スポーツから学んだチームプレイ、ロジカルな思考力。アスリート人材が社会に出てからも活躍するワケ

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2024年06月21日 09:10  日刊SPA!

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「体育会系」という言葉を聞いて、何を想像するだろうか。「厳しい上下関係がある」「先輩の命令は絶対に従わなければならない」「スポーツばかりで勉強が苦手」といったマイナスのイメージを持っている人も多いかもしれない。
 たしかに体育会には、前時代的な「上級生には絶対に逆らえない厳しい上下関係」が存在していた。もっとも令和の時代にはそのような悪しき慣習は激減しているだろうが、いまだに体育会系にそのようなイメージを持っている人は少なくないだろう。

「一方で、会社という場所ではどうでしょうか。物事には良い側面と悪い側面があります。一心不乱に何かに打ち込んだエネルギーは、必ず会社の仕事でも活かすことができると考えています」

 そう語るのは、ヒット作『アスリート人材 飛び抜けた突破力と問題解決力で100%やり遂げる!』や、最新刊『アスリート人材の底力 折れない自分のつくり方』などを著書に持つ、資産防衛・ビジネスコンサルタントの松本隆宏さんだ。

◆アスリート人材は社会で活躍できる高いポテンシャルを持っている

「スポーツ系の部活動やスポーツクラブは、社会の縮図と言えます。人間関係や先輩・後輩の関係を育み、一心不乱に努力すること、目標に向かって邁進することは、必ず人生で活かせる大きな力になります。スポーツ系人材ほど会社で活躍できる人材はいません。

 スポーツは肉体的なパワーだけで勝てるものではありませんよね。計画や戦略・戦術など考える力が必要になります。それらは監督やコーチに言われて覚える力ではありません。監督やコーチが指導したこと、経験したことを『批判的に思考していく力』。これはまさに、ビジネスでも必要とされるPDCAの思考回路そのものです」(松本さん)

 松本さんは、「体育会人材」のことを「アスリート人材」と呼んでいるという。

「アスリートというとトップスポーツ選手を指すことが多く、ただ単にスポーツをしている一般の人は自分のことをアスリートだとは思っていないですよね。でも、レベルを問わず、スポーツで勝ちたい、タイムを縮めたいと本気で取り組んでいる人はすべて“アスリート”なのです。

 そこで私は『体育会人材』のことを、敬意を込めて『アスリート人材』と呼んでいます。これはスポーツに限った話ではありません。たとえば吹奏楽やダンス部などで賞を目指して日々がんばっている人もアスリートと言えるでしょう」(松本さん)

 そして、アスリート人材は社会で活躍できる高い能力を日々鍛錬している、と評する。

「アスリートは試合に勝つため、タイムを縮めるため、一つのゴールに向かって、練習の立案から試合当日の細かな作戦まで、論理的に戦略を立て努力を重ねています。

 日々のこれらの行動から、『物事をロジカルにとらえる批判的思考力』や、いろいろな『挫折を乗り越えるセルフマネジメント能力』、『複雑な問題解決力』、『リーダーシップ』などさまざまな力が鍛えられ、アスリート人材には高いポテンシャルが秘められているのです」(松本さん)

◆アスリート人材はなぜビジネスで求められるのか

 実は、松本さんも元甲子園球児の“アスリート”だったという。

「私は小学生の頃から野球に打ち込み、高校時代は日本大学第三高等学校(日大三高)の中心選手として1994年春に甲子園出場を果たすことができました。その事実だけを取り出せばエリートだと思われるかもしれませんが、私は決してそうではありませんでした。

 高校時代の実績を評価されて法政大学野球部に進みましたが、故障もあり、思うような成績を残すことはできず、卒業する時点で私はアスリートとして生きることを断念しました。その後は住宅メーカーの営業マンなどを経て、現在は『地主の参謀』として、地主や富裕層、経営者を中心に資産防衛コンサルティングに従事しています。

 ビジネスの世界に身を置いて、たくさんの元アスリート、体育会OBとお付き合いしてきました。なかには競合企業のライバルもいれば、尊敬すべき先輩もいました。私が尊敬するアスリート人材の多くは、冷静に自分を分析する力を備えています。

 相手にあって、自分にないものは何か? 相手との実力差がどのくらいあり、何をすればそれを埋めることができるのか?  日々、何をすればどのくらいで追いつくことができるのか? 自分だけのストロングポイントは何か? 次のステージに進むためには何が足りないのか?

