野球未経験の子達を付属高校野球部へ送り出す、重大な役割担う東農大一中軟式野球部

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2024年06月22日 11:23  ベースボールキング

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ベースボールキング

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随分前から中学軟式野球の部員数が激減していると言われています。少子化や選択肢の多様化など様々な理由が考えられますが、それでも中学から野球を始める、野球未経験の子が多い中学軟式野球部があります。東京都世田谷区にある東京農業大学第一高等学校中等部の軟式野球部です。この時代に野球未経験の子達に選ばれる野球部は、どんな雰囲気でどんな練習をしているのでしょうか?



【2時間続いた、バットを使わないバッティングドリル】


取材に訪れたのは土曜日の午後。午前中が保護者参観だったこともあり、そのまま子ども達の練習を見守る保護者達の姿も多く見られました。
この日は月に一度、外部からトレーナーを招いて練習が行われる日。「顧問だけでは教えられることが限られるため、外部から積極的にコーチやトレーナーを招いています」。そう話してくれたのは監督を務める寶田浩太郎先生。保護者にも日頃から積極的に練習見学を促すなど、常に開放的な野球部を目指しているといいます。

この日の練習テーマは『上半身が突っ込まないようにするための体の使い方』。走る、打つ、投げるに通じる正しい体の使い方を体で覚えるための、いくつかのドリルが行われました。
まずはトレーナーから腰の位置や体の使い方などの指導を受けながら、ゴムチューブを使ったメニューや、姿勢を意識したダッシュなどが繰り返されました。



次に行われたのは正しいスイングを身につけるための練習。バットは使わずに以下のようなドリルが行われました。

胸の前で両手をクロスさせて両肩を持ち、軸足は踵を上げ、頭の位置はずらさないように骨盤をまわす
上記 +左肩にのせた顎を右肩に素早くのせ変えるように肩を素早くまわす(右のお尻が左肩を押し出すイメージで行う)
上記 + ピッチャー側の手だけで左肩を持ち、体を回した際に左手を前方に広げるイメージで離す
上記 + 体を回したあとに右手をピッチャー側に広げる

上記の動きを一つ一つ、丁寧に繰り返し行い、最後はこれらの動きを一気に行います。
この練習が2時間ほど続いて、ようやくバットが登場。ただしボールは打ちません。上記ドリルの最後として、バットを振った後にバットの先端をピッチャー側に向けて両手で伸ばした状態で静止し、パートナーにバットの先端を押してもらい、それでも体勢をキープして動かないようにするというメニューが行われました。このドリルの狙いは「前」を大きく使ったスイングの感覚を養うこと。



ここまで約2時間半。ほとんどの子が中学から野球を始めていることを考えると「こんなにたくさんのことを一度に指導されて、選手達は理解できているのだろうか?」そんな疑問が湧きました。
「今日聞いた話のなかで「1」でもその子に残っていれば良いと思っています。1人に「1」しか残っていなくても、例えば10人が集まってそれぞれが「1」を持ち寄れば「10」のことを振り返れますから。今日で終わりではなく、これを今後も繰り返していって『このまえコーチは何て言っていた?』と少しずつ思い出しながら身につけば良いと思っています」(寶田先生)


【野球の楽しさとは何か?】


練習時間が15:30から17:00までの平日とは異なり土曜は13:30から17:00まで練習を行うことができ、グラウンドも他部との共有ではなく野球部だけで使うことができます。だからこそ平日にはやれない、広くグラウンドを使ったフリーバッティングや試合形式の練習などを長くやりたくなるものですが、この日の練習時間のほとんどがボールもバットも使わない練習に割かれていました。しかし「急がば回れ」なのだと寶田先生は言います。
「まずは土台となる動き作りが大事です。どの子にも上手く体を動かすことができないところがあるので、2年生主体のチームになってまだ間もないこの時期だからこそ、時間をかけてやっておきたかったんです」

練習を見ていて感じたことがいくつかありました。外部トレーナーが指示する動きができていない子も何人か見られたのですが、監督やコーチから「何回言ったら分かるんだ」「さっきも言っただろ」などといった、子どもを責めるようなマイナスの言葉がけがひとつもなかったこと。
指導が一方通行にならないように「このスイング、どこがよくないと思う?」「自分の感覚も大事だから思ったこととか感じたことか自分で口に出して言ってみな」と監督やコーチが子ども達にさかんに問いかけ、発言を促していたこと。
外部トレーナーが指導する内容を監督、コーチたちが「自分も勉強する!」かのように子ども達と一緒になって学んでいたこと。

そんな雰囲気の練習だからか、子ども達からも「僕のスイング見てください」と外部コーチに積極的に話しかけたり、子ども同士で教え合っている光景も多く見られました。

付属の高校への進学が今年度から100%内部進学のみという中高完全一貫になったこともあり、彼等が高校で野球を続けなければ高校の野球部員の存続が危うくなってしまいます。中学で初めて本格的に野球に触れた彼等が「野球が楽しい」「高校でもやりたい」と思うためには何が必要なのか? 顧問の先生達は「野球の楽しさとは何か?」を自問しながら、子ども達に向き合っていました。(取材/写真:永松欣也)

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