NHK、また重要文化財を破損→同じ謝罪コメント繰り返し「社内で情報共有が困難」

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2024年06月14日 21:20  Business Journal

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NHK放送センター(「Wikipedia」より)

 NHKは、撮影中に国の重要文化財を破損したと発表した。隠すことなく公表し、関係各所に報告・謝罪している点については評価する向きもあるが、これまでにもNHKは数回、重要文化財を破損する事故を起こしており、そのたびに同じ謝罪文を発表していることから、「まったく反省がない」と批判の声が噴出している。実際にどのような再発防止策を講じているのかを聞いたところ、その内容にテレビ関係者は疑問を呈する。


 NHKは6月10日、国の重要文化財に指定されている香川県琴平町の「旧金毘羅大芝居」で撮影中に、カメラマンが花道から転落して客席の一部を破損したと発表した。撮影は先月24日に行われたもので、Eテレの番組『芸能きわみ堂』のロケだったという。


 NHKは建物を所有する琴平町など関係者に謝罪するとともに、町を通じて関係機関に報告。出演者や関係者にけがはなく、一般公開や公演などにも影響はなかったとしている。


 国の重要文化財を破損したことについてNHKは、「貴重な文化財を破損したことを深くおわびいたします。関係機関の指導に従い、適切に対応してまいります。改めて文化財の保護を徹底してまいります」とのコメントを出しているが、実はNHKは過去にも文化財を破損したことがあり、その際にも同様のコメントを出しているとして、「反省していない証拠だ」と厳しい批判の声があがっている。


 2003年、NHK大阪から委託を受け『ゆく年くる年』の中継準備をしていた業者が、奈良・東大寺にある国宝の鐘楼に、勝手に長さ約3センチのくぎを打ち付けていた。また、2022年、世界遺産である和歌山・熊野古道で、NHKが許可なく土のうを設置し、路面の一部が破損した。


 さらに2023年4月、朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の撮影中、聖徳太子が開いたとされる国の史跡、滋賀・百済寺の本堂の廊下で床板を長さ10メートルにわたって陥没させている。ダンスの練習をするシーンを撮るために、リハーサルを行っている際のことだった。


NHKの再発防止策に疑問符

 NHKはこれらの事故のたびに、「文化財の保護を徹底する」「再発防止に努める」としてきたが、事故は繰り返されている。そこでBusiness Journal編集部は、NHK広報部に直接話を聞いた。


――今回の事故は『芸能きわみ堂』の撮影中ということですが、当該番組のカメラマンをはじめとしたスタッフは、NHK本体および関連団体の方でしょうか。それとも外部の制作会社などが入っているのでしょうか。


NHK広報局「制作体制の詳細についてはお答えしていませんが、外部スタッフを含めて制作しています」


――これまでにも何度か重要文化財の棄損がありましたが、具体的に再発防止策は講じているのでしょうか。


NHK広報局「改めて、撮影場所で事故が起こらないよう、安全対策をスタッフ全員で事前に確認し、要員を追加するなど安全確保のため態勢の確保も徹底します。全国の放送現場に今回の事案を共有し、改めて文化財の保護を徹底してまいります」


 結局のところ、「要員を増やす」「全国の放送現場に事案を共有する」という以外に、具体的な再発防止策があるようには聞こえない。これではさらに大きな事故も起こり得るのではないだろうか。NHKの関係者は、「そもそも全国のスタッフの隅々にまで情報共有すること自体が難しい」と語る。


「『芸能きわみ堂』も外部スタッフが入っているようですが、NHKの番組の多くで、外部の番組制作会社や派遣スタッフがかかわっています。その外部の方々に情報を共有するのは非常に困難ですし、そもそも全国のNHK職員と関連会社社員にすら情報を徹底することはできないと思います。全関係者が情報共有するためのシステムがあるわけではないですから、各番組の責任者に通達することはできると思いますが、末端にまで情報が伝わる可能性は低いでしょう。そもそも、放送局が違うだけで『別会社の出来事』という認識をしている人が大半なのではないでしょうか」


 国内で撮影をしている限り、国宝、重要文化財、天然記念物、史跡、名跡など、さまざまな国の文化財に接する機会がある。そんな撮影スタッフ全員に意識改革を促すことは困難なのだろうか。


 さらに、別のテレビ局の関係者は、「要員を増やす」という施策にも疑問を呈する。


「今回、カメラマンが花道から転落したということですが、ある意味で文化財を破損したこと以上に注目すべき問題です。カメラマンはファインダーを覗いている際には足元が見えなくなります。また、この番組で使用していたカメラの詳細はわかりませんが、一般的に肩に担ぐタイプの撮影用カメラは7〜8kgの重量があり、ちょっと躓くだけで転倒のリスクがあります。そのため、通常の番組撮影ではカメラアシスタントがカメラマンの導線を確保しますが、それが適切に行われていなかった可能性があります。場合によっては大けがの恐れもある事故です。もし要員が足りず、基本的な安全管理がおろそかになっていたのだとすれば、『芸能きわみ堂』の制作チームは意識が低すぎると言わざるを得ず、人数を増やしただけで問題が解決するとは思えません」


 昨今、番組制作の予算が削られがちな民放と異なり、NHKは多くのお金や長い期間をかけて番組をつくることも可能だ。日本の芸能や文化、伝統を紹介する番組など、視聴率を稼ぐためではない、NHKだからこそ制作できるものは間違いなくある。そのためにも、NHKには襟を正してもらいたい。


(文=Business Journal編集部)


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