 冷静な目で自分を見つめながら、武器となるものを探し、それを地道に磨いている。現実をきちんと認識したうえで真摯に自分と向き合い、深く考える力を備えている人ばかりです」(松本さん)

◆一人のミスは誰かがカバーする。野球から学んだチームプレイ

 松本さんが尊敬する先輩の一人に、現在、住宅の建設・販売メーカーで営業本部次長を務める佐藤友亮さんがいる。佐藤さんは、高校野球の名門や強豪が多い神奈川県の桐蔭学園野球部の外野手として、1992年夏に甲子園出場を果たした“アスリート人材”だ。

 1992年夏の甲子園と言えば、星稜高校の松井秀喜選手が5連続敬遠された年。同じ桐蔭学園のチームメイトには高橋由伸選手もいて、そんな選手たちのなかでレギュラーを獲得したのだ。佐藤さんは大学まで野球にのめり込み、卒業後は住宅の建設・販売メーカーを就職先に選んだ。佐藤さんに話を聞いた。

「はじめに担当したのは個人用戸建て住宅の販売で、私は月に2棟くらいずつ売って、全国1位を何回か取りました。高校時代に培った、相手の気持ちを読む力が役に立ちましたね。

 30歳になってからはプレーヤーとしてだけではなく、店長のようなマネジメントも任されるようになり、自分でセールスしながら、チームのクレーム対応もフォローしました。

 何かトラブルやクレームがあればみんなで対応する、ミスをみんなの力を合わせてカバーするというのは、野球部の時の同じかもしれません。体育会に所属した人、アスリートとして勝利を目指した人の長所は仲間を大事にできるところだと思います。

 楽しい時は簡単ですが、苦しい時、ピンチに陥った時にそれが試されます。私はずっとチーム競技をしてきたので、特にそう思うのかもしれません。一人がミスをした時には、ほかの誰かがカバーをする。それをさりげなくできるのが体育会OBのいいところです」(佐藤さん)

◆アスリート経験は社会に出てからも必ず活かせる

 このように、さまざまな業界でアスリート人材は活躍している。前出、松本さんは、「チーム力、スポーツマンシップ、そういった思いやりや自己犠牲の精神が社会に出てからも活躍する武器になる」と話す。

「勝つこともあれば負けることもあるのがスポーツ。最善を尽くしても、どうしてもミスは生まれてしまうものです。そういうことを理解しているからこそ、アスリートは他人に対して思いやりがある。

 野球の場合は特に、仲間がミスをする前提でカバーリングをしたり、いつも『その時』に備えてプレイしています。失敗を予測する力も高いし、処理の速度も速い。厳しい指摘をするかもしれないが、どこかに優しさがある。そのあたりのバランスを取れる人が多いようにも思います。

 だから、会社組織の中で部下がミスをしても、落ち着いて対処できるのではないでしょうか。誰だってミスはするもの。それをカバーするのがチーム力だと考えている人が多いのです」(松本さん)

 ラグビーでは、負けた相手を「グッドルーザー」と称える習慣がある。ここに、スポーツマンシップの精神が象徴されている。

「アメリカンフットボールやラグビー、野球といった競技で求められるのは自己犠牲の精神。スポーツマンシップとは、アスリートたちが身につけている正々堂々とした態度や精神、あるいは思いやりの心なども含みます。

 他のスポーツでもそうですが、優れたアスリートは皆、すばらしい心を持っています。そしてその心が、社会に出てからも広く評価され、活躍するための武器になるのです。だから、アスリートがビジネスの世界で活躍するのではないかと思っています。アスリートとして活躍した経験は、社会に出てからも必ず活かせます」(松本さん)

<取材・文/日刊SPA!編集部>



【松本隆宏】
ライフマネジメント株式会社代表取締役。1976年、神奈川県相模原市生まれ。高校時代は日大三高の主力選手として甲子園に出場。東京六大学野球に憧れ法政大学へ進学。大学卒業後、住宅業界を経て起業。「地主の参謀」として資産防衛コンサルティングに従事し、この10年で数々の実績を生み出している。また、最年少ながらコンサルタント名鑑『日本の専門コンサルタント50』で紹介されるなど、プロが認める今業界注目の逸材。
ラジオ大阪OBC(FM91.9 AM1314)にて、毎週水曜日19:45〜20:00「松本隆宏の参謀チャンネル®︎」を放送中。
著書に、『地主の参謀―金融機関では教えてくれない資産の守り方』(2018年、エベレスト出版)、『アスリート人材』(2022年、マネジメント社)、『地主の決断―これからの時代を生き抜く実践知』(2023年、サンライズパブリッシング)、『地主の真実―これからの時代を生き抜く実践知』(2023年、マネジメント社)、『プロたちのターニングポイント』(2024年、サンライズパブリッシング)、
『アスリート人材の底力 折れない自分のつくり方』(2024年、サンライズパブリッシング)がある。

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