WWDC24で見えたAppleのもくろむ未来 “5+1”の視点で読み解く

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2024年06月20日 13:31  ITmedia PC USER

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ITmedia PC USER

WWDC24の基調講演は、4フロア分の吹き抜けが心地いいApple社屋の巨大な社食「Caffe Macs」と、その外庭を使って行われた

 Worldwide Developers Conference──通称「WWDC」は、Apple製品にアプリや周辺機器を提供する開発者が世界中から集まるイベントだ。Mac登場前年の1983年から開催されており、筆者は1992年から参加している。


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 90年代後半には日本でも本国の1〜2カ月遅れで縮小版の「Japan Developers Conference」が開催されていたが、98年にスティーブ・ジョブズ氏が中止させた。筆者はその年のWWDCで、壁際で講演を見ていたジョブズ氏に「是非、日本での開催を続けて欲しい」と要望を伝えた。


 彼はしばらく考えた後、「日本に全従業員を連れていくことはできないので、継続してもイベントは(それまで通り)WWDCの縮小版にしかならない。それよりも1週間だけAppleの全従業員と世界中のトップ開発者が1カ所に集まることに大きな意義がある」と答えた。


 実際、WWDCは、ただ一方的にAppleから情報提供を受ける場ではなく、開発者がAppleで製品を開発しているエンジニアに意見や要望を直接伝える場としても重要だ。


 2011年、亡くなる直前のジョブズ氏が最後に登壇したイベントもWWDCだった。降壇後、大勢のファンに囲まれ写真を撮られながらも、1分ほど妻のローレン・パウエル氏と無言で抱擁する珍しい光景が話題となったが、この時、ジョブズ氏はこれが最後の講演になると悟っていたのかもしれない。


 それでも参加した学生による自作アプリの説明にも真剣に耳を傾けている姿が印象に残っている。このWWDCの数週間後、ジョブズ氏はクパチーノ市議会に登場し、数年後の完成を目指すApple新社屋、現在の「Apple Park」建設計画をプレゼンした。


 コロナ禍でオンラインのみの開催となった20年以降のWWDCは、そのApple Parkが会場になっている。しばらくは映像の配信のみだったが、22年以降はそれまで外部の人の立ち入りを一切許さなかったApple Parkのドーナツ型の本社ビル「Ring Building」が、WWDC期間中だけ参加者に一部開放され、Appleが開発する最新テクノロジーと共に同社の文化にも触れられるイベントへと進化した。


 ただし2008年以降、参加枠がわずか数分で売り切れるようになったため、招待開発者以外に関しては抽選で参加者を選ぶ形式を取っている。


 WWDCでは毎年、その年の秋以降に一斉リリースとなる各Apple製品の最新OSの仕様が主なテーマとなるが、それに加えて新製品のハードウェアだったり、目玉となる新技術だったりが発表されることも多い。23年は「Apple Vision Pro」がその目玉で、24年は新OSに統合されるAI技術「Apple Intelligence」がそれに当たる。


 ただ、Apple Intelligenceについては。既に記事を書いたので、本稿では主要OSの変化のトレンドを見ていこう。


●WWDC24を読み解く5つの視点


 WWDCでは毎年、最新OSがテーマの中心となる。24年秋に登場する新OSは「iOS 18」「iPadOS 18」「tvOS 18」「watchOS 11」「macOS Sequoia(セコイア)」、そして「visionOS 2」となるが、加えてAirPodsの新機能も発表された。


 個々のOSの新機能は膨大であるし、今すぐには使えない。ここで紹介するよりも今秋に新OSがリリースされてからがいいだろう。そこで本稿では、筆者が発表全体を眺めて読み解いた5つのトレンドを軸に解説したい。


1. 新ジェスチャー操作


2. 知性を持ったメモ


3. パーソナライゼーション


4. プライバシーとセキュリティ


5. OS間連携


 この5つに当てはまらない機能は是非、Appleの公式Webサイトか、日本語字幕もあるWWDCのセッションビデオを見てほしい。


●デジタル時代の新しい所作“新ジェスチャー操作”


