ホンダの新型「フリード」は何が変わった? 開発責任者に聞く!

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2024年06月20日 08:10  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
ホンダの新型「フリード」がもうすぐ発売となる。ハイブリッドシステムの刷新により、乗り心地や快適性、環境性能などが現行型と変わっていることは試乗して体感できたが、内装をはじめ、新型フリードには現行型との違いがまだまだあるはず。このあたりを開発責任者の安積悟BEV開発センター統括LPLと開発メンバーに聞いてみた。


3列目シートに大きな変化が!



まず、変わっていない部分を探すと、好評だった“ちょうどいい”サイズ感はこれまで通りだ。なぜ変えなかった? 安積LPLに聞いた。



「正直に言って、“ちょうどいい”というのは意外と難しいんです。もっと大きい方がいいとなればステップワゴンなどラージサイズのミニバンには敵わないし、小さい方がいいとなるとN-BOXなど軽のスーパーハイトワゴンがあります。まあ、悩んでいてもしょうがないので、ボディサイズを変えることなく、できるだけ中を広くして、誰にでも使いやすくする方向で改良していきました」


確かに使いやすさの向上は顕著だ。例えばメーター類をインホイール化することで水平基調のコックピットとし、運転席からの開放的な視界を確保していたり、2列目シートの形状を進化させてウォクスルーや乗り降りのしやすさを引き上げたりしている。


フリードの注目ポイントでもある3列目シートについては、乗り心地はそのままに、跳ね上げ位置を90mm低くしたり、シート重量を軽くしたり(それぞれ1.3kg軽量化)、フックの取り付け位置を手前にしたりして、小柄な女性でも重さや操作のしづらさを感じないような工夫を施した。



「現行フリードをディーラーに見に行くと、営業マンはとにかく平穏な顔をして3列目シートを持ち上げる努力をしてくれていましたが、新型は努力なしでも大丈夫になりました(笑)」と安積LPL。実際にやってみると、跳ね上げ時の慣性モーメントが軽くなっていて、格納しやすくなっているのが実感できた。


「クロスター」の推しモデルは?

最近のホンダ車らしくスッキリとしたデザインをまとった「エアー」に対して、もう1台の「クロスター」は少しとんがったスタイルだ。2台の違いが明確になっている。差別化という意味では、シンプルすぎることに物足りなさを感じるユーザーもいるはず。現行モデルのクロスターは標準車との違いがあまりなく、「だったらノーマルでも構わない」と判断されてしまっていた側面もあるとのことで、新型フリードでは両タイプのキャラの違いをより明確にしたようだ。


新型クロスターの“推し”モデルはFFの5人乗り仕様だそう。このモデルにはスノーボードやキャンプなどのアウトドア好きだけでなく、ボウリング競技を行う開発メンバーの意見も盛り込んだという。ラゲッジがとにかく深くて低くて広いので、4人乗りで1人4個、合計16個の大きくて重いボール(と4人の荷物)を積んで競技会場までの長距離を走り、疲れることなく競技に参加して、また仕事に戻る。そんな使い方には、このモデルが最も適しているらしい。


キャンプ好きのメンバーからは、ラゲッジに取り付けたユーティリティサイドパネルがとにかく使いやすいとの感想が得られたとのこと。ホームセンターでよく見かける穴あきのボードで、材質は傷がつきにくいステンレス製だ。100均にあるような磁石付きの棚をペタンと取り付けたり、穴にフックを取り付けたり、アイデア次第で自由な使い方ができる。


跳ね上げると大きな屋根の代わりになるという長いテールゲートの内側には、6カ所にユーティリティナットが仕込んである。ランタンをひっかけたり、タープを取り付けたり、濡れたものを乾かしたりと、使い方はいろいろだ。「今の時代、そういったアイデアは我々よりもユーザーさんの方が豊富に持っていて、SNSで情報発信までしてくれます。使い方を押し付けるのでなく、素材を提供することで、ユーザーと一緒になってクルマを育てていければなと思っています」と安積LPLは話していた。


介護以外にも使える福祉車両が登場



ユーティリティの面では、用途や使用期間が限定されるという福祉車両のイメージを変えるべく、「3wayユニバーサルムーバー」をコンセプトにした「フリード クロスタースロープ」を用意した。3wayとは「介護」だけでなく「日常」「レジャー」でも快適に使えるという意味。電動ウインチ(速度調整機能、進路補正付き)付きのスロープを使えば、従来の車椅子だけでなく、ベビーカーやキャンプ道具満載のカート、3輪電動マイクロモビリティ「ストリーモ」なども簡単に積載できる。


こうして見ると、新型フリードはライバルのシエンタを意識してというよりも、純粋に使いやすさを追求して開発したクルマ、といった感じがする。このクルマもそのうち、街で頻繁に目にするようになるのだろう。



原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)
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