SNSで漫画を公開することが一般的になった今、大手漫画雑誌で連載を持っているプロの読み切り作品に出会うこともある。5月10日にXに投稿された漫画『吸血王と鋼鉄ガール』は、「コロコロコミック」(小学館)で『ビックリメン 私立メイドン女学院』や『MINI4KING』を手掛けてきた今田ユウキさん(@pungter)による、まさにプロクオリティのファンタジー作品だ。
(参考:漫画『吸血王と鋼鉄ガール』を読む)
1000年の封印から復活を遂げたドラキュラは、さっそく人間の血を求めて歩き出すが、すでに人類が滅亡していることを知る。それでも生き血を求めるドラキュラは、若い女性の姿を目にして、すぐさま首元にかぶりつく……が、それはアンドロイドだった。機械から血を吸うことはできず落胆するドラキュラだったが、アンドロイドはハグ&キスをされたと勘違いしてーー。
疾走感と爆発力のある本作がどのように生まれたのか、今田ユウキさんに話を聞いた。(望月悠木)
■ゲームの影響を強く受けた作品
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――今回『吸血王と鋼鉄ガール』を制作した理由は?
今田:5〜6年前くらいからX(当時はTwitter)で4ページ漫画をお試しで描くようになりました。その中で新作づくりに悩んでいた時期に、なんとなくやりたい要素の“ドラキュラ”と“ポストアポカリプスもの”をくっつけようと思い、加えて“血が吸いたいドラキュラ”のカウンターとして“血が吸えないロボ”が頭に浮かびました。
――あれよあれよと設定が出来上がっていったのですね。
今田:その後、連載企画の1つとして練っており、当時は「ウェブなら連載OK」と編集さんから提案してもらいました。ただ、その時の自分は「どうしても紙で連載がしたい」という思いが強く、結局は読み切り漫画として『サンデーうぇぶり』(小学館)に掲載せていただくにとどめました。
――“ポストアポカリプスもの”がやりたい要素だったとのことですが、改めて本作の世界観はどこから着想を得たのですか?
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今田:『The Last of Us』や『Fallout』といったゲームの影響が強いです。これらの作品のような崩壊した世界にワクワクします。また、物語は“欠けているものを埋めること”と“最も離れた2人が1つになること”を念頭に組み立てました。
――ドラキュラとアンはどのように作り上げましたか?
今田:2人のモデルが全く思いつかずに苦労しました。ただ、ドラは黒と赤、アンは白をイメージして描きました。また、アンは健康そうな身体かつ少し“機械感”のある要素をビジュアルに入れました。
■スピード感を意識した理由
――ドラキュラとアンの喜怒哀楽の表情がどれも活き活きと描かれているのが印象的でした。
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今田:前提として楽しそうな絵にすることを意識しました。設定をもっと突き詰めればドラは無表情冷血のほうが良いかもしれませんが。そのうえで2人が心情を吐露する表情に説得力が出るよう気を付けました。
――中でも気に入っている表情はありますか?
今田:アンは常にコロコロ変化しますが、どの表情も好きです。ドラは孤独に向き合う「誰かッ!!!!!」のところです。
――本作はとにかく疾走感を覚える内容でした。
今田:ドラキュラ、アンドロイド、崩壊した世界、と設定が多い作品です。ストーリーが立ち止まるといろいろなところが気になったり齟齬が出たりしてしまいそうだったため、「とにかくメイン2人に注目したまま読み終えてほしい」と思ってスピード感は意識しました。
――“苦戦を強いられるも愛の力で完勝する”というラストの戦闘シーンも爽快感がありました。
今田:心の動きを描けていないとせっかくのアクションシーンも“ただのアクションシーン”になってしまうため、「何のためのアクションか?」という疑問から逆算して作りました。
――最後に漫画家として今後どのように歩んでいきたいですか?
今田:まず『天黒のラグナロク』(以下、小学館)、『MINI4KING』、『ビックリメン私立メイドン女学院』が発売中です。どれも読み味が違い、面白くてカッコいい作品ですので読んでみてください。また、次回作はまだ構想中ですが、いつかアニメ化する作品を作りたいです。
(望月悠木)
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