「株主優待になぜPayPayポイント?」「LINEヤフーとのシナジーは?」 ソフトバンク株主総会の質疑応答まとめ

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2024年06月21日 18:40  ITmedia Mobile

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ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一。基本的に質問には宮川氏が回答した

 ソフトバンクは6月20日、都内で第38回 定時株主総会を開催した。2023年度の事業が報告された後、今後の成長戦略を社長の宮川潤一氏が説明。また、定款の一部変更や役員選任など3つの議案について決議された。


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 ここでは、主な質疑応答について紹介する。質問は、事前に専用サイトに入力されたもの、インターネット出席の株主から、来場した株主からの順で行われ、一部の質問には役員や創業者の孫正義氏が回答する場面もあったが、基本的に宮川氏が回答した。


●ソフトバンクの強み、通信事業に関する質問


 まずは、本業の通信事業に関連する質問を紹介しよう。


―― 通信各社との競争において、ソフトバンクの強みを教えてほしい。


宮川氏 グループの中に、LINEで9700万人、Yahoo!で8500万人、PayPayで6400万人という、国民の大半が使っている国内最大規模のサービス群がある。それらとの連携が大きな差別化になると考えている。また、以前は一番の弱点ともいわれたネットワークも、品質向上に向けて、本当に地道な努力を続けてきた結果、第三者機関から「一貫した品質」のナンバーワンといわれるようになってきた。本当にありがたい話。MNPでもずっと純増を続けており、高い競争力を維持していると思っている。


―― 10年後、20年後のスマホ契約者数をどのくらいになると想定しているか。


宮川氏 今、ようやく3000万を超えたところで、もちろん、4000万、5000万と狙っていきたい。今、携帯電話の事業としては国内3位だが、いつまでも3位に甘んじるつもりはない。2位、1位と上を目指していきたい。AIを使う道具として、スマートフォンは非常に有利なポジションになると考えており、純増に向けて精いっぱいやっていきたい。


―― 首都圏震災時のBCP対策について聞きたい。


宮川氏 これは私の得意分野なので細かく説明したい。BCP対策として、強固なネットワークを作るため、投資を惜しまずやった時期がある。今、関東圏内と関西圏内に大きく2つの監視センターがあり、ネットワークの運用部隊が2分割されている。さらに、1カ所をシステム的に3分割している。その意味で、6か所のリダンダンシー(冗長性)が構成されている状況なので、首都圏に、もし本当に大きな地震が来ても、まずは関西に切り替わり、関西の中でも3分割しており、首都圏のデータを取り扱えるキャパシティーを持っている。対策は割としっかりやっているつもり。


―― 社会貢献として、官公庁などから出資してもらって、スマホ教室やパソコン教室を地域で開催できないか。


宮川氏 弊社はスマホ教室を年間100万回やっている。昨年、一昨年も100万回やり、今年も同じだけやろうと思っている。ソフトバンクショップの他、学校に訪問したりして、無償で行っている。


 われわれの目指す世界観は、年齢によって情報格差が生じてはいけないとこういうこと。情報機器に触れる機会がなかった高齢の方々を中心に、スマホ教室を開催させてもらっている。ショップで言っていただければ、すぐ教室にご案内するので、ぜひショップへ行っていただきたい。


●生成AI、国内の競合他社よりは大きなモデルが出来上がっている


―― AIデータセンターをシャープの堺工場に作るというニュースを見た。どれくらい投資するのか。収益化できるのか。


宮川氏 交渉中のため、具体的な金額は現時点では決まっていない。確定次第、お知らせしたい。


 堺工場はわれわれが進めている次世代社会インフラの中核の拠点として最適だと考えている。堺工場の土地や建物だけではなく、電源や冷却設備といったデータセンターの稼働に必要な設備も合わせて譲り受ける方向で交渉している。データセンターの新設を新しくやろうとすると、土地の購入から建物の建設、電源設備の構築まで、早くても3、4年、最近は5、6年かかる状況。堺は早期に稼働させることが可能で、急増しているAIデータセンターのニーズに応えられると考えている。


 AIデータセンターの収益化については、次期の中期経営計画の中でお話ししたい。期待していただきたい。


―― AI計算基盤への投資は、将来に向けて大変重要だと思う。投資はいつ、どのような形で収益へとつなげられるか。


宮川氏 AI計算基盤はさまざまな収益化の方法がある。まず、GPUの計算能力などを企業、研究機関に貸し出すこと、いわゆるIaaS(Infrastructure as a Service)というビジネスモデルがある。現在、GPUの計算能力は、AIの普及によって世界中で争奪戦になっており、これでも投資回収は十分できると考えている。


 それに加え、AI計算基盤で自社のAIプラットフォームやAIのサービスを開発し、企業やコンシューマーに提供するPaaS(Platform as a Service)やSaaS(Software as a Service)というビジネスモデルもある。IaaSで十分、投資回収は見込めており、PaaSやSaaSが立てついてくると、収益は全て利益の上振れにつながってくる。これらの収益について、次期の中期経営計画でお話したい。期待していただきたい。


―― AIの活用が進むことで、電力消費が大きくなると聞く。それに対してどのように取り組むのか。


宮川氏 AIをいかにうまく活用できるかが、日本の発展において非常に重要だと考えている。一方で、AIの活用には電力の消費が伴う。これに対してソフトバンクは、まずAIを活用して省エネに取り組んでいく。それとともに、将来的にはエネルギーを作る側にも回っていきたいと考えている。


―― ソフトバンクが提供する大規模言語モデル(LLM)の他社との差別化について聞きたい。OpenAIのような海外のLLMと比較して、ソフトバンクのモデルはどのように優れているのか。


宮川氏 当社が開発しているLLMは、日本語をベースとして開発しているので、日本の商習慣、文化、歴史などをきちんと理解し、ビジネスや日常生活の中で自然なやりとりができるLLMとなる見込み。日本語ネイティブから見て、自然な形でやりとりできるということは、海外のLLMに対する差別化のポイント、また強みになると考えている。これからいろいろと肉付けをしていきたい。


―― 海外でのアライアンスは積極的だが、国内の方はどうなのか。AI関係で、国内の会社と提携することはあるのか。


宮川氏 当社の他、NTTさんや学術系のところで、今、生成AIはできつつあるが、世界のOpenAI、世界のGeminiと比べると、日本の生成AIはまだまだ。ただ、やらない選択肢はないということで、われわれはやるという結論を出した。なぜかというと、やれるスタッフがいて、やれる体力があるから。日本独自の生成AIに関わっていくことについて、ソフトバンクとしてチャンスがあるなら、やるべきだということで始めた結果。


 今、(国内の)他社さんよりは、かなり大きなモデルが出来上がっているが、世界と比べればまだまだ小さな位置付け。国内のどこかの生成AIと手を組むとか、そういう段階には、まだない。5年、10年もたって、組めるところがあれば組んでいきたいと思うが、今の段階では、どうせ組むならOpenAI、どうせ組むならGeminiとやりたいというような感じ。


 通信会社同士でいえば、例えば、宿敵のKDDIさんと一緒に5G JAPANというジョイントベンチャーを作っているような時代。これから先、何が起こるか分からない。今までの敵は今日の友、のような感じで、組んでやっていくということもありえるかと思う。貪欲にアンテナを広げながらやっていきたい。


●LINEヤフーについて NAVERとは継続して協議をしている


―― LINEヤフーの資本関係の見直しの状況や、今後の見通しについて教えてほしい。


宮川氏 何度も同じことばかりで申し訳ないが、LINEヤフーから要請を受けて、セキュリティガバナンスや事業戦略の観点で、NAVERとは継続して協議をしている。現時点では合意に至っていないが、LINEヤフーの将来を考えて、できる限りのことをしたいと考えている。相手のあることなので、合意できる時期を今、明確に答えることはできないが、引き続き協議を重ねていく。


―― LINEヤフーについて、ソフトバンクはどのようなシナジーを目指して、今後運営していくのか。


宮川氏 ソフトバンクの通信基盤と、LINEヤフーのようなインターネット上のサービスをやっている会社は、強みが異なる。競合他社もなかなか強いので、それぞれの強みを合わせて、いろんなサービスを仕掛けていきたい。LINEのサービス、Yahoo!のサービスに加え、もう1つ、われわれにはPayPayという、共同プロジェクトでうまく行っているものがある。第2のPayPay、第3のPayPayを、一緒に知恵を出し合って作っていきたいと考えている。


●株式分割や株主優待にPayPayポイントを贈呈することについて


―― 株式分割や株主優待制度の決定に至った背景や経緯を教えてほしい。


宮川氏 若い株主が増えていくということが、当社の中長期の成長につながっていくという思いがある。そのために株式を10分割して、買いやすい単価に設定した。加えて(普通株式を1年以上、かつ100株以上を保有する株主に対し)1000円分のPayPayポイントをお渡しすることで、ソフトバンクの株式を購入していただくきっかけになったらいいと考えた。優待ポイントの総額は全体で10億円ほどを予定している。この10億円を戦略的な取り組みとして活用することで、PayPay経済圏の拡大を含めた、中長期での企業価値の向上につなげていきたい。


―― 株式分割により、株価の上昇が望めなくなるのではないか。


宮川氏 株価は本来、業績に連動するもの。株式分割に左右されるものではないと考えている。着実に純利益を積み上げた結果が株価に反映されると信じており、業績で示していきたいと思っている。また、業績を伸ばしていく自信もある。ぜひ期待していただきたい。


―― 株式分割はいいが、10分割はやりすぎだと思う。4分割などは考えなかったのか。


宮川氏 2分割から4分割、6分割、10分割と、ありとあらゆるパターンを計算して考えた。10分割はやりすぎだと言う役員もいた。PayPayポイント1000円分の贈呈も、恐ろしい金額になるからやめたらどうかという、いろんな話があった。


 ソフトバンクを10年、20年、30年と成長し続ける会社にしたいと考えている。ソフトバンクの場合、40歳未満の株主が、他社に比べて異様に低いというデータがあり、ここを掘り起こそうということになった。(10分割は)その層が買いやすい金額をマーケットリサーチした結果。いろんな意見があるのは分かっているが、必ず利益で株価を上げていきたいと考えている。


●ソフトバンクが自動運転車の製造までやることは視野に入れていない


―― 自動運転やSDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)の開発にソフトバンクが大きな役割を担うことを期待している。出資しているMONET Technologies、BOLDLY、Cubic Telecomの3社は、ノウハウの情報共有をしているのか。


宮川氏 3社は、それぞれやっていることが異なる。MONET Technologiesは、トヨタさんとソフトバンクとで作ったジョイントベンチャーで、日本の自動車メーカーに続々と株主になっていただいた。自動車メーカーの自動運転にかかるプラットフォームを提供する会社として、今、実証実験を政府も交えてやっている。ソフトバンクが自動運転車の製造までやることは視野に入れていないが、自動運転車を動かす際に、車がつながるプラットフォームを提供する。BOLDLYは、バスの巡回拠点のシステムを提供するなどしている。


 Cubic Telecomは、(自動運転をはじめとする大容量IoT通信領域の)グローバル市場に本格参入するチャレンジ。ソフトバンクはBeyond Japanの事業方針の中で、日本の中で培ったノウハウを世界に持っていきたいと思っている。もともとCubic Telecomは、フォルクスワーゲングループの子会社で、ヨーロッパの名だたる自動車メーカーのプラットフォームを提供している。日本の自動車メーカーも乗っていただけないかということで、今、営業しており、ホンダさんは乗っていただくことになった。これから営業を拡大していく。


 3社、それぞれ異なる企業なので、情報共有については、している部分としてない部分がある。


●孫取締役への質問も 生成AIのアイデアが半年で16万件集まった


 ソフトバンクの株主総会では、創業者で取締役の孫正義氏を回答者に指名した質問が出てくることもある。ここでは孫氏の回答を中心に紹介しよう。


―― ソフトバンクグループ株価が上がりうれしく思っている。なかなか上昇しないソフトバンクの株価も上がるように、何か一手を打っていただけないか。


孫取締役 ソフトバンクも結構上がっている。1500円ぐらいで公募して、その後に下がって、今は2000円弱ぐらい。結構、頑張っていると思う。


 宮川社長も言っているように、業績そのものを上げることが一番大事。中期経営計画も着実にこなしていて、自信があるということなので、僕は皆さんと同じ株主の立場で、ソフトバンクが着実に増益を続けながら、その結果、株価が上がっていくことを確信している。


―― 新規分野への投資についての考え方を知りたい。ソフトバンクグループと投資に関する分担をしているのか。また、ソフトバンクグループの投資先で実績が伴ってきた企業に、ソフトバンクとして投資することはあるか。


宮川氏 積極的に何でもやろうと思っている。今ようやく、悩んでいた携帯電話料金の値下げの影響がひと山超えたので、今度は攻めに出ようと考えている。これからの投資先は、やはりどうしてもAI関連の会社になっていく。AIのサービスも含めて投資していきたい。孫社長のソフトバンクグループの投資のサイズ感ではないが。


 社内で開発することも、株式として投資して連携することも、同じく試験研究費の一環だと考えているので、投資の機会があれば積極的に投資していきたいと考えている。


孫取締役 ソフトバンクは、宮川君を中心に、日本のユーザー、未来のために、収益をより確実に積み上げていくという観点から、効率のいい投資をこれからも続けていくべきだと思う。


 一方、ソフトバンクグループとしては、僕の性格もあるが、次の大技を狙って、当たるか外れるか……この間もWeWorkで1兆円ぐらい損したが、当たるか外れるかをいとわないぐらいの仕掛けを、特に海外を中心にダイナミックにやっていく。新しい進化の種を見つけに行くのが、ソフトバンクグループの1つのダイナミズム。その代わり、当たるも外れるも大きいかもしれない。


 ソフトバンクは、日本国内に何千万人のユーザーがいるという強み。そして日本のユーザーや投資家に、直接的に成果をお届けする役割という分担。


 ただPayPayのように、海外で培ったスタートアップ、あるいはアリババ、それらのノウハウと、国内の営業力、ユーザー数、そのミックスによってより強い相乗効果が見込めるものは、ソフトバンクグループとソフトバンク、LINEヤフーが三位一体となって、それぞれが資本を出し合ってリスクを取りに行った。


 結果、今、PayPayが非常に伸びている。これは大きな投資のリターンも得られると思う。柔軟に連携しながら、それぞれの強みを生かす。こういうことは、これからも度々出てくるんじゃないか。特に生成AIについては、グループとしても、海外で仕掛け始めている。国内も、ここが次の大きな勝負所になると思う。いい意味での連携を深めていきたい。


―― ソフトバンクグループ全体として、事業を開発していく目利きの人材はどうやって育てていくのか。せっかくの機会なので、ぜひ孫さんの言葉を拝聴したい。


孫取締役 事業の人材は、2つの方向から出ると思う。1つは、実際に今やっている事業で、苦労しながら問題を解決していくことで磨かれていくもの。もう1つは全然違う発想のところで、今までと全く関係ない、自由に解き放ったアイデアを出して、そのアイデアから新しい事業の種が見つかるもの。これはあまり経験値とは関係ない飛躍がある。


 今、社内で生成AIの活用についてのアイデアコンテストを、6カ月間やっている。6回で16万件の応募が社員からあった。世界中で見て、半年で生成AIについての新しい事業化のアイデアを16万件、社内から出した会社はわれわれしかないんじゃないかと思う。その中から1万件の特許を出している。生成AI関連に絞っての件数なので、恐らく世界一だと思う。これは誇ってもいい数。


 数だけじゃなくて、毎月、僕もびっくりするぐらいのいい内容が出ている。最近、2回連続で1位を取った若い社員は、東北地方の営業マンで、入社数年目。技術系でもない。彼は2回連続で報奨金の1000万円を獲得した。彼のアイデアはすごいから、それすぐ事業化しろと言ったところ。


 社内からも、そういう画期的なアイデアが、生成AIがらみでどんどん出てきているので、僕は非常に楽しみにしている。これもソフトバンクグループとソフトバンクと一緒に、僕と宮川君の連携プレーでやっている。


●退任する宮内謙氏について


―― (前社長で取締役を務めた)宮内謙氏は大変貢献された方だと思うが、功労金などを渡すのか。


宮川氏 私も宮内さんの功績は非常に素晴らしいと考えている。この功績は国にも認められ、昨年度には旭日重光章を受賞された。ソフトバンクといえば孫さんだが、実は孫さんと宮内さんの絶妙なコンビで作り上げた会社でもある。孫さんのスケールの大きなアイデアを、宮内さんが現場を指揮して確実に実行してくれたおかげで、本日のソフトバンクの姿があると考えている。


 しかしながら、功労金はお渡ししない。すみません、宮さん、ごめんなさい。これまでの貢献については、株式報酬として過去にお支払いしている。これから他の株主さんと同様に、配当や株価の上昇で報いていきたいと考えている。


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  • 現金に類する物なら、配当金で良いじゃん��ʥѡ���
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