「資格取ったら最大1000万円超」──予算はどう調整? KADOKAWA人事に聞く裏側

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2024年06月19日 07:51  ITmedia ビジネスオンライン

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KADOKAWA、資格を取得した社員へ支援金を支給

 海外MBAを取得したら1000万円超、国内MBAなら500万円。弁護士、弁理士、税理士、公認会計士は1000万円──。


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 KADOKAWAは社員の自律的なキャリア形成を推進するため、資格を取得した社員へ支援金を支給している。2022年3月にスタートさせた制度を、2025年5月1日から拡充。対象の資格を拡大するほか、支援金の上限を100万円から1000万円超へと大幅に引き上げた。


 最大1000万円超という高額な支援金に注目してしまいがちだが、資格取得のための費用負担ではなく、あくまで合格後にお祝い金のような形で支給することも特徴だ。講座費用や参考書代の補助など、資格取得やスキルアップのプロセスに対し投資する企業が多い中、なぜ「合格してから」の支給としたのか。また、予算についてはどのように調整したのか。


●人事が語る、予算調整の裏側


 グループ人事局の泉谷智朗氏は、合格後の支給とした訳を「結果を出した人に報いたい」と説明する。プロセスではなく、あくまで結果にフォーカスした。支給金の額については資格取得に必要な勉強時間などを参考に設定した。


 運用に当たって、予算面はどう調整しているのか。これまでに349件の利用があり、合計2357万円を支給したが、1件当たりの支給を最大1000万円超にまで引き上げれば、年当たりの支給額は安定しないと予想される。


 泉谷氏は「予算を切り離して実現した面がある制度」だと明かす。詳細な開示は避けつつも、固定的な予算組みはせず、福利厚生に近い枠で用意したと説明する。


●キャリア自律のための取り組み


 同社ではキャリア自律のため、さまざまな制度を用意している。副業やeラーニングのほか、社員自らが中長期、また部署横断でのプロジェクトを提案できる「プロジェクト公募」の取り組みがある。


 「プロジェクト公募」ではこれまでに、編集未経験者が企画から校了までを担う「いきなり編集長プロジェクト」や、育児手当の期間の改定などを提案・実現した「HRプロジェクト 子育て支援」などの企画を生み出してきた。企画を提案し、賛同するメンバーを募り、チームを組成し……と、一連のプロセスは全て社員に委ねられる。挑戦と自律を後押しする制度だ。


 また2021年度に開始した、社員が希望部署に応募できる「フリーエージェント型異動制度」も、人事制度の目玉の一つだ。2023年12月までに213人の異動を実現させた。


●制度の組み合わせで、新しいチャレンジも


 制度を組み合わせて活用するパターンも想定できる。今回拡充された資格取得支援を機に専門知識を身につけた上で、フリーエージェント制度を利用してその知識を活用できる他部署に異動する──といった利用もあり得る設計だ。


 「フリーエージェント制度と合わせて、同じ会社にいながら新しいチャレンジができるようになっている。主体的に学び、自律的にキャリア形成できる社員が増えることを期待している」(泉谷氏)


 制度を開始してから約2年。IT部門の社員がIT系の資格取得に活用するような「スキルアップ」としての利用もあれば、例えば総務部門の社員がIT系資格を取る「リスキリング」のような事例も見られるという。


 ただし、泉谷氏は必ずしも業務に直接的に生かすべきとは考えていないと補足する。


 「取得する資格によっては、必ずしも業務に直接影響するものではないかもしれないが、それでいいと考えている。努力して成功体験を積む人は、KADOKAWAで活躍してもらえる人材だと信じている」(泉谷氏)


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