トヨタ・AE86、納車4時間後に火を噴いて炎上、推定原因…珍しくない?

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2024年06月18日 06:00  Business Journal

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「gettyimages」より

「ハチロク(86)」の愛称で親しまれるトヨタ自動車「カローラ レビン(4代目)」の中古車とみられる車が、納車4時間後に大きく火を噴いて炎上したという写真付きのX(旧Twitter)上の投稿が話題を呼んでいる。中古車が納車まもなく炎上して使用できなくなるという事例は、しばしば起こるものなのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。


 ハチロクとはトヨタの車両型式「AE86」を使用した車種を指し、コンパクトスポーツモデルである「カローラ レビン(4代目)」(1983年発売)や「スプリンター トレノ(4代目)」(同)などが該当する。「カローラ」のファミリー系モデルは5代目からFF方式(フロントエンジン・フロントドライブ)を採用したが、スポーツモデルである「レビン」はファンにスポーティな走りを楽しんでもらえるようにFR(フロントエンジン・リヤドライブ)を継続。2ドアノッチバッククーペと3ドアハッチバッククーペの2種類で、エンジンは1.5リッター(3A-U)と1.6リッターDOHC16バルブ(4A-GEU)。85年からは電子制御4速ATのECT-Sが追加された。レビンの4代目はFRの走行特性を好むファンから大きな支持を受け、生産終了後も「ハチロク」として一定の人気を誇った。


「レビン」シリーズは2000年に生産を終了したが、ライトウェイトFRスポーツカーの復活車として12年に発売された新車種は「86」と名付けられた。21年にはフルモデルチェンジされた「GR86」が発売され、現在に至る。そのため、いわゆる「ハチロク(86)」と現在の「GR86」は基本的には別物だととらえられている。


完全には避けようがない

 そんなハチロクの中古車を購入したXユーザーが、「納車してオーナー時間約4時間、ae86楽しかったよ…」という文章とともに、車体全体が大きな火を噴いて激しく燃え上がる写真をポスト。投稿者は煙が上がっているのを見て車から降りたところ、燃え始めたとのことで、「今の所原因分かってないので、警察とその後にトヨタに調査してもらうらしいです」と綴っている。


 一般的に、衝突事故など外部から衝撃を受けること以外が原因で、車が炎上するというケースは、しばしば起こるものなのか。中古車販売店経営者で自動車ライターの桑野将二郎氏はいう。


「総務省消防庁刊行の『令和5年版 消防白書』によると、令和4年の総出火件数3万6314件のうち、車両火災は3409件と全体の10%近くを占めています。衝突事故などで衝撃を受けていないのに発生する車両火災というのも、けっして珍しいことではなく、過去に今回の事故と同じAE86が高速道路で突然炎上したというニュースが流れたこともあります。旧車の場合、どうしても経年劣化による整備不良やトラブルを完全には避けようがないところもあり、オーナーも日頃からかなり気を付けているのではないでしょうか」


考えられる原因

 納車4時間後に、このような事故が起きた推定原因としては、どのような内容が考えられるのか。


「車両火災の原因として最も多いのは、過去何年にもわたってマフラーやエキゾーストマニホールド(排気管)にガソリンやオイルなどの着火物が漏れ落ちて発火するというケースで、自動車の構造上、いくら予防策を講じても経年劣化や整備不良などさまざまな要因で起こってしまいます。また、熱エネルギーを制動力に転換するブレーキシステムも、高温にさらされることから、ブレーキフルードの漏れや異物の巻き込みなどで発火する例が多く見られます。


 次に多いのが、電気系のショートによる発火です。バッテリー端子が緩むことでショートが発生し、火災の原因になったりするケースです。最近は通販で購入したナビやドライブレコーダーなどをDIYで取り付けた際に、配線の加工や取付方法が悪くてショートした、などという例も増えているそうです。さらに、車内に置かれたライターやタバコ、スプレー缶やペットボトル飲料などを炎天下の中で長時間放置することで、火災が生じるケースも報告されています。しかし車両火災で調査をしても原因が不明という事例が最も多く、偶発的な火災が多いのも事実です。なかには、リコール対象の車両も含まれており、改修が未対策なために発生したと考えられるケースも見受けられます。


 今回のAE86の車両火災は、納車後4時間で発生してしまったということですが、原因が整備不良によるものなのか、偶発的な原因によるものなのかは、情報が少ないのでなんともいえません。ただ、私も過去にAE86を所有していて怖い目に遭ったことがありまして、燃料タンクがボディの後ろ側にあって、前側のエンジンまで繋がる燃料パイプの部品が製造廃止になっており、経年劣化していても完全な交換修理が難しいことから、加工流用で修理していましたが、パイプの一部より燃料が漏れて車内にガソリン臭が充満し、フラフラしたという経験がありました。この漏れ出た燃料の垂れ落ちた先が悪ければ、火災になっていたかもしれません。


 こういったケースは、エンジンをかけて運転を始めてから数十分でも発生します。納車直後の4時間で火災に見舞われたのは不運としかいえませんが、写真を見た印象では車内が激しく燃えている様子なので、燃料パイプからのガソリン漏れが発生していたり、車内にライターなどがあると一気に燃えてしまいますし、電気系のショートも発火の元になります。旧車ですからオイル漏れやクラッチの焼損なども含め、いろんな原因が考えられます。


 また、写真ではボンネットが開いた状態なので、異常を感じてクルマを停めてボンネットを開けたところ発火した、ということも考えられるので、エンジンルーム側から室内へ延焼していったとすると、オイル漏れや燃料漏れでしょうか。いずれにしても、希少価値も人気も高いAE86が燃えている写真には、クルマ好きとして心が痛むばかりです」(桑野氏)


(文=Business Journal編集部、協力=桑野将二郎/自動車ライター)


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