「投資やビジネスで失敗」「住宅ローンが終わらない」老後も“借金苦”になるシニアが増えている

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2024年06月19日 09:31  日刊SPA!

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人生100年時代。「人生最後の職場を探そう」と、シニア転職に挑む50、60代が増えている。しかし、支援の現場ではシニア転職の成功事例だけでなく、失敗事例も目にする。が、今回はシニアの借金事情を解説する。
年金だけでは足りない「老後2000万円問題」が話題となってからだいぶ経つが、貯蓄どころか多額の借金を抱えるシニアも少なくない。いったいどんな借金を抱えてシニアたちは働くのか、ジャンル別に紹介する。

◆2000万円の貯蓄どころか多額の借金?

シニア就業に関する取材では、「シニアが働く理由」をよく質問される。生々しい話だが、やはり第一に挙がるのは「お金」だ。

もちろん、やりがいやプロとしての使命感から働き続けたいというシニアもいる。しかし、やりがいなどがあれば、お金はまったく関係ないというシニアはいない。世の中のどこかにいるのかもしれないが、そういったシニアは仕事探しや求人応募はしない。きっとボランティアや自分で起業などをしているのだろう。

お金を得るために働くといっても、得たい金額や経済的な背景とその深刻度合いはシニアによって異なる。働かなければ生活が成り立たなくなるシニアから、十分な年金や貯金があり、自分の趣味などのためにプラスαのお金が欲しいシニアまで様々だ。

中には多額の借金を抱えたシニアも珍しくない。老後の資金が2000万円足りない「老後2000万円問題」がかつて話題となったが、貯蓄どころか2000万円以上の多額の借金を抱えたシニアもいるくらいだ。

今回はそんなシニアの借金事情の一部をご紹介しよう。基本的に仕事を案内する際には、シニアの借金などの話題には立ち入らないが、たまたま事情を聞いた中から、代表的なケースや特徴的なケースを紹介する。

◆老後も住宅ローンを返し続ける時代

圧倒的に多いのは、住宅ローンが残っているというケースだ。これはシニアに限らず、全世代に共通して多い借金の種類であろう。

住宅ローンは金額も大きく、返済期間も長いため、60代以上でローンが残っていると聞くと返済が大丈夫なのか心配に思ったり、また、そんな年齢でも返し終わらないローンが組めるのか不思議に思ったりする人もいるかもしれない。しかし、ローンを完済する年齢は上がってきているし、60代でも条件が整えばローンが組める。

住宅金融支援機構の「2022年度フラット35利用者調査」によると、フラット35の利用者の2022年の平均年齢は42.8歳となり、前年から1.3歳上がり、10年前の2012年からは3.9歳上がっている。晩婚化の影響が大きそうだが、他にも仕事や収入が安定しないことで、若いうちには住宅を購入しづらい背景もありそうだ。

ちなみに借入時の年齢上限は70歳、完済時の年齢上限は80歳などの金融期間が多いため、頭金を増やすなどして返済期間を短くしてその他の条件もクリアできれば、60代でも住宅ローンが組める。他にも二世帯住宅などを親子リレーローンや親子ペアローンで建てるなど、シニアでもローンを組める手段が意外なほど多くある。

ただし、ローンが組めて、与信が通ったとしても、実際の返済は別問題。収入が減る、病気や介護などで大きな出費があるといったことで計画が狂えば、返済が苦しくなる場合もあるため、余裕のある返済計画を立て、繰り上げ返済を目指すことが重要だ。

実際に、役職定年や定年・再雇用などを経て、思った以上に給料が下がったことで返済が苦しくなり、これまで勤めた会社からもっと待遇のいい仕事への転職を考えるシニアも多い。

◆コロナ後激増?ビジネス・投資の借金

最近多いのがビジネスで借金を背負ってしまったシニアだ。ビジネスだけでなく、投資に失敗して借金を負ったシニアも増えているので、併せて解説しよう。

ビジネスによる借金は、コロナ禍による直接的なものや、それ以降のゼロゼロ融資の返済、猶予された社会保険料の納付などに関連して増えた印象がある。実際に、私たちが就職を支援したシニアの中にも、他に自分が経営する会社があったり、個人事業主として活動したりしながら、コロナ後の苦しい状況から他の仕事を掛け持ちするシニアもいるし、自分の会社を閉業して就職活動をするシニアもいる。

また、中には退職金を元手に起業したものの、失敗して借金を背負ってしまったケースもある。これと似たパターンで、退職金やそれまでの貯金を増やそうと投資にチャレンジした結果、資産を使い果たして借金まで作ってしまうシニアもいる。

株の現物取引では投資した分の価値がゼロになっても、借金にまではならないが、先物取引やFXの場合は投資分を上回るマイナスになり、借金を作ってしまう場合がある。また、不動産投資は初期コストが高く、借り入れをする場合もあるため、利益が出ないと借金返済に苦しむことになる。

コロナ禍は仕方ないとしても、起業や投資の失敗には十分気をつけたい。この2つでは、十分な準備と慎重な計画があれば回避できる失敗もある。

何かの実務では右に出るものがいないプロフェッショナルのシニアだったとしても、経営や他部署の業務が得意とは限らない。経営判断を誤る、営業が得意ではないなど、起業によって得意領域以外も自分でやる必要が生じ、そこでの失敗の結果、事業が立ち行かなくなることも多い。投資も同じく、慣れない人が知識や準備が不足したまま大きなリスクを取ったことで、深刻なダメージにつながっていそうだ。

◆子供の扶養が続く60代も多い

住宅ローンやビジネス以外にも、趣味や車などで借金を抱えているシニアがたまにいる。また、必ず借金があるわけではないものの、子供のためにお金が必要なシニアも少なくない。

60代でも子供を扶養している、大学生の子供がいるといったシニアの話は頻繁に聞く。これには晩婚化の影響もあれば、離婚して連れ子のいる新しい配偶者と結婚した場合や、新しい配偶者との子を高い年齢で設けた場合などもある。

教育ローンなどを組んだ場合には、借金を抱えてしまうし、そうでなくても子供を養い、学費を払うには大きなお金が一定の期間必要になる。長く働けて条件の良い職場を探す強い動機となるだろう。

いずれにしても、50歳くらいをピークに、それ以降、給与は下がりがちになる。役職定年や定年での下落幅は大きく、40代以前の資金計画が大きく狂いやすいので注意が必要だ。

転職を考えても、転職市場での給与相場も年齢とともに下がり、また、体力も低下していくため、評価と給与を上げるのは簡単ではない。給与や体力の低下を織り込んだ、慎重なキャリアや資金の計画が求められる。

逆に60代で余裕を持った暮らしや仕事ができているシニアを見ると、一部の高所得者は別にして、しっかりとキャリアや資金の計画を立ててきた人が多いことに気づく。配偶者を早くに亡くして、一人で子供を大学に行かせても、余裕を持って趣味にも時間をかけられる60代を送っているシニアもいる。

挑戦が悪いわけではないが、キャリアと資金の計画は慎重に立て、余裕のある老後を過ごしたいものだ。

【中島康恵】
50代以上のシニアに特化した転職支援を提供する「シニアジョブ」代表取締役。大学在学中に仲間を募り、シニアジョブの前身となる会社を設立。2014年8月、シニアジョブ設立。当初はIT会社を設立したが、シニア転職の難しさを目の当たりにし、シニアの支援をライフワークとすることを誓う。シニアの転職・キャリアプラン、シニア採用等のテーマで連載・寄稿中

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