 まずは「新ジェスチャー操作」について掘り下げよう。操作方法を1個加えることは、OSを使う上で覚えることが1つ増えるということであり、初心者にとって「難しさ」のレベルが上がることになる。それだけにAppleは新しい操作方法を加えることには常に慎重だった。


 より多くの人が恩恵を受けそうなのは「AirPods Pro」(第2世代以降)の新ジェスチャーだ。AirPods ProをiPhoneにつないでいると、メッセージなどを受信した際に「○○さんからメッセージが届きました。読み上げますか?」といったことをSiriが尋ねてくる。


 ただ、聞かれたタイミングでエレベーターや静かな電車に乗っていることもあり、声が出せるとは限らない。そこで首を縦に振れば「イエス」、横に振れば「ノー」と、Siriに身振りで返信できるようになった。


 もう1つ、重要な操作の追加が行われたのが、ついに日本でも発売になったApple Vision Proだ。現在はアプリのアイコンが並ぶホームビューを呼び出すのに、本体右上のDigital Crownを物理的に右手で押し込む操作を行う。


 これに対し、今秋に登場するvisionOS 2では、手のひらのジェスチャーだけでホームビューを呼び出せるようになる。手のひらを自分に向けた状態でそこに目線を向けると、その上にiPhoneのホームボタンのようなマークが浮かび上がる(目線を外すと消えるが、再び目線を向けると再表示される)。


 これはOSの基本機能を呼び出せる状態の印なので、それが表示された状態で親指と人差し指をくっつけるタップ動作を行うと、ホームビューの表示/非表示が行える。さらにそれが表示された状態で手のひらを返して下向きにすると時計やバッテリー残量などが表示される。


 この状態で指をタップすればコントロールセンターを表示、左右にドラッグすれば音量調整ができる。これらは、手のひらの向きだけでなく視線の向きを組み合わせることで誤操作を防ぐよくデザインされたジェスチャーになっている。


 新たなジェスチャーと言えば、2023年に発売されたApple Watchから親指と人差し指をくっつけるタップを2度繰り返すダブルタップでアプリの操作が可能になったが、今回のWWDCではこの操作を他社製アプリでも利用可能にするという発表が行われた。


 今後は街中でApple Vision Proを装着して変わった手の動きをしている人に加え、つけていない人でも突然、首を縦横に振ったり、ダブルタップの操作をしたりする人が増えるかもしれないが寛大に見守ってあげよう。


●ワクワクが止まらない「知性を持ったメモ」


 2つ目の特徴は「知性を持ったメモ」の機能だ。その代表格はiPadで使う「MathNote」である。既に他のWWDC24の速報記事を読んで、手書きの数式をiPadが解いてくれる魔法のような技術に心を躍らせている人も多いだろう。だが、魔法のようなメモ機能はこれだけではない。


 MathNoteは、iPadに新たに加わった「計算機」アプリの一機能だ。数式を手書きして「=」(イコール)を描くと、その横に手書き風の字で答えを表示してくれる。xとyの2つの変数を持つ二次方程式を書くと、それをグラフ化してくれる機能もある。答えを表示してしまっては、授業では使えないのではないかと心配する声もあるが、iPadをモバイルデバイス管理(MDM)で管理している学校なら先生の側の操作で計算機能をオフにすることもできる。


 MathNoteに書いた数式は、自動的にAppleのOS共通の「メモ」アプリにも同期される(「MathNote」というフォルダーに同期される)。そしてiOS 18やmacOS Sequoiaでも、メモアプリを通してキーボード操作でMathNoteの機能が利用できる


 魔法のようなメモ機能の2つ目は、あなたの手書き文字の癖を学習し再現する「Smart Script」という、当面は英語だけに対応する技術だ。


 iPadにApple Pencilを使って手書きのメモを書いている人は多いが、Smart Scriptは、その手書き文字の風合いを残しながら、カット/コピー/ペースト、挿入や部分削除など、キーボードから入力した文字と同じくらい柔軟な文章編集を可能にする。手書き文字はもちろん、検索もできるしテキストデータとしてコピーもできる。


