「被害者支援に携わりたい」=事件で重傷の古瀬巡査長―大阪交番襲撃から5年

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2024年06月16日 07:31  時事通信社

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高齢者に特殊詐欺などの防犯機能付き電話機の説明をする大阪府警吹田署の古瀬鈴之佑巡査長(手前)=5月27日、大阪府吹田市
 2019年に大阪府吹田市の交番が襲撃された事件から16日で5年となった。包丁で刺され重傷を負った古瀬鈴之佑巡査長(31)が時事通信などとのインタビューに応じ、「被害に遭った人の立場が分かるので、被害者が少しでも楽になるよう支援したい」と語った。事件後、同巡査長が報道機関の取材に答えるのは初めて。

 古瀬巡査長=当時巡査=は、19年6月16日午前5時40分ごろ、勤務する吹田市の千里山交番前で男に左胸や両太ももなどを包丁で複数回刺され、意識不明の重体となった。意識回復後に拳銃を奪われたと知り、「責任を取らなければ」といったんは辞職を決意したという。

 しかし、ラグビーの強豪として知られる佐賀工業高校や東海大でプレーした古瀬巡査長を、当時の恩師たちが「ここで辞めるような性格じゃないだろう」と鼓舞。上司や同僚からの慰留や、回復を祈る全国からの手紙も後押しになり、「もう一度頑張ろう」と翻意した。

 胸の傷は左肺を貫通し、肺の一部を摘出した。「足も切られていたので、歩行もままならなかった」が、リハビリで回復。事件の約5カ月後に退院し、20年1月からもともと所属していた吹田署地域課に復帰した。後遺症や体力の不安もあり、約3年間はデスク業務だったが、23年4月から署外での勤務を再開。同10月から、特殊詐欺の防犯対策で成果を上げている。

 同署管内の特殊詐欺被害は22年から2年連続で府内最悪。吹田市が防犯機能付き電話1000台分の購入費用補助を決めたことから、同署は購入希望者や被害に遭った人、押収したリストに名前があった人を個別に訪問。購入を勧め、承諾を得たら一緒に家電量販店に行き、補助金申請まで手伝う活動を始めた。

 補助金は手続きが煩雑なため、申請が少ないのが一般的だが、活動が功を奏し、今年3月までに約970台の申請があった。古瀬巡査長が関わったのは約300台で最多だった。

 「事件の内容は違うが、被害者の立場になった経験はあるので、その時の気持ちや立場は分かる。傷ついた心をえぐらないような接し方や言い方を考えている」と話す。

 福岡県出身で、もともとは刑事を目指して警察官になったという古瀬巡査長。「自分の経験を生かし、生活安全課の防犯担当として、被害に遭う前や遭った方の支援に携わりたい」と力強く語った。 

時事通信などのインタビューに応じる大阪府警吹田署の古瀬鈴之佑巡査長=5月27日、大阪府吹田市の同署
時事通信などのインタビューに応じる大阪府警吹田署の古瀬鈴之佑巡査長=5月27日、大阪府吹田市の同署

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  • 優秀な警察官ですね。回復おめでとうございます。( ´ ▽ ` )
    • イイネ!21
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