「XREAL Beam Pro」実機レビュー 格安3Dカメラになるスマホ型デバイスが日本でも登場 CEOにも狙いを聞いた

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2024年06月19日 13:01  ITmedia PC USER

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【画像】新たに発表された新デバイス「XREAL Beam Pro」

 ARグラス市場で存在感を示すXREALの新作がスマートフォン型デバイス「XREAL Beam Pro」だと知って驚きました。一体どのような性能を持っているのか、スマホ型にした狙いとは──実機のレビューやCEOインタビューを通じて、その実態に迫ってみました。


【その他の画像】


●とがった仕様のスマホ風デバイス、なぜ開発?


 2017年にNrealという社名で創業した現XREALは、2019年のCESでMRグラス「Nreal Light」を初公開してから、小型、軽量、低価格なAR/MRグラスの開発、生産に取り組んできました。


 しかし、PCやスマホと有線接続するモデルのみであったこと、そして現行の最上位モデル「XREAL Air 2 Ultra」を空間コンピューティング用ディスプレイとして使う時に組み合わせるデバイスが極めて限られていたことから、レファレンスとなる母艦デバイスが強く求められていたそうです。


 そして2024年6月19日、「これとXREALのARグラスさえあれば、立体コンテンツも作れるポケッタブルなAR環境が整う」として新たに開発されたXREAL Beam Proが日本でも発表されたというわけです。


 価格はメモリ6GB+ストレージ128GBのモデルが3万2980円、8GB+256GBのモデルが3万9800円(いずれもW-Fiモデル、税込み)となっています。


 テスト機を事前にお借りして試してみましたが、これがなかなかにとがった仕様のAndroidデバイスで興味深い。同社のARグラスやAppleの「Vision Pro」、Metaの「Quest 3」など、他社製XRヘッドセットがあってこそ生きる、他メーカーにはない独特の機能を持っているのです。


●シンプルだけどインパクトのあるデザイン


 まずはXREAL Beam Proの基本的な仕様をチェックしてみましょう。


 XREAL Beam Proは、OSにAndroidを採用するスマホ型デバイスです。外観上でもっともキャッチーな部分は、やはりメインカメラでしょうか。3D写真や3D動画が撮影できます。ゆえに背面にある2つのカメラレンズはどちらもメインカメラという位置付けです。


 2つの眼で撮影した写真や動画をARグラスやXRヘッドセットで見ると、その視差から立体の空間表現を楽しめます。


 レンズは50mmほど離れた場所に配置されていますが、これは人間の瞳孔間距離(IPD)に近づけるためのレイアウトとのこと。眼前にある被写体だけではなく、ポートレートの距離にある人物や物体も立体的だと感じ取れるコンテンツが作れます。


 サイドボタンは3つ。差し色ともなっている一番上の赤色のボタンは標準カメラアプリの起動ボタン、シャッターボタン、っしてXREAL Air 2シリーズ接続時の画面固定(3DoF)モード/視線追従(0DoF)モードの切り替えボタンとして機能します。続いてボリュームボタン、電源ボタン。指紋センサー、顔認証機能の類いはありません。ロック解除時はパスコードの入力が必須です。


 底面にあるUSBポートは写真右側が充電用、写真左側がXREAL Air 2シリーズ接続用です。なお、PCと接続してファイルをやりとりする際も、右側のポートを使用します。


●必要な情報が分かりやすいホーム画面の構成


 最上部のウィジェットは連携しているXREAL Air 2シリーズの設定画面を呼び出すものです。2つの丸印が入ったウィジェットはカメラ起動用で、その横には残りのストレージ容量を示すメーターが配置されます。


 どことなく「Nothing OS」をほうふつとさせるデザインですが、それはさておき、Googleサービスの各アプリアイコンが並んでいる点に注目です。Googleとライセンス契約を結び、導入直後からGoogleモバイルサービス(GSM)が使えるデバイスとなっています。


●XREAL Air 2シリーズと合わせてプチ空間コンピューティングを実現


 XREAL Beam Proと合わせてお借りしたXREAL Air 2 Proを接続すると、XREAL Air 2 Pro側には空間コンピュータモードのランチャー画面、XREAL Beam Proには空間マウスの画面が表示されます。


 ハンドトラッキングが可能なXREAL Air 2 Ultraと接続すれば、拡張空間内のアイコンやウィンドウを指でタップ、ピンチ、フリックして操作できます。


 面白いのが、YouTubeの映像を見ながらブラウザ側を操作するといった、インストール済みのAndroidアプリを2つまで起動できることですね。Androidのマルチウィンドウ機能は以前から提供されてきましたが、ARグラスで見ることによって、Vision ProやQuestのような空間コンピューティングの一部を体感できます。


 ARグラスはその構造上、XRヘッドセットよりも視野が狭いのですが、低価格でそこそこの体験、開発環境を整えられるメリットはあると感じました。


●価格を考えたら3Dカメラの性能は良好


 純正のカメラ機能では2Dビデオ、2D写真、空間(3D)ビデオ、空間(3D)写真の撮影が可能です。なお空間系コンテンツは横位置での撮影が求められます。


 空間系コンテンツのアスペクト比は16:9で、データは2つの写真・映像が横に並ぶサイドバイサイド方式で記録されます。これは最も普及している方式で、不要なシーンのカット編集や切り抜き、フィルターなどの効果は標準ビュワーで行います。


 なおVision Proで見るためのApple純正空間ビデオフォーマットに変換する際は、「QooCam EGO spatial video and photo converter」を用いるようです。Vision Proを個人所有していないためここは未確認ですが。


 またXREAL Beam Proで撮った空間ビデオをYouTubeにアップロードすると、立体映像だとは認識してくれませんでした。YouTubeのヘルプを見ると3Dメタデータの追加が必要な模様です。現時点ではPC経由でなくてはアップロードできないのかもしれません。


 立体表現は、ポケットサイズの格安3Dカメラと考えると良好です。ただし、いろんな波長の光源が入り交じる場所ではホワイトバランスが安定しないこと、そしてセンサーサイズの小ささから、暗い場所での撮影品質にもやや難があると感じました。純正カメラアプリの品質向上を期待したいところです。


 ハードウェア情報をまとめて表示してくれるアプリ、CPU Xでカメラのデータを見ると12.59MP(1259万画素)と表示されていたので、クロップ&電子手ブレ補正の分を含めてこの画素数で映像を記録しているのだろう、と感じたことも記しておきます。


●「Snapdragon 6 Gen 1でも十分にARを楽しめる」


 XREALのチー・シューCEOが来日したタイミングで、XREAL Beam Proのお話を聞いてきました。開発の背景には、XREAL Air 2シリーズの母艦デバイスが必要だったこと、ARグラスをより楽しむためのコンテンツをユーザー自身が作れる環境を提供したかったことの他に、「映画やライブ配信、Androidのゲームも、クラウドサービスでリッチなPCゲームもARグラスで楽しんでほしいという気持ちがありました」といいます。


 そういったユースケースから、XREAL Beam Proのプロセッサとして選択したのがSnapdragon 6 Gen 1とのこと。スペックリストを見たときに「ミドルクラスのなかでも下位グレードのSoCで大丈夫だろうか」と思ったのですが、確かにエンタメを楽しむなら十分な性能でした。


 負荷の高いバトルロワイヤルゲームの「PUBGモバイル」を起動してみると、HDクオリティーでも十分に戦えるだけのフレームレートが出ている様子でした。同じく高負荷なソーシャルコミュニケーションアプリである「VRChat Mobile」では、39人ものアバターが集まっている混雑インスタンスでもパーティクル演出が多いワールドも快適に動けました。Wi-Fi 6E/6GHz帯を使えばクラウドゲームで遊ぶときの遅延も感じ取れないほどです。


 さすがに4K+4Kの空間ビデオのデータ量を記録しつづけられる処理能力はありませんが、ユーザーの要望が集まれば、ハイスペックなXREAL Beamも考えていくとのこと。そうなれば生成AI由来のサービスとの連携力が高まるでしょうし、ARグラスの活用シーンがさらに広がっていくのでしょう。


 「第一世代としてリリースしたXREAL Beamは小さなモバイルバッテリーのような形状でした。第2世代のXREAL Beam Proはスマートフォンに似た形にしました。ここから進化していくことで、いつかはARグラスにXREAL Beamの機能とバッテリーを収めて、スタンドアロンのARグラスとして勝負していきたいですね」(チー・シューCEO)


 現時点では、リーズナブルな3DカメラともなるXREAL Beam Pro──ユーザーにはどんなコンテンツを作ってほしいと考えているのでしょうか。


 「まずは自分の生活を3Dで記録する楽しさを味わってほしいですね。また旅行先でも積極的に空間ビデオを撮ってほしい。空間ビデオはその場にいた自分の驚き、感動をシェアすることができるポテンシャルがありますから」(チー・シューCEO)


 Appleが提唱し、iPhone 15 ProやVision Proで撮影できる空間ビデオとは異なるデータ方式となりますが、立体映像そのものが増えていく未来をXREAL Beam Proで支えていきたいとも言います。


●3D表示デバイスが増える未来を夢見ているなら


 1週間ほどではありますが、XREAL Beam Proを使ってみて感じたこと──それは、メインのスマートフォンを置き換えるような存在ではないと実感したこと。タッチ決済など、日本で強く求められている機能がないこともそうですし、OSの挙動も怪しいところがあります。


 しかし、最新の3Dカメラという独特の機能を持っていることは大きな魅力です。ARメガネやXRヘッドセットが普及する未来が、いつやってくるのかは分かりませんが、その時代に先駆けて3Dコンテンツを増やしておきたい、と考える人ならば導入すべきデバイスであることは確か。いっちょ、賭けてみる価値はありそうです。


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