゼルは日産のe-POWERに比べると、割とエンジン音が聞こえてくるものの、嫌な気分にはならない。「世界一のエンジンメーカー」と言われるホンダのエンジンは、昔から濁りのない透き通った音を特徴としていた。エンジンを発電に使う場合は駆動に使う時ほど回転数が上がらないが、それでも、快いエンジン音が耳に届いた。


走行モードを「スポーツ」に切り替えると、エンジンの稼働領域が増え、よりエンジンが回っている時間が長くなる。その際のエンジン音は壮快で、胸がざわめくような躍動感を伝えてきた。ここがe-POWERとは感触の異なる点だ。



e-POWERはEVらしさを損なわない制御を目指している。それに対してホンダのe:HEVは、モーター走行のよさとエンジンの醍醐味の両方を味わわせる制御としている。両社それぞれに個性的で興味深いHVなので、どちらも試して好みに合わせて選択するのがいいと思う。

オススメはe:HEVのFF!



全体的な印象はFFもAWDも共通だが、AWDになると車両重量が増加することもあり、より重厚な乗り味になる。その落ち着きがいいと感じる人もいるはずだ。



一方で、AWDは車両重量が増え、モーターも前輪用と後輪用の2個をほぼ常時使うため、電力消費が増え、発電の機会が増える。FFに乗り始めた際にあたかもEVのような印象を受けたのに比べ、AWDではEV的な感触が減って、エンジンの存在を意識させられた。



サスペンションの設定はFFとAWDで変更なしとの説明だ。AWDではタイヤのバタつく感じが出て、乗り心地がやや粗く感じられた。それは後席の居住性にも影響した。


モーター走行を軸に走るのがe:HEVの特徴だ。「らしさ」をより感じられるのは、FFではないかと思う。降雪地域ではAWDが安心だと思うかもしれない。それでも、近年のスタッドレスタイヤの性能は大きく前進しており、またモーター駆動はエンジンに比べ約1/100の速さで微調整の制御ができるので、よほど急坂の雪道や凍結路の不安がある場面でなければ、FFでも安心して走れるのではないだろうか。



それほど、マイナーチェンジしたヴェゼルのFFは好ましい印象をもたらし、なおかつe:HEVのよさを存分に味わうことができた。



ひとつ注文があるとすれば、内装色の選択肢を充実させてもらいたいということだ。パッケージを装着しない場合、「G」「X」「Z」グレードは黒の内装色しか選べない。マイナーチェンジで上質感の増した品のいいSUVとしてヴェゼルの購入を検討する際、アイボリーやベージュなどの明るい内装色が設定されていれば、選びたいと思う消費者が増えるのではないだろうか。


御堀直嗣 みほりなおつぐ 1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレース参戦を経て、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。 この著者の記事一覧はこちら(御堀直嗣)
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