 さらに面白いのが、字を清書してくれる機能だ。急いでメモをしていると後で読み返せなくなるくらい字が汚くなるのが人間の常だが、それを自動的に察知してあなたの癖をマネした、もう少し読みやすい文字に清書して直してくれる機能もある。実はMathNoteの計算結果も、あなたの癖をマネしたSmart Scriptで表示されている。


 魔法のようなメモ機能の3つ目は、こちらも当面は英語のみ対応だが、音声を録音しながら、すぐに文字起こししてくれる「Live Audio Transcription」という機能だ。iOS 18/iPadOS 18/macOS Sequoiaで利用できる。特にiPhoneでは通話の録音と文字起こしも可能になる。


 AppleのAI技術は、ただ情報提供や判断に使われるだけでなく、あなたらしいパーソナルな情報の記録にもうまく活用されるということだ。


 インテリジェント機能のアップデートと言えばもう1つ、Apple Watchの「翻訳」アプリであらかじめ利用したい言語をダウンロードしておけば、iPhoneに頼らずにApple Watch単体で利用可能になる。


●数億台ある同じ製品を自分だけの1台に変える「パーソナライゼーション」


 3つ目の「パーソナライゼーション」、これはiPhoneがずっと目指し続けてきた進化の方向性だ。見た目も機能も全く同じiPhoneという商品が年間2億台近くも製造されて売られているにもかかわらず、一度、オーナーを見つけたiPhoneはひと目見ただけで、他の誰のものでもない自分のiPhoneという個性を持つ。


 これを可能にしてきたのが、毎年少しずつ積み重ねられてきたさまざまな「パーソナライゼーション」の機能だろう。


 新しいiOS 18では、ホーム画面のパーソナライゼーションがさらに一歩進むことになる。現在は、せっかくお気に入りの壁紙写真を選んでも、その上をアプリのアイコンが覆い隠してしまっていた。iOS 18とiPadOS 18では、アイコンをもっと自由に配置できる。例えば壁紙の被写体を覆わないように背景部分の上だけにアイコンを並べるといった配置ができる。


 また、アプリのアイコンの色調を変えられるようにもなる。通常のアイコン表示も可能だが、新たに黒背景を基調にしたダークというアイコン表示のモードが加わり、さらにはアイコンの色彩を統一して同一色で描く表示モードが加わる。


 自分自身、ホーム画面でも自分の世界観を表現していきたいと思っているので、大変楽しみにしている機能だが、一方で標準のカラーピッカーで無限に近い選択肢から、ユーザーに好きな色を選ばせるという実装の仕方が少しAndroid的というか、これまでのAppleっぽくないなと感じる部分もあった。


 色選びにはセンスやスキルが問われる部分があり、スキルのない人が間違った色選びをすると、とんでもなく悪趣味なホーム画面にもなりかねない。これまでのAppleのデザインなら、壁紙から特徴色をピックアップして、相性の良い色を計算して「この3色の中からどうぞ」といった形で、ユーザーが間違った選択をしないための補助を行うもう少し親切な設計になっていたのではないかと思う。


 WWDCで発表された機能は、デベロッパーらの意見を受けてリリースされるまでに改善されることも多い。この機能の実装は個人的に是非とも改善して欲しいと思っている。


 さて、パーソナライゼーションと言えば、個性がさらに重視されるのがApple Watchだ。watchOS 11では、写真の文字盤が、最も見た目を自由にカスタマイズできる文字盤へと進化している。写真はあらかじめ指定したコレクションの中からOSが自動的に選んで表示する仕様だが、そこに重ね合わせ表示する時刻の文字種(アラビア数字以外も選べる)や色、レイアウト(表示位置)などをカスタマイズできる。


 Apple Watchに触れたついでに、パーソナライゼーションの機能ではないが、健康機能の変化にも少しだけ触れよう。


 watchOS 11では新たに「バイタル」といういくつかの健康指標を標準状態と比較する機能が追加される。対象になっているのは心拍数/呼吸数/腕の温度/血中酸素濃度、そして睡眠時間などだ。まずwatchOS 11を使い始めて4週間はひたすら記録を取り続けて、利用者にとっての標準的な状態を探り出す。


 その後、これらの健康情報を参照すると「標準状態」の範囲に収まっているか否かを確認できる。少し似た機能として既に搭載されているトレンドという機能がある。これは歩くペースや歩幅など自分の運動能力などに変化がみられた際に、その変化を教えてくれる機能だが、バイタルはバイタルサインが標準状態か否かを判断する機能で少し異なる。


●私たちの生活を脅かす詐欺行為に備えるプライバシー保護とセキュリティ強化


 健康情報などパーソナルな情報を扱う以上、Appleはこれまで以上にプライバシー保護に慎重で、Apple Intelligenceも「プライバシー保護」に最も重点を置いた設計になっている。では、それら以外の機能に関するセキュリティ機能はどう変わったのだろうか。


 最も重要な変化は、iOSなどの「プライバシー設定」のパネルのデザイン変更だろう。さまざまなアプリに対して、どれだけのプライバシー情報が共有されているか、より見やすく確認できるようになる。


 人に見られたくないアプリを隠す機能も用意された。隠す用のフォルダーに入れておくと、認証するまでそもそもそのフォルダーにアプリがあるかどうかも分からないという仕組みになっている。


 またFaceTimeやZoomによるビデオ会議で画面共有をする際に相手に何が見えているかを確認しやすくすることで、見られたくない情報が相手に見えてしまうことを防ぐ工夫も加わっている。


 アプリによっては情報を他のユーザーと共有できるように「連絡先」へのアクセス許可を求めてくるものがある。これまでは許可するか否かしか選択肢がなかったが、iOS 18からは、まずは必要最低限の少人数のグループの連絡先だけを共有しておき、必要に応じて連絡先情報を追加していくという設定が可能になる。


 ほとんどのユーザーは気が付かないかもしれないが、iPhoneなどに周辺機器をペアリングする際、その機器から他のどんなBluetooth機器を使っているかをのぞき見できないようにする工夫なども加えられた。日々使っているBluetoothデバイスをのぞき見することで、名前など個人が特定できてしまう場合があるからだ。


 セキュリティ関連では、パスワード管理の機能「Passwords」が追加された。さまざまなサービスの登録に使ったパスワードを記憶し、自動入力してくれる機能だ。クラウドに同期しておいて、同じApple IDでログインすれば、iPhone/iPad/Mac/Apple Vision Proだけでなく、なんとWindows OSでもパスワードが同期(iCloud for Windowsアプリを利用)される。


 そのためキーボードからパスワードを入力する手間が無くなり、パスワードをのぞき見される危険性もなくなる(その分、Apple IDが盗まれると大変なことになるが、そこは不審なログインを検知すると、他の機器からの承認を求める現在の設計が有効だという前提に基づいている)。


 個人的に効果を期待しているのはメールアプリの新機能で、航空会社や宅配業者などから送られてきたメールを表示する際、その上に会社のロゴなどを大きく表示して、どこからのメールかの視認性を高める機能が加わっている。最近多いフィッシングメールは、こうした企業や業者を偽っていることが多い。


 もし、この機能がそうした悪質なメールと本物のメールをちゃんと区別してくれるなら、詐欺撲滅の大きな一助になるので大いに期待を寄せている。もし、最初の仕様がそれほどちゃんと送信者を確認していなくても、今後、電子署名を使ってしっかり送信者確認をすれば、かなり画期的と言えるのではないだろうか。


 そういう手間のかかる仕事こそ、Appleのような巨大企業にしかできないことだ。是非とも、そういった方向性の機能としてブラッシュアップしてもらいたい(できればSMSにも同様の機能を提供して欲しい)。


●異なる機器を1つにつなげる「OS間連携」


 さて、最後に「OS間連携」の機能をいくつか紹介したい。異なるデバイスを使っていても、クラウドを通してちゃんとデータが共有される。これは既に他の機器でも当たり前の現代の常識だ。しかし、Appleはこれに加えて機器間での操作などの連携に非常に大きな力を注いできた。


 ハードもソフトもクラウドサービスも全て1社で作っているからこそできる高度な連携は、今やApple製品の大きな強みとなっているが、WWDC24では、この連携が今後、さらに進むことを示していた。


 最も驚いたのが、Macの画面上で自分のiPhoneを操作できるようにする機能だ。これまでもiPhoneの画面をMac上にミラーリングすることはできた。しかし、新機能はそれとは異なる。例えば、自分のiPhoneが隣の部屋でロック画面の状態で充電中でも、Mac画面上にそのiPhoneと全く同じデータが入った、バーチャルなiPhoneが再現され、これをマウスとキーボードで操作したり、Mac上の写真や動画、その他のファイルをドラッグ&ドロップ操作でiPhoneに転送したり、iPhoneに届いた通知をMac上で受け取ったりが可能になる。


 確かにPCの使用中は、iPhoneはどこかで充電中ということが多く、それでもちょっとだけiPhone上の情報を利用したいという場面は多いので、使うことが多い機能になるかもしれない。


 OS間連携と言えば、Apple Vision ProにもMacに視線を送ると、画面が空中に飛び出して4Kの大画面化するバーチャルディスプレイという機能が用意されている。この機能もvisionOS 2で強化され、4Kディスプレイを2つ横に並べたバーチャルな大画面パノラマ型ディスプレイで利用できるようになる。視界いっぱいに広がる(バーチャルの)大画面で操作する感じは、まさに「空間コンピューティング」といった印象でこちらも早く試してみたい機能だ。


 特にOS間というわけではないが、自分の画面を他のApple製品に共有する「画面共有」にも新機能が加わった。共有してもらった画面の上に手描きできるようになった。「ここをクリックして」などと操作方法を教えるのに役立ちそうだ。また、それでも操作方法が分からない場合、相手の許可をもらって遠隔操作をすることも可能になる。


●WWDC24以降、ソフトウェア開発は新しい時代に突入した


 かなり抑えめに書いてきたつもりだが、それでもこんなに長くなってしまった。しかし、これでもまだ氷山の一角で、他にもSafariやマップ、ホームオートメーション関係などの新機能も多い。


 iOS 18/iPadOS 18/watchOS 11/visionOS 2の公式ページ(英語)や、tvOS 18のプレスリリースも是非参照して欲しい。


 しかし、そこに書いてあるのはいずれも表層的に分かる機能だけだ。OSとAIの統合が進んだ今回のWWDCで、「App Intent」という技術が重要さを増したと筆者は思っている。これは今日のPCやスマートフォン活用の基本となっている「アプリ」という概念からの脱却の第一歩となるのではないかと思っている。


 App Intentの「Intent」は日本語で言うと「意図」となる。アプリというものは、例えば「画像を明るくする」「暗くする」「白黒にする」「塗りつぶす」「文字を挿入する」など、たくさんの意図を持つ機能の集合体になっている。


 これからのApple製品向けのアプリ開発では、開発時にこうした個々の機能を開放することが推奨される。これによって将来、Apple IntelligenceなどのAI機能が「今、表示されている写真を白黒にして」と言ったユーザーの指示を解釈して、そのApp Intentに処理を振り分けることができるからだ。


 現在、他社が開発しているAI統合型OSの設計は自社が後押しするAIに全てを頼って、何でもかんでもそのAIに理解させ、処理をさせようというアプローチになっている。


 これに対してApple Intelligenceは、“餅は餅屋”で、うまく他のAIやアプリに仕事を振り分けながらさばいていく設計を採る。


 Apple製品に用意された多彩なアプリの膨大なIntent全体を理解して、ユーザーからSiriなどを通して要求がくると、その内容を理解すると「分かりました。その仕事ならこいつに任せましょう」とその処理を職人的アプリに割り振って処理する。そして「アプリがこんな風に仕上げてきました。いかがでしょう?」と結果を返してくれる設計になっている。


 これが他社のAI統合型OSとの決定的な差だ。この未来のビジョンが完成した時、開発者が提供する機能は、どのようなビジネスモデルで流通するかなど、未知の部分は多いが、先見性のある開発者たちは、このWWDC24以降、自らのAI時代に向けた開発へと一歩を踏み出すことになる。


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