石川真佑は「燃えていた」 課題を突きつけられたネーションズリーグで得たものとは

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2024年06月18日 10:40  webスポルティーバ

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 ネーションズリーグ女子バレーボール予選ラウンド福岡大会で、石川真佑は清冽な躍動感を放っていた。集中して射抜くような目が、弾けるような優しい笑顔になる刹那、彼女を中心に世界が華やぐ。

 スパイクで相手を仕留める。それは黒か白かのやり取りと言えるか。そのヒリヒリした感覚が、彼女のようなアウトサイドヒッターを魅力的に映す。ハムストリングの爆発力で宙に浮かび、背筋を反らし、腕を振り上げ、まるで全身を弓と化し、急所を貫くように矢を打ち込む。空中で止まった時、打つべき筋が見えるのか。若さに似合わぬ老獪さで、駆け引きを楽しんでいるようだ。

 1本のスパイクに生き方は投影される。決めるべき一撃を外す――それは矜持が許さないのだろう。

 途中交代を命じられたカナダ戦後と、快勝の立役者になったセルビア戦のはざまに、彼女の真実があった。

「悔しさもあったなかでの試合で、自分もしっかりと(点を)取りきろう、と思っていました。今日は全体的によかったと思います。打ちきるだけじゃなくて、ブロックを利用して打てていたので」

 セルビア戦後、そう石川は言った。敵を仕留めた恍惚が浮かんでいた。

 今大会、石川は日本代表で、エースの古賀紗理那に次ぐ得点を記録している。期待に十分、応えたと言える。もっとも、試合によっては忸怩たる思いがあったはずだ。

 パリ五輪出場がかかったカナダ戦、石川は1セット目、順調に得点を重ねた。しかし、2セット目の途中からスパイクが決まらず、3セット目以降は出場機会が与えられなかった。チームはフルセットの末に逆転負けを喫し、試合後の得点計算でからくも五輪出場が確定したが、石川は雪辱を晴らす機会を待ち望んでいたはずだ。

――ケガでもなかった石川選手を、なぜ途中から外したのですか?

 カナダ戦後の監督会見では、そんな質問が出た。

「スパイク決定率が一番低かったから代えました。以上」

 眞鍋政義監督のコメントは、スパイクを決めることが宿命であるアウトサイドヒッター、石川の自負心を刺激し、奮い立たせる計算もあったのか。

【雪辱を晴らしたセルビア戦】

 そして次のセルビア戦、石川は気力に満ちていた。イタリア、セリエAで磨いたブロックアウトさせる技術で得点を重ねていった。あるいは、ブロックに阻まれても、自ら粘り強く拾ってスパイクを撃ち抜いた。高速のバックアタックも、チームに選択肢を与えていた。長いラリーの末にレフトから撃ち抜くシーンもあった。最後は相手をサーブで崩し、レシーブで拾い、古賀のスパイクにつなげた。

 石川はチーム最多の17得点を記録し、ストレートでの勝利に貢献している。

「個人的に悔しさがあって、しっかり(力を)出しきる、というのだけ考えていました」

 試合後、石川はそう明かしていた。高さが使えないなら、タイミングをずらし、最後まで相手の動きを見極める。それで道は開ける。敵はブロックアウトに地団駄を踏む。

「自分が得点を取りきらないといけないし、そのパフォーマンスはもっと上げていきたいですね。今日は結果につながってよかったですけど、セルビアだけじゃなく、上位のチームと対戦してもやれるように。自分が結果を出すことがチームに大事になってくるので、よかったところはありますが、もう少しできることもあって」

 彼女は現状に少しも甘んじていなかった。

「カナダ戦で負けてしまったので、勝つ姿を見せられてよかったです」

 セルビア戦後、五輪出場を記念するセレモニーがコート上で行なわれるなか、石川はテレビのマイクに向かって言った。前で手を組み、邪気のない笑顔で答えた。しかし、雪辱を晴らした自負心も滲む。

「(石川が)怒っていた? どうですかね、そこはあまり興味ないんで(笑)。でも、燃えていたかな。集中していたんじゃないですか?」

 セルビア戦後、古賀はそう洩らしていたが、同じポジションの"同族"の言葉はひとつのヒントだろう。静かな怒りは心を燃やす。それはアスリートで言うゾーンに入ることにもつながる。トップ選手はその領域で、成長を超えた進化を遂げるのだ。

 石川は、そんなプロセスにあるのかもしれない。

 福岡大会、ラストマッチのアメリカ戦では、東京五輪で金メダルの相手に課題を突きつけられた。ディフェンス力の高さと"火力"が違うスパイクを見せつけられ、ストレート負けだ。

「アメリカはサーブがいい選手が多かったですが、感覚は悪くなかったところで、(レシーブが)浮いてしまってミスが続いていました。触っていたのに上げられなくて......」

 石川は口惜しそうに言った。

「(ネーションズリーグでは)試合をやるたび、課題が見えてきました。1週目(トルコ、アンタルヤ大会)、2週目(中国、マカオ大会)と、後半になるといいパフォーマンスを出せない、というのが多くて。アメリカ戦も、コンビが合わない、精度が下がる、というのは感じました。連戦が続いたところで、自分たちで修正できるように(しないといけない)」

 アメリカ戦の石川は、劣勢のチームで最多13得点を記録した。第3セット、13−11でリードした場面では、高速バックアタックも成功。堅牢な守りを組むアメリカに果敢に挑んでいた。

「もっと(スパイクの)精度を上げられるはず」

 石川はそう言って、向上心と探究心に突き動かされている。強打だけでなく、ブロックを見極め、タッチして落とす。道筋が見えたら、彼女の勝ちだ。

 ネーションズリーグ、ファイナルラウンド準々決勝は中国との対戦が決まった。勝利も敗北も糧に。パリに向け、石川のスパイクが閃光を放つ。
  

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