富士通の27歳エース社員、1年目で花形部署に異例のヘッドハント 信条は「3カ月で成果出す」

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2024年06月19日 07:51  ITmedia ビジネスオンライン

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富士通の27歳エース社員に聞いた

 「入社1カ月後に異動希望を出しました。まだ実務が始まる前でしたが、最善手だったと思っています」──富士通の寺島眞生さん(クロスインダストリーソリューション事業本部 Digital Shifts DI Platform事業部)は当時を振り返る。


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 2021年、寺島さんは富士通のグループ会社に新卒で入社した。まさかの研修期間中に異動希望を提出し、社内のハッカソンを経て現在の部署にヘッドハント。その後、東京都主催のハッカソンに参加し、60チームの中からファイナリストに選出された。当時、24歳。新卒1年目の出来事だ。


 新卒2年目からは、同部署で顧客のDX戦略の立案から実行を担っている。自動車や製造などさまざまな業界における顧客のDX課題の設定からデータの統合、ソリューションの提供というゼロイチを約3カ月のサイクルで回し続けている。


 DX課題は業界や業種によってさまざまだ。1年かかっても成果が出なかったり、3年がかりでやっとソフトウェアの整備が整ったりと、長期化するプロジェクトは少なくない。


 「プロジェクト開始3カ月に重きを置いています。そこでプロジェクトの道筋を定めるだけでなく、課題に対するアウトプットも出す。そこで私自身は身を引いて、別のプロジェクトでゼロイチに挑戦します」


 異例の新人のキャリアと短期間で成果を出し続けるために意識していることを取材した。


●社内の注目部署に異例のヘッドハント 新卒配属はまれ


 現在は本社で活躍している寺島さんだが、新卒ではグループ会社に入社した。「グループ会社のミッションは全社の社内基盤の整備といった事業で、縁の下の力持ち的な役割でした。当時、富士通グループ全体でバラバラになっているシステムを統合し標準化するというプロジェクトが立ち上がる予定だったので、それにチャレンジしたいと思っていました」と、振り返る。


 しかし入社後に、システム統合の話はグループ会社のプロジェクトから本社プロジェクトに変更になってしまった。


 「希望の業務に関われなさそうだったため、異動希望を出しました。会社としてポスティングを活発に行える仕組みづくりをしていることと、本配属前というタイミングが重なり、異動のチャンスを掴めました」


 異動を目指し、ERPやCRMについて学ぶ社内の研修プログラムに参加した。並行して挑戦した社内のハッカソンが、寺島さんのキャリアの転機となった。


 ハッカソンでは「データを活用し、新しいインサイトや企業価値向上につながる提案」がお題として出された。寺島さんはコロナ禍で自身が好きだった飲食店が閉店した経験から、飲食店の出店希望者をサポートする案を発表。


 「この案を出すにあたり、社内の有識者と価値を提供できるサービスになっているかについてディスカッションしたり、社内の営業経由で飲食店経営者にヒアリングしたりしました」


 時流に合致した共感性の高い課題設定が評価されたのはもちろん、それ以上に、エビデンスを収集する力と、課題設定からソリューション提案を1〜2カ月で成し遂げた点が高い評価を得て、社内でも注目度の高い部署にヘッドハンティングされた。


 部署異動後、東京都が社内ハッカソンと似たテーマでハッカソンを開催することを知り、参加することに。「事業の卵」をビジネスとして継続させるために行政を巻き込んだ提案にブラッシュアップした。


 約4カ月という期間の中で提案を磨き、60チームの中からファイナリストの5チームに選出された。しかし、実現可能性の観点からサービス化は断念。その理由を、寺島さんは以下のように話した。


 「サービスとしての理想の形をディスカッションする中で、行政にヒアリングをしたり、調査をしたりしました。結果、現段階の行政の仕組みでは実行が難しいことが分かりました。行政には、まだまだ縦割り文化が残っています。そこが変わらないと実現しないモデルで考えていたので、実現までにかなりの時間がかかってしまうと思いました」


 サービス化には至らなかったが、行政からは「新規出店のハードルが下がる魅力がある」「行政のオープンデータを活用するということで、飲食店と都の新しい関係づくりの可能性を感じられた」といった好評を受けた。


 寺島さんは、濃密だった新卒1年目を「全部楽しかった。自分が社会に貢献できる実感を持てた」と振り返りつつ、自身の課題にも触れた。


 「今の世の中で何か課題を解決するには、ビジネスとして成立させる必要がある。そうしないと、本当の意味での課題解決につながらないと学びました。また、今回のチャレンジを通してデータが持つ価値を再認識できました。データの力で解決できる問題があることが分かったので、今の部署で引き続きデータ分析をやっていこうと思いました」


●「3カ月で成果出す」 なぜこだわる?


 その言葉通り、寺島さんは現在もDI Platform事業部で顧客のDXに向き合っている。業界や業種によってDX課題は異なるため、顧客にヒアリングしながら課題を特定し、データを踏まえた分析やプロダクトを開発する。


 冒頭で紹介したように、寺島さんは3カ月で成果を出し、別のプロジェクトに移るというゼロイチの役割を部署内で担っている。


 「先輩社員との経験の差を埋めたくて、3カ月で成果を出すという意識を持っています。技術面やプロジェクトマネジメントの観点で経験の差を感じることが多く、さまざまな業界・業種のお客さんと仕事をして経験を積むことで、実力と勘所を磨いこうと考えていました」


 実務に関わるようになって約2年、先輩社員に対して感じていた経験の差はかなり解消された実感があるという。一方「まだ課題はたくさんあります」とも話す。


 「まだまだ経験が足りないと思っています。成功・失敗体験を積むことは、自分の中で勝ち筋や次の課題を見つけることにつながります。そういう機会を増やしていきたいです」


 新卒1年目の突飛な異動希望から、花形部署への異動を経験した寺島さん。データの価値や面白さを再認識し、現在も前のめりで業務に取り組んでいる。今後のチャレンジについてはどのように考えているのか。


 「現在はプロジェクトとして1社の企業に向き合うことが多いですが、最終的には1つの企業に閉じずに多くの企業や行政などを巻き込みながら、より大きな課題を解決できるエコシステムを構築したいです。当社は多くの企業と付き合いがあるため、つなぎ役に適していると思います。仕事を通じて、私のビジョンでもある、『ワクワクするような世界を自らが作りだし、友人や家族、仲間とシェアしていく』という世界を実現できたら最高だなと思っています」


 新卒4年目、27歳の挑戦は続いていく。


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