書類にまつわる悲哀を川柳に 「私のイチオー業務川柳」でグランプリを獲得したものは? 6月15日「PDFの日」にちなみ

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2024年06月14日 12:31  ITmedia PC USER

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「PDFの日」が記念日として正式に登録されたことを示す記念日登録証

 6月15日は「PDFの日」だ。文書フォーマットとしてのPDF(Portable Document Format)を正式発表した1993年6月15日から、30周年を迎えた2023年に記念日として登録された。


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 PDFの日を前に、アドビはメディア向けに「Adobe AcrobatとPDFの未来」イベントをゲートシティ大崎イーストタワー(東京都品川区)で開催し、業務の非効率化を招いている書類を巡るさまざまな課題と現状、また今後のロードマップなどを発表した。


 また、PDFの日に先駆けて、5月15日から募集していた「私のイチオー業務川柳」の最優秀作品賞の発表がお笑いコンビ「ミキ」の2人を招いて行われた。


●「まだ紙の書類を郵送しているの?」


 同社では「ビジネスにおける帳票郵送業務に関する調査」を2024年4月に実施した。電子帳簿保存法の改正と、2024年10月に30年ぶりとなる郵便料金の値上げがその背景にある。調査人数は500人で、調査はインターネット上で行われた。


 それによると、約8割の82%がいわゆるPPAP(ZIPファイルとそれを解凍するパスワードを分けてメールで送信すること)を、受け取ったり送信したりしたことがあると回答している。


 アドビ デジタルメディア執行役員ビジネスマーケティング本部長 竹嶋拓也氏は「PPAPはセキュリティ対策になっていない上に3つの“ダメ”をはらんでいる」と言う。


 「誤送信により、ZIPファイルもパスワードも送ってしまう可能性があること、パスワードの誤送は防げても総当たりでZIPファイルのパスワードを解析されてしまう可能性があること、モバイル環境でZIPファイルを解凍するのが大変なこと」と竹嶋氏は解説した。


 いまだに紙でやり取りされている書類の上位は、見積書と請求書(51.9%)、領収書(46.7%)、契約書などの重要書類(45.5%)と続く。


 紙でやり取りすれば、郵送などの業務が必要になる。書類を郵送している249人を対象に「PDFなどのデジタルファイルも送っているか」の質問に対し、約7割にあたる69.5%が「デジタルでも送っている」と回答している。


 竹嶋氏は「同じ内容のことを2回行うダブルワーク。業務効率化の足を引っ張っている。しかも郵便料金が上がれば、コストアップも避けられない」と危惧する。


 では、なぜ完全デジタル化に移行できないのか。その理由の上位は(複数回答で)「手書き/紙の書類に慣れているから」(32%)、「デジタル処理に不慣れだから」(26%)、「業務が増えてしまう」(26%)というものだった。


 これらは、その企業にデジタル化へ移行する環境が整備されていても、対応したくないという人を救済するものとはならない。竹嶋氏は「デジタル化するツールを、もっと使いやすいものにしなければならないと思いを新たにした」と語った。


 デジタル化の遅れは、採用面にも影響があるという。「デジタル化への対応が遅い会社をどう思うか」という問いに対して「働きたくない」と回答したのは全体の58.2%、20代では64%にも上った。少子高齢化により労働人口が減少している中、デジタル化をしないことは企業の存続を左右する解決しなければならない重要な課題というわけだ。


 業務の中で非効率あるいは無駄だと感じるもののトップは「書類への押印、捺印」(52.2%)で、続けて「メール送信時の定型文」(43.0%)、「紙資料の印刷・配布」(38.6%)となった。


 そこでアドビが提案するのが「Acrobatがあれば、いいんじゃない?」というもの。


 紙で郵送、デジタルで送信という二重送付はセキュアなPDFでの送付で対応し、会議資料は人数分印刷しないでPDF化して配布または共有、捺印などはAcrobat Signで対応できる。


 いわゆる、仕事をしているつもりでも実はムダ、という業務をなくしていこうというわけだ。


●保存済みPDF書類資源を再利用しやすいAI Assistant


 既報の通り、2024年4月15日に米Adobeは「Acrobat AI Assistant」の提供を開始した。そして本イベントで、「Acrobat AI Assistant日本語版」の開発表明がなされた。


 現状、Acrobat AI Assistantでは、最大120ページ(データ容量では最大25MB)のPDFファイルの内容を読み込み、サマリーの作成や内容に関する質問の回答などを行える。しかし、メニューが英語表記なので、ネイティブではない人にとって、さらにデジタルでの作業を手間だと考える人にとってハードルの高いものとなってしまう。


 しかし、メニューや「質問してください(Ask a question this document)」の部分や「回答を生成しています(Generating response)」などが日本語化されていれば親しみやすくなるだろう。何より日本語のPDFを読み込め、日本語で質問でき、日本語で回答を得られる。


 社外初公開となったデモでは、日本語のPDFを学習したAcrobat AI Assistantに岩松健史氏(アドビ デジタルメディア事業統括本部ビジネスデベロップメントマネージャー)が日本語で質問を書き込み、わずかな時間で日本語で回答を得る様子が紹介された。


 岩松氏は、「会議の文字起こしをPDF化すれば、一瞬でサマリーを作成し、会議に出席できなかった人でも短時間で内容を把握できるようになる」と、Acrobat AI Assistant日本語版のメリットを解説した。


 竹嶋氏は、「PDF書類を宝の山としてたくさん保管していても、そのデータをうまく活用できていないという企業は多い。それを有効活用してほしい」と言い、岩松氏は「将来的には複数のPDFから横断的に回答を得られるようにしていきたい」と展望を語っていた。


●「人生の中で一番PDFという言葉を使った」 ミキ 昴生さんと亜生さん


 「私のイチオー業務川柳」最優秀作品や、入選作品を発表するために登場したお笑いコンビ ミキの昴生さんと亜生さんは、「普段、PDFを使っていますか」という質問に対して「マネージャーから台本をPDFで送っておいたよとか、ここ(ゲートシティ大崎イーストタワー)までの地図をPDFでもらったりしたけど、普段の嫁との会話に『あのPDFどうなった?』というようなやり取りをすることはないですね」と笑いを誘いつつ、PDFを連呼し、「人生の中でPDFという言葉を一番使った日なんじゃないの!?」と会場を沸かせていた。


 肝心の私のイチオー業務川柳最優秀作品は「電子書類 印刷手書き 再スキャン」であることがボード上で発表されると、ミキの二人は爆笑しつつ「すごいムダ!」と一喝。なお、昴生さんのお気に入りは「役員の 会議資料は フルカラー」、亜生さんのお気に入りは「空気読み お辞儀ハンコで ヨイショする」だった。


 トークセッションでは、芸人としての「イチオー業務川柳」をそれぞれが発表した。プライベートでも「お兄ちゃん!」と声をかけられれば、元気に「はい!」と応じることをポリシーとしている昴生さんは「お兄ちゃん 声がけされたら 元気にはい!」を、亜生さんは「出番前 西川きよしに 要注意」と後輩思いの大先輩への愛情(?)を川柳にしたためていた。


 竹嶋氏は「ムダな業務を省く代替手段は、当社以外のメーカーからもさまざまなツールが出ている。一人一人の心がけ、また各企業の管理職の人たちの考え1つで変えていけるものばかりなので、それを心に留めていただければ幸いです」と締めくくっていた